目覚めたら最強の魔法戦士だった ~学校のクラスで異世界転移〜
遊道よーよー
プロローグ ~楽しい修学旅行になるはずだった~
絶えることのない話し声。
バスの中は騒々しい。
「なあ、ユウト。自由時間、どこ行く?」
「時間になったら、服部たちの班のメンバーと一緒に決めようぜ」
埼玉県のとある高校の2年B組。
2018年の10月、
本作の主人公高橋悠斗はごくごく普通の高校生。
いつも元気だ。
そして、少しおっちょこちょい。
トイレ休憩に立ち寄ったサービスエリアでアイスを買おうとしたが、財布はバスに置いてきたままだったというおっちょこちょいエピソードが今日もあった。
「荷物チェックの時、麻雀道具見つからないかヒヤヒヤしたぜ」
ユウトの隣に座っているのは
奔放な性格で、先生に怒られるのも怖くない。
トランプ以外の遊ぶ物を持ってくるのを禁じられている今回の修学旅行に麻雀道具一式を持ってきている。
ユウトの前に座っているのが、森英介もりえいすけと島田芳人しまだよしと。
これら4人がいつもツルむメンバーだ。
放課後になると、他クラスの帰宅部の生徒と共に学校近くの公園でフットサルをしている。
バスに揺られながら、ユウトは斜め前方を見やる。
クラスのアイドル
「今、ユウト、ユカの方見てただろ?」
ダイゴがからかうように言ってくる。
「み、見てないよ!」
ユウトは慌てて否定した。
艶のある長い黒髪。
クラス、いや学年の誰よりも可愛らしい笑顔。
ユカは、10人とすれ違ったら、8人は振り返るに違いない可愛さだ。
清楚に見えるが、ダンス部でエースを務める行動派。
ユカと付き合えたらいいなとユウトは思うが、俺みたいな奴と付き合ってくれないだろうなと、なかなか行動に移せずにいた。
ダイゴと適当に談笑しながらユウトは思い出す。高校の入学式で、初めて出会ったユカに心奪われたことを。
ユカは同じ中学で友達の中川真里なかがわまりと話しながら、弾けるような可愛い笑顔で歩いていた。
こんな子と同じクラスだったらいいなぁ。
ユウトはその時漠然とそう思った。
クラス分けの貼り紙の掲示板を見て、「1年B組! 同じクラスだね!」と喜ぶユカとマリ。
そのそばで、中学時代から友達のダイゴと二人で「俺ら、同じクラスだ!」と喜ぶユウト。
しかし、ダイゴと同じクラスであることも嬉しかったが、ユウトにとってそれ以上に嬉しかったことはユカと同じクラスだったことだ。
ユウトの入った高校は、1年生から3年生までクラス替えがない。
親友のダイゴと、可愛すぎるユカと授業を受ける3年間。
ユウトの胸は否が応でも高鳴った。
道路もすいているし、バスの運行は順調だ。
「♩どーんなーにこんにゃくで、くじけそうめん、トン汁ことさ、必ず背後に霊は立つ〜!」
お調子者のクラス委員長・
オトナリが率先してクラスのイベントを立ち上げて来てくれたためか、B組は男女間の仲が良い。
A組は男女間の仲が悪いと聞くので、オトナリのおかげだろう。
そのおかげで、男女間で苗字でなく名前で呼び合うことも普通だ。
ユカのことを「吉野さん」でなく「ユカ」と気兼ねなく呼べるのはオトナリのおかげだから、感謝しなければならない。
バスの走る速度も増していく。
この調子なら次の目的地まですぐだろう。
ん?
この速さは、ちょっと速すぎないか?
「ダイゴ、今のこのバス、速すぎない?」
ユウトは早口で言う。
「これじゃ、前にあるカーブを曲がりきれない!」
バスは速度を上げながらカーブへ向かう。
ガリガリバキバキッ!
バスがガードレールを突き破る大きな音が鳴る。
ガードレールの先は海だ。
キャーと女子生徒が高い悲鳴を上げる。
ウワァと男子生徒も大きな悲鳴を上げる。
えっ、えっ?
俺の人生、ここで終わりかよ!?
ユカにまだ何も言えてないのに。
頼むから助かってくれ!
俺はまだ生きたい!
混乱の中、ユウトは助かるように心の中で強く願った。
そのまま、バスはガードレールを突っ切って、海の方に落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます