過去の人
勝利だギューちゃん
第1話
大人になると忘れてしまう。
子供の頃の、思い出を・・・
正確には、封印される。
意識的にしろ、無意識的にしろ、
なるべく人には見せたくないものだ。
高校生の頃、好きだった女の子がいた。
でも、その子は僕のは興味がなかった。
明るく前向きだが、その子は致命的な欠点があった。
それは、その子の間ではランク付けが激しかった。
僕はその、最下層だった。
大相撲で言えば、行司の世界と同じで、
上がやめてくれないと、自分はあがれない。
しかも、序列にはよらない。
そのため、僕は最下層のままだった。
当時は悔しかったが、今ではそれでよかったと思っている。
なぜなら、人のとって大切なことを知った。
ていえば、大袈裟だが・・・
時は経ち、僕も社会人になった。
そして、当時の高校の同窓会が行われた。
殆どは、もう既婚者となり、子供もいた。
独身は僕も含めてわずか少数・・・
彼らと集まり、昔話に花を咲かせていた。
「お前、今でもあの子のこと、好きなのか?」
「あの子って?」
一緒にいた、ひとりに声をかけられる。
「ほら、あの子だよ。自称女優の○○○○似だった」
(その女優さんの名誉のために伏せ字)
「いや、とっくにふっきれたよ。それにもう、既婚者だろ?」
男好きだった。いないはずはないだろう。
「いや、独身らしいぜ。苗字も変わってないし」
「婿養子でも、もらったんだろ?」
「いや、本当に独身らしいぜ」
「そっか」
俺はグラスを口に入れた。
「気にならないのか?」
「ああ、全く・・・」
「そっか・・・」
それっきり、その話題には触れなかった。
そして、その話題は忘れて飲みふけった。
しばらくして、その子から連絡があった。
「もしよかったら、私と付き合って下さい」と・・・
僕は言った。
「謹んでお断りします」
今更、何を望む?
もう、触れたくなかった。
過去の人 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます