「秋山が立たされた理由」欄のある学級日誌 16冊目🔎

如月 仁成

予告編 リオンのせい


 ~ 十月二十八日(日) ~


   リオンの花言葉 秘密の生活



「明日、宝石箱を探しに来る?」


「そうなの。隠した場所が分からなくなったから道久君に思い出してもらうの」


「ブローチの話をしているうちに思い出したのね。でも、一度見せてくれたきりよね、あれ。どうして隠したの?」


「だって、あれ出したらママが泣いちゃうから」


 晩ご飯の肉じゃがの鍋に。

 ことこと楽しそうに笑われながら。

 ママは、ぎゅうっと女の子を抱きしめました。


「道久君は知ってるのね、どこに隠したか」


「さあ? あたしが一人で隠したはずなの」


「……それで見つけ出せたら逆に怖いわよ。あたりも付いてないの?」


「多分、あたしのお部屋だと思うから探してもらおうと……、どうしたの?」


 ママは慌ててお鍋の火を止めて。

 女の子の手を引いて階段を駆け上ります。


 そして、一つの扉を勢いよく開くと。

 お隣さんまで聞こえるほどの大声を上げました。


「この汚部屋! 秘密にしとかないと!」


「手遅れなの。何度も見られてるの」


「いいから! お向かいのパパの部屋に全部突っ込みなさい!」


「そんなことしたら、パパがかわいそうなの」


「かわいそうなのはあなたのお掃除スキル!」


「そんなことないの。ママにも褒められる素敵センスの持ち主なの」


「道久君をこんな汚部屋に入れようとする時点で、いったん取り下げ!」


 がーん!!!


「じゃあ、どうすれば取り下げを取り下げに出来るの?」


「できる女の条件、その十六!」


「えっと……、こないだはご馳走になったからって言葉で誘って、結局払わす無限ループ作戦?」


「それは二十六番でしょうに! 外面を取り繕っておいて……」


「ああ、そうだったの。外見を完璧に取り繕っておいて、たまにバレる実態を『俺しか知らないこの子の隙』と思わせるテクだったの」


「部屋を綺麗にするわよ! 水中の白鳥の足をパパに隠してもらう作戦、開始!」


「了解なの。せいぜい水面に浮かぶあたしの美しい姿だけを見て踊ってもらうの」




 …………あの。

 全部聞こえてます。


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