甘き罪

柊 撫子

消えた洋菓子

太陽がてっぺんまで昇りきる前、友人が営む洋菓子店にやって来た。

勿論、1日20個限定のケーキを食べる為だ。


「いらっしゃいませ」

 ドアに下げられたベルの軽い音に続くように、カウンターからのんびりとした声がする。

彼はこの店の店主で、私の顔を見るなり目尻に皺を作って笑った。

「やぁ、久しぶりじゃないか」

「しばらくぶりだね、噂のケーキを買いに来たよ」

「君は本当に甘いものには目がないね、でも今日はもうないんだ」

「ほう、もう売り切れたのか」

「いや売れてはないんだ。ただね……」

と言い、彼は言葉を詰まらせた。

どうやらトラブルがあったらしい。


「私の予想が違っていたらすまないが、私に適役なトラブルではないかな?」

「あぁ、だけど君も忙しいだろう」

「何を言う、君には学生時代に助けて貰った恩があるんだぞ」

「ただ教科書やらノートやらを貸しただけだろう、大袈裟だな」

「それでもありがたいものだよ、だから私に任せたまえ」

やれやれと言うように彼は軽くため息をついた。


「それで、報酬は何がよろしいですかな?探偵さん」

「無論、噂のケーキだ」

そう言って二人して笑った。

学生時代に戻ったような気分だ。


 とりあえず私はチーズケーキと焼き菓子セットを買い、後日話を聞くことにした。

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