いーらっしゃいませ、お客様ー
何でこんなことに・・・・・・
だってさ、賭けのスキルで勝てるわけないじゃないか。
攻撃力も、関係ないけど魔力も平均値以下の俺がだよ。
速さは良い方だったから逃げてこれたけど、もうこれ無理ゲーじゃん。
そして職を失いかけた俺は、少しでもお金を稼ごうとしてギルドで働いている訳だが、「いらっしゃいませー。受付ですか?食事ですか?」
何なんだよ!皆ガヤガヤしててうるさいし、まぁ最初は新鮮で楽しかったけどさ、
慣れてくるとうるさくて仕方ない。
注文のお酒とか持ってくと、言葉を発しようとする前に奪い取ってきやがる。
しかも俺の座右の銘、働いたら負けに反するときた。マジでムカつく。
挙げ句の果てには・・・・・・
こんなことを考えていたら、背中を軽くとは言えないぐらいの力で叩いてきた。
「ちょっと、ボサっとしてないで早く接客行ってきなさい」
「あのー、今のパワハラって何ですか?こんなに強く叩くとか正気ですか?レイさん」
「そんなに痛かった?貧弱ねぇ。男なんだからこのぐらい耐えて見せなさいよね」
「都合の良いときだけ男だからとか言ってくんのやめてくれませんか。ムカつくんで」
そう。レイだ。俺の一番ムカつく原因だといっても過言じゃない。
いや、過言どころか完璧コイツだ。
俺がギルドで働くことになったとき、俺の指導役としてレイが名乗り挙げた。
本人曰く、
「キミが働くと、必然的に私の働く量が減るでしょ。バカなの?」
だそうだ。
何がバカなの?だ!
お前の方が頭のネジが狂ってるじゃねぇか。
「とにかく、あの人の接客お願いね」
レイは体格の良い、いかにも怖そうな男の人の方を指差し、
その後、すぐに裏方の方に行ってしまった。
えぇ。マジかよ。
お前がやりたくないだけじゃないか。
俺は緊張しながらその男に近づき、
「いらっしゃいませ、受付ですか?食事ですか?」
「ほう、見ない顔だな。新人か?俺は食事だ。よろしく頼む」
良い人だった。俺はさっきまでの緊張を払い、食事のテーブルへ案内した。
そして、俺はさっきまでいた、カウンターに戻ると、
「キミにしては上出来じゃないの」
またコイツだ。
ホントウンザリする。
「何ですか、レイさん。何かご用で?」
「いいえ、キミをからかいに来ただけよ」
それをハッキリ言えるってスゴいなー。うん。ホントスゴい。
そして、その後一時間位愚痴や自慢話を聞いて・・・・・・いや、聞き流していると
俺の定時が来た。
やっとだ。やっとコイツから解放できる。
そう思った矢先、
「あ、そうだキミ。残業よろしく」
「は?冗談キツイですよね、レイさん。ともかく、
ただでさえキツイのに残業はちょっと・・・・・・」
「私だってしたくないのに、残業頼まれたからキミも道連れよ。私はキミの指導役。
指導役が残業なら、部下のキミも当然残業よ」
「ハイハイ、分かりましたよ」
ん、だよ。このアマ。
絶対コイツに指導役が務まるとは思わない。
最初可愛いとか思った俺がバカだった。
ため息をつきながらも書類を完成させていく。
そうして俺は遅れた時間まで働いていると、飲み物だろうか。
レイがコップを差し出してきた。
「ほら、コーヒー。疲れたでしょう、飲みなさいな」
「あ、ありがとうございます」
コイツが優しくなると少しドキッとなる。明日は雨でも降るんじゃないか?
黙ってればいっちゃん惚れてんのになぁ・・・・・・まぁそいつはもはやレイじゃないか。
「すいません。今日はもう上がりませんか」
「それもそうね。私ももう少しで終わるし、帰りましょうか」
「はい、お疲れ様でした」
俺はこうして帰路についた。
余談だが俺の予想通り明日は雨が降り、冒険者で賑わい、更に仕事が増えたとさ。
笑えねぇーけど笑っちまうわ。
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