第六話 けつ戦前夜
はみ出し涼介は部屋のパソコンである映像を見ていた。そばにはティッシュの箱が置いてある。
「藤原チクビ」
見ているのは、啓介の尻が吹っ飛んだ、この前のレースの映像である。別にティッシュがおいてあっても良いではないか。
涼介はチクビの走りを見て、身震いを感じた。映像で目の当たりにした、本物の七コキ。
「ここだ!」
そして、啓介の尻神輿がガードレールに突っ込んでいく。改めて見るとすごい映像だ。
youtubeにアップしてみたら、すごい反響で、涼介のチャンネルのフォロワーは一気に増えだ。ありがとう、啓介。
一方、チクビは「俺たちおヒップ組」のデータ班の人から、月の満ち欠けから、親父の女装癖が出る日を予測したグラフを渡された。
それによると、なんとチクビの親父の女装癖にはある法則性があることがわかった。なんと、毎週日曜日の朝と土曜日の夜に女装癖が出ていることがわかったのだ。
それによって、チクビと涼介の決戦は、次の土曜日の夜と決まった。
決戦の日が決まり、涼介は珍しく練習をするために赤城の山を走っていた。その鬼気迫る熱の入れようは、メンバーの誰もが話しかけることすらできないものであった。
ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶち。
あまりの激しさに、ケツ毛が抜ける音が麓の町には聞こえるほどの勢いであった。
「気合が入ってるな涼介」
メンバーの中でも涼介の近い位置にいる古株が涼介に話しかけた。
「少しオーバーワークじゃないか?」
そういうと涼介はフッと笑った。
「相手は7コキの天才、警戒してしすぎることはない。俺と啓介のプロジェクトDを粉々にした男だ。絶対に負けるわけにはいかない」
そう言った涼介の放つさっきに、男は寒気を感じた。
「今度の試合だが、悪いがキリタンポを20本用意してもらえるか?」
「20本だって!」
男は驚いた。
以前、涼介はプロのお尻屋と非公式のレースを行なったことがある。その時、本気を出した涼介が使用したキリタンポが15本であったのだ。
「念には念を入れておきた。藤原チクビには何がなんでも勝たないといけないんだ」
男は鳥肌がたった。
けつ毛の涼介の異名を持つ、はみ出し涼介だが。彼が本気を出す時にだけ見せる本当の姿がある。
その名は「キリタンポの涼介ちゃん」である。
この名があまり知られていないのには、理由がある。はみ出し涼介は、滅多なことで本気になどならないからだ。
精子の頃から涼介を知っているこの古株の男。この男ですら二回しか見たことがない本気の涼介。
一回はプロとの非公式試合。もう一回は精子の時、卵子を目指したレースの時だ。
そして、本気の涼介が負けたところは一度たりとも見たことがない。
「じゃあ、なんで俺、生まれたんだろう?」
なんで古株が、涼介の精子レースの事情を知ってるのか? 古株は人生で一番の謎に直面していた。
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