冬の憂鬱

ハルノカンナ

冬の憂鬱


 やっと顔を空で思い返せるようになったのに。声を覚えたのに。ああ虚しい。あの人には街で花を見かける度、その花の名前を教えた。花が視界に入る度に私のことを思い出すように。あの人の心に私との記憶を植え付けて、一生枯れない花を咲かせてほしい。その中でもストレチアとカンナの花は、呪いのようにいつも満開でいてほしい。


 「優しくしたつもりはなかった」とか、私にとっては優しさだと感じられた言動はすべて嘘だったのか。「思わせぶりなことをしてしまったのなら、ごめん」とか、これまでのこと全部、私の責任みたいじゃないか。「最初からその気は無かった」とか、女が言われて一番傷付く言葉を平然と言わないで。


 残念。ショックだ。ずるい。最悪。


 楽しくて地獄のような一ヶ月だった。


 「もう会わない。さよなら。」


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冬の憂鬱 ハルノカンナ @harunokanna

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