フラワー
@rurukari
第一輪 ニゲラ ~夢の中の恋~
もし・・・願い事がひとつ叶うとしたら・・・伝えたい気持ち・・・ありったけの大好きを君に・・・
生まれ変わっても、また君と出会い、何度でも恋に落ちる・・・
今度は、もっとうまく伝えられる様に、今から練習しておこう・・・
フラワー
【第一輪 ニゲラ ~夢の中の恋~】
カーテン越しに陽の光が差し込む。目覚ましが鳴るよりも早く目が覚めてしまった。二度寝しようと布団に潜り込んだが、目が冴えて眠れそうにない。仕方なく布団から起き上がり、何をするでもないが、ぼーっとする。そういえば、今日は変な夢を見ていた気がする。知らない女の子に告白されて、付き合って、デートして・・・。最後の方は、よく覚えてないな。けっこう可愛い子だったな・・・。
「・・・正夢だったらいいのにな」
少しにやけながら、ふと、つぶやいてしまった。
「お兄ちゃん、きもい」
扉の隙間から妹が顔を覗かせていたのに気付かなかった。不覚にも兄のにやげ顔を見られてしまった。
「どうせ、エッチな妄想でもしてたんでしょ」
「そんなことはない、もう健全すぎて困るくらいの夢だった」
健全すぎる夢とは、どんな夢なのだと自分につっこみを入れたくなる。
「・・・・・」
妹よ、無言で睨み付けるのはやめてくれないか。
「そういえば、ベッドの下のコレクション、お母さんがリサイクルに出してたよ」
「!!!!」
慌ててベッドの下を見ると、そこには、バイトでこつこつ貯めて買った、俺のコレクションがあった。
「やっぱり、そこに隠してあるんだね」
妹は、にやにやしながら、俺のコレクションを拾い上げる。
「・・・妹萌えが無い」
妹よ。兄を何だと思ってるんだ。実の兄弟でなんて、あんなのドラマやアニメの世界の話だ。実際に妹や姉がいる者から言わせれば、あんな事はありえないと言われなくても分かる。
「俺は、年上が好みなんだ」
そういいながら、コレクションを開いて見そうになる妹から取り上げ、頭にチョップを食らわす。
「痛い・・・ちょっとくらい見せてくれてもいいじゃん!」
妹よ。兄の部屋で、兄のコレクションを見るとは、どんな羞恥プレイなんだよ。
「いいから、とっとと学校行く準備でもしろ」
妹に再びチョップを食わし、自分も身支度を整える。妹は、若干、ふて腐れながら自分の部屋に戻っていった。妹は学校でもあんな感じで男子と接しているのだろうか。勘違いしている男子がいるのではないか。思春期絶賛売出中の男子にとっては、格好の餌食ではないか。と色々考えてしまうが・・・・。
「俺は、父親か・・・」
そんなくだらない事考えてないで、少し早いが学校に行くか。
鞄を持って何も言わずに玄関を出ようとすると、
「朝ごはん!」
振り返ると、仁王立ちの母が立っていた。今日は、いらないと伝え背を向けると、背中に硬い何かがあたる感触が。もう一度、振り返ると、そこには、アルミホイルに包まれたおにぎりらしきものが二つ転がっていた。
「少しくらい、食べなさい。それに、せっかく作ったんだから、もったいでしょ。食べ物を粗末にしちゃだめ!」
母よ。そのおにぎりを粗末に投げ込んできたのは誰だ。喉まで出掛かった言葉を飲み込み、床に無残に転がったおにぎりを回収して、再び玄関の扉を開ける。
「気をつけて行ってくるんだよ」
「・・・行ってきます」
母の言葉に見送られ、今日も一日が始まる。何でもない日常、こんな日がいつもでも続くと思っていた・・・あの娘と出会うまでは・・・。
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