ラスボスハウスでルームシェアしたヒーローの俺がハーレムを築き上げるまで

野々村鴉蚣

第一章、初恋とルームシェア

第0話、それは7人のルームメイトで。

「お兄ちゃん! 今日は遊園地行く約束だったよネ!」


 リビングで本を読んでいると、突然背後から抱きつかれた。金髪を両サイドで結んだおだんごヘアーの少女だ。あぁ、またお前か。ってか、む、胸、胸当たってる。なんかめっちゃ胸当たってるから! 小さく膨らみかけの胸が……。いや、ここは冷静に。


「んじゃ、今から行くか?」


 慌ててそう言い立ち上がろうとすると、彼女は喜んだ様子で俺の首に全体重をかけた。


「ウギギギギ」


 折れる折れる折れるってか苦しい苦しい苦しいッ! って嬉しいのは分かったから放電するなっ! 彼女はいつも喜ぶと電撃を放ってくる。


「アガガガガ」


「おい貴様、妾の男に何をしておるか。焼き殺してやろうぞッ!」


 ちょ、ちょっとタイム。俺ごと燃やす気か! 俺と金髪少女が仲良くしている姿に嫉妬したのだろう。赤髪の女性が眼力を向けてきた。突如俺の体は炎に包まれる。って、待て、炎は待て、すぐ怒るその癖何とかしてくれ、待て、待てぇぇぇえええ!


「あぢぢぢあガゴガガガガッ!」


 赤髪女性は和装をたなびかせながら火力を上げる。俺を殺す気なのだろうか。と思った瞬間、俺の体は彼女の背後に移動していた。


「くっ、またもやうぬは時を止めおったな、卑怯であるぞッ!」


 どうやら金髪少女の時止め能力による瞬間移動だったらしい。助かった。ってか、よく見れば赤髪女性の周りにはウヨウヨと化け物が漂っている。


「魑魅魍魎を召喚しながら言うな!」


 恐らくあの化け物で俺たちを殺そうとしていたのだろう。血気盛んだ。


「不愉快、僕、君達を粛清する」


 ヤバい、また面倒なやつが出てきた。青いショートボブの女の子がどこからともなく顔を見せる。俺と同じ高校生の彼女は、不機嫌をはっきりと表情にしている。


「あの、粛清前に俺燃えてるんですけど……」


 まだ火は消えそうにもない、ああ、死んだな。せめて死ぬ前にあの子に好きって言いたかった。俺には好きな人がいるんだ。と涙が溢れかけた瞬間だった。突然俺の顔がおっぱいに挟まれる。同時に火は消え傷が元に戻された。


「あ、ありがとう」


「ち、違う……僕はただ」


 恥ずかしそうにモジモジする青髪の彼女。どうやら彼女による治癒魔法で俺は助けられたようだ。ホッと一安心するもつかの間、突然俺は腕を引っ張られ全裸の女性に捕まる。彼女は腰まで伸びた紫髪で局部を何とか隠しているが、きっと風が吹けば全てが見えてしまうことだろう。


「旦那様、何やら興奮しておられるご様子、わたくしが癒して差し上げますわ」


 紫髪を揺らして微笑む女性へ、黄色、赤、青が順番に抗議した。


「ま、待ってヨ」

「無礼者め、妾が許さぬぞ」

「……粛清する」


 三人の女性の怒りが一点へ注がれるが、俺を掴んだ全裸の紫髪女性は気にも留めぬ様子でメガネをクイッと上げ直した。同時に空間がねじ曲げられ、誰の声も届かなくなる。


「旦那様、こちら二人きりの世界です」


 彼女の能力、亜空間転移だ。


「ちょ、ちょっと待って心の準備が!」


「体の準備はよろしいようですよ」


 俺の貞操が危ない、そう思った瞬間だった。地面から幼女が生えてきた。緑色のショートボブをキノコのように揺らす八歳児程度の幼女だ。


「おいおい、オレを置いていくなんてどういうことだぜ! 許されねぇぜ!」


 さらに増える幼女。10、いや、20人は居るだろうか。


「くっ、わたくしの捻じ曲げた空間に入ったのね」


「そんなの知らねぇんだぜ! それよりオレも遊ぶんだぜ!」


「だァァ! お前も脱ぐな!」


 裸で遊ぶものと勘違いしたのか、三十人は近い緑髪幼女が一斉に脱ぎ始める。あぁ、だれかこの面倒な奴らを誰か止めてくれッ!


「……マスター、自分も混ぜてください」


 ふと背後から音がすると思えば、見たことも無い機械を利用して異空間に穴を開け、もう一人の女性が入ってきた。白髪に橙色のメッシュが入ったロングヘアーの女性だ。彼女は全裸女性と全裸幼女溢れるこの空間に似つかわしくないスーツを着たまま、俺の体にそっと触れる。


「マスターの初めては、自分が」

「だめですわ、旦那様のはわたくしが」

「よく分からないけどオレがだぜ! 一番とか羨ましいんだぜ!」


 よく見れば橙色メッシュ女性が亜空間に開けた穴の外では赤青黄の三人が争っている。こちらの空間でも、当然紫緑橙の三人が喧嘩を始めた。あぁ、誰か本当に助けてくれ。


 そう天に願った瞬間だった。


「あはは♡ ダーリンはアタシの物だよ♡」


 一番面倒なやつが顔を出した。

 彼女は闇よりも深い漆黒の髪を揺らしなごら微笑む。突如、その場にいた六色の女性陣の雰囲気がピリつく。


 あぁ、こんな事になるなら、ルームシェアなんてするべきでは無かった。そんなことを考えながら、俺はぼんやりと一年前を思い出す。初めてこの街にやって来た日のことを。

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