黒猫のサブ

オレンジ

第1話 カラス

ヒカリは何か騒々しい物音で目を覚ました。


それはカラスの鳴き声だった。


目を擦りながらベッドから這い出て、窓辺へ歩きカーテンを開けた。


「なにこれ」


ヒカリは思わずつぶやいた。カラスが家の前の電線に隙間無く並んでいる。その向こうにある電線にも建物の上にも。空には群れが飛んでいる。通りを歩く人々は怯えていた。こんなにたくさんのカラスがいては、いつ目をつつかれるかわからない。


ヒカリはカーテンを閉めた。窓の外のカラスと目を合わせないように。カラスは鳥だけど、はっきりした意思を持っている。それはヒカリの中で「いじわる」なものと分類されていた。ヒカリは小さいときからカラスを怖れていた。


ヒカリは下の階に降りて朝食を取りに行った。母がヒカリに挨拶をしてきた。ヒカリは母に何故今日はこんなにカラスが多いのかを訪ねた。


「さあねぇ。何か不吉なことでも起こったんじゃない?それか、これから起こるのかも。」

母は呑気な調子で答えた。


お母さんったら、全く事の重大さをわかっていない。


ヒカリは朝食を取り終えると、ランドセルを背負って靴を履いた。これからあのカラスだらけの町の中へ出なきゃならないと思うと、気が重かったが。

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