空へ・・・

勝利だギューちゃん

第1話

「私、アイドルになる」

高校生の頃、そう宣言していた女子がいた。


事務所に入り、毎日の厳しいレッスンにも耐えた。

他の女の子たちが、青春を謳歌しているなか、

「いつか、舞台にたつの」

そう言った、彼女の眼は、とても輝いていた。


だが、その夢は叶う事はなかった。

彼女は、レッスンからの帰り、車にひかれそうな子供を助けようとして、

犠牲となった。


彼女の告別式は、まさしく日本晴れだった。

雲ひとつなかった。

「私、晴れ女なんだ」

よく自慢していた。


「やはり、君は晴れ女だよ」

心の中で、微笑んだ。


クラスの女子は、皆泣いていた。

男子も、下を向いていた。


そして、出棺の時、皆が花を入れた。

彼女の棺は、花で埋め尽くされた。


でも、僕は別の物を入れた。

「すいません。これ、入れてもよろしいですか?」

ご両親は、頷いてくれた。


クラスメイトからは反感を買うと思ったが、

「よく手に入れられたな」

そう言われた。


僕が、彼女の棺に入れた物・・・

それは、生前に彼女がひいきにしていた、スポーツ球団の、

マスコットのぬいぐるみだった。


彼女は、レッスンの会い間に、そのチームの応援に行くのが楽しみだった。

「アイドルになったら、この選手の人と結婚するの」

そう言っていた。


まあ、これは冗談だと思うが、もし結婚すれば芸能活動が出来なくなる。

「冗談だろ」

「うん」

笑ってた。


でも、マスコットのぬいぐるみは欲しそうだったが、とても、手が出なかったようだ。

しかも、人気があるのか、なかなか生産されない。


なので、入手は困難だ。


でも、僕は手に入れる事が出来た。

そして、そのぬいぐるみを棺に入れた。

「あの世からも、応援してくれよ」と・・・


そのぬいぐるみは、鳩をモチーフとしている。

彼女を天国まで、導いて欲しい。


なぜ手に入れる事が出来たのか・・・

それは、「愛の力」とだけ言っておく。


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空へ・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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