異世界転生しても脇役の僕
ゆう作
第1話〈転生は突然に〉
「どうも、何でも二位の滝川光です」
よし、これでいこう。これなら生徒達の印象に残りそうなフレーズだ。
「自虐的、と思うかもしれません。しかし、これは全くの事実なんです」
僕、
「つまるところ、僕は今までの自分に勝つため、この選挙に立候補したと言っても、過言ではないのであります。いえ、流石に過言であります」
そんな自分と決別する為に、何か転機となる様なものを模索していたところ、ちょうど学校で生徒会選挙が行われるということだったので、生徒会長に立候補してみた。晴れて生徒会長になることができれば、弱い自分ともおさらばできる、そう思ったからだ。
「僕には、ある一人の友人がいます」
そして、選挙というからには、当然僕以外にも立候補者がいる。その立候補者の名は、
「彼は、友人であり、宿敵でもあります。少なくとも僕はそう認識しています。永遠のライバル、というやつです。そう勝手に設定しています」
憎らしい事に、こいつとはいわゆる腐れ縁というやつで、小中高とずっと学校が同じだった。つまりは、小中高とずっと負かされて来た、と同義である。僕は、何度こいつの背中を悔し涙で視界を濁らせながら見つめてきたか思い出せない。
「僕は、なんとしてでも彼に勝ちたいのです。ですから、この滝川に、どうか清き一票をお願いします」
いや、どう考えてもそんな私怨まみれの一票、濁っている。濁りに濁り切っている。駄目だ。もう一回一から考え直しだ。
「えー、でありますから、主に校内の清掃活動に力を注いでいきたいと、思うのです」
どこがどうなって、でありますから、なんだ。無理だ。やっぱり僕には人前で話すなんて離れ業は不可能だ。駅のホームで一人で呟くのが限界だ。
「ちょっと。ちょっとすいません」
「え。あ、はい?」
「うるさい」
「あ。で、ですよねー。すいません。ははー」
……変わりたい。
「よしっ」
また明日から頑張ろう。この程度でいちいち挫けるな。とりあえず、まず家に帰ったら苦手な現代文の参考書を進め
「死ね」
引っ張られた。
「え」
線路の上で二人で飛んだ。
「あっ」
光が迫る。
「ちょっ」
見覚えのある、憎らしい顔がある。
「大橋──」
全てが、止まった。
──チクチクと、服を貫いて草が刺さる。心地の良い、若草の匂いが漂っている。暖かい日差し。時折吹いてくる、爽快なそよ風。
「ふぅー」
うん、間違いない。ここはのどかな草原だ。
「いやー」
…………。
「えーっと」
…………。
「は?」
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