第918話 終活‐5!
俺とユキノとシロの三人でカストル山に来ていた。
雪人族であるスーノパパと、その家族に会うためだ。
ユキノに話をしたら、思っていた以上に興味を示して「是非、会いたい!」と言うので、ユキノに防寒を施した衣装を用意する。
スーノパパとの会話の通訳は俺かシロがすることになる。
クロはピンクーの所に行っている。
「寒くないか?」
「はい、大丈夫です」
俺とユキノの周りには【結界】を張り、吹雪から身を守っている。
「あの方ですか?」
ユキノが遠くに黒い影を発見したようだが、目の錯覚だ。
たしかに、そろそろ着くころなのだが……。
吹雪の中で見覚えのある洞窟を発見する。
スーノパパたちの住む洞窟だ‼
「おーい」
洞窟の中に聞こえるように叫ぶ。
「あっ、タクト‼」
スーノモジャが俺に気付き、走ってきたがユキノの存在に気付くと足を止めた。
「久しぶりだな、スーノモジャ」
「……隣の人族、誰?」
「あぁ、俺の妻ユキノだ」
「……妻?」
「あー、俺がスーノパパだとしたら、ユキノはスーノママだ」
「……タクトパパと、タクトママ?」
意味が違って伝わっている。
「何を騒いでいる」
奥からスーノパパとスーノママが歩いて来た。
「タクト‼」
スーノパパが俺の名を叫ぶが、見知らぬユキノが隣にいるため、少し警戒しているようだった。
「久しぶりだな、スーノパパにスーノママ。隣の女性は、俺の妻ユキノだ」
ユキノにも言っていることを伝える。
「妻……とは?」
スーノパパも妻という言葉が分からないようだった。
「人族の男性が生涯を共に過ごす! と誓った女性のことです」
シロが俺の代わりに説明をしてくれる。
俺はシロの言葉をユキノに伝える。
「俺で言うスーノママのことか?」
「少し意味は異なりますが、似たようなものですね」
「分かった。タクトの家族は。俺たち歓迎する」
表情が見えないので喜んでいるのか分かりづらいが、声を聞く限りスーノパパとスーノママは嬉しそうだと感じた。
スーノパパが俺たちを奥へと誘う。
スーノモジャも安心したのか、俺の少し前で、たまに顔を上げて歩いていた。
「タクト。発光石ありがとう。とても助かっている」
「そうか。そう言って貰えると俺も嬉しい」
以前にシロに頼んで届けてもらったものだ。
重宝しているのであれば、送ったかいがある。
ユキノにもスーノパパたち雪人族は、俺たちの体温でも火傷のような症状を起こすので注意が必要だと教えておいた。
その話を聞いたユキノは、自分と同じ種族意外と触れ合いが出来ないのは悲しいことではないのかと、俺に質問をしてきた。
俺は雪人族は閉鎖的な場所で一生を過ごすことや、自分たちの特性を知っているので、それが普通だと思っていることを伝える。
自分の価値観で考えていたユキノは、すこし反省をしていた。
奥にはスーノピカリや、スーノララの姿が無かった。
「あれ? スーノピカリとスーノララは?」
てっきり、いると思っていた俺はスーノパパに質問をする。
「スーノピカリと、スーノララは周囲のパトロールに行っている」
スーノパパの言葉に、スーノモジャは下を向いていた。
どうやら、スーノモジャはパトロールの許可が貰えていないようだ。
「二人とも強くなった。二人でパトロール、問題無い」
スーノモジャは明らかに落ち込んでいる。
「僕だって……」
小さく聞こえない声で呟くスーノモジャ。
「スーノモジャ。まだ、弱い。すぐ泣く。パトロール出来ない」
スーノモジャを危険な目にあわせたくない一心から出た言葉だろうが、スーノモジャには非情な言葉に聞こえただろう。
「スーノパパ、嫌い!」
スーノモジャは、反対方向に走って行った。
「スーノモジャ‼」
スーノママがスーノモジャを追う。
「私も行きます!」
シロに通訳されて状況を知っているユキノもスーノママの後を追う。
俺が何を言う訳でも無く、シロが「任せて下さい」という目で俺を見て、ユキノのすぐ後ろを走っていた。
「タクト。行かなくても大丈夫」
追う体勢を取っていた俺に、スーノパパが話す。
「スーノモジャ。心が弱い。優しすぎる」
上手く伝わっていないことが、スーノパパも分かっているのだろう。
「シロがいるし、大丈夫だろう。何かあれば、俺がすぐに駆け付けるしな」
自分に言い聞かせるように、スーノパパに話す。
内心はユキノのことが心配だったが、スーノママやユキノが話を聞いた方が良いと判断をした。
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