第2話

 学園一の有名人、レイナ・フィーマンの秘密を知ってから、僕と彼女は何となく一緒にいることが増えた。

 と言っても、教室では今まで通り。昼休みとかに一緒にお弁当を食べたりするようになったってだけなんだけど。


 それでも前より一緒にいるようになって分かったことはある。

 それは高嶺の花だと謳われるレイナ・フィーマンも、仲良くなってみると普通の女の子らしいということだ。

 教室では無口で凛としていて近寄りがたいイメージだったけど、一度話すようになれば表情がころころと変わったりちょっと抜けているところがあったり、何というか……そう、可愛らしいのだ。


「そうだ、そのレイナ『さん』っていうの、つけなくていいわよ。同級生なんだし、なんか距離置かれてるみたいだし……」

「そう? じゃあ僕のこともエクスでいいよ、レイナ」 


と、まあこんな会話をすると嬉しそうに頬を緩ませ、


「レイナってさ、いつもお弁当だけど、自分で作ってるの?」

「ううん、これはいとこが作ってくれてるの。すごいのよ、あの人は。料理とっても上手なんだから」


と、そんな話をするとまるで自分のことのようにドヤ顔で自慢をする。


 他にも校内で迷子になったりお腹が空くと機嫌が悪くなったり、僕のイメージとは違う、むしろ普通の女の子よりも親しみやすい。それがレイナ・フィーマンだった。


「お? お嬢、今日はぼっち飯じゃないんだな!」

「タオ兄、そんな言い方だとアレです。姉御がいつも一人寂しくお弁当を食べているみたいになってしまいます」

「ちょっと! 私にだって友達とお弁当を食べることくらいあるわよ!」


 いつもの通り屋上への階段の踊り場で、レイナと二人でお弁当を食べていると、男女二人組の来客があった。

 一人は銀髪のがっしりとした男子生徒。制服は僕と同じだから高等部の生徒だろう。けど顔は見たことがないからきっと二年生か三年生だ。

 もう一人は長い黒髪で小柄な女子生徒。中等部の制服に身を包んでいるから僕たちより年下のはずだ。


「で、こいつは誰なんだ? もしかしてお嬢の恋人か?」

「ち、違うわよ! っていうか、さっき友達って言ったでしょ」

「姉御はあんなこと言ってますけど、実際どうなんですか?」

「レイナの言う通り、ただの友達だよ」


 遠慮のない二人に少し戸惑っていると、レイナが僕の気持ちを察して二人を紹介してくれた。

 男子生徒の名前はタオ、女子生徒の名前はシェイン。

 タオは高等部の三年生、シェインは中等部の一年生で、二人は兄妹らしい。レイナとの関係は、同じ部活の部員だとか。


「そうなんだ。僕はレイナのクラスメイトのエクス。よろしく、タオ先輩、シェイン……ちゃん?」

「あー、先輩とかいらねえよ。あと敬語もなくていい。オレ、そういうの苦手なんだよなぁー」

「シェインも『ちゃん』とかいりません。今シェインちゃんって言われたとき、背筋がぞわっとしました」


 かくして、僕は後に同じ部活の仲間となるタオとシェインとの初対面を果たしたのだった。

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