第910話 神と眷属の対面ー1!

「じゃあ、行ってくる」

「気を付けて!」


 俺とエリーヌはシロとクロが、必死に見つけてくれたピンク―に会いに行く。

 しかも今日は、エリーヌがエクシズに滞在できる最終日だ。

 俺の【神眼】でエリーヌの寿命を確認したが、ほとんど残っていなかった。

 アルも同じ回答だったので、モクレンの言った通り、最終日なのは間違いない。


 エリーヌの希望もあり、最後は俺たちで見送るつもりだ。

 残ったユキノとアルにネロの三人には、エリーヌの送別会の用意を頼んでいる。

 ユキノの目が若干、赤くなっていたのは昨晩、泣いていたからだろう。

 俺も気を使い、ユキノとエリーヌの二人っきりにしたので、二人がどのような会話を交わしたのか知らないが、別れが辛いことだけは間違いない。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「御主人様。この町です」


 シロがピンクーを見つけた町を教えてくれた。

 オーフェン帝国にある中規模な町だ。

 帝都にも程近く、海と山に囲まれている環境の良い町になる。

 何故、この場所にピンクーが滞在しているのか分からない。

 そもそも神の眷属の業務内容を把握していないので、なんとも言いようがないのだが――。


 シロとクロも人型になり、四人で町に入る。

 町の中では、シロとクロがピンクーを探す。

 一応、シロがピンクーを発見した時、ピンクーには今日、俺たちが訪ねてくることは伝えている。

 しかし、ピンクーのことだから忘れてしまい、昨夜のうちに移動した可能性も十分に考えられる。


「主。見つけました」


 クロからピンクー発見の報告を受ける。

 クロにはピンクーを捕獲して貰い、俺とエリーヌにシロの三人が合流する。


「親びん、久しぶりですね」

「……食べながら挨拶するんじゃない‼」


 ピンクーの両手には、数本の串を持っていた。

 しかも食べながら、挨拶をする。


「ん? ところで、この小っちゃい子は誰ですか?」


 俺の注意を気にすることなく、ピンクーは食べながら話す。


「これがお前の眷属だ」

「う、うん」


 思っていた対面と違っていたのか、エリーヌも困惑していた。


「眷属? 親びんは何を言っているんですか?」

「……このちびっ子が、このエクシズの担当神であるエリーヌだ」

「またまた、親びん。騙されませんよ」


 馬鹿にするように笑うピンクー。

 そこまで馬鹿ではないと言いたいのだろうが……。


「お前は、この町で何をしているんだ?」

「この串が、とても美味しいんですよ」

「その串を食べるために、この街にいるのか?」

「はい」

「串を買う通貨はどうしているんだ?」

「世界を回っている時に、いろいろな場所で拾うので、それを貯めています」


 ……なんとも、その辺はちゃっかりしている。


「眷属その二‼ 今期の報告は三倍とするから、覚悟してよね」


 俺とピンクーの会話を聞いていたエリーヌが、怒りに満ちた表情でピンクーを睨んでいた。


「親びん。この子は何を言っているんですか?」

「だから、エリーヌだと言っているだろう。一定の期間だけエクシズに来ているんだよ」

「またまた~」


 ピンクーは、まるで信じようとしない。


「ピンクー。いい加減にして下さい」

「シロの言う通りです」


 シロとクロが、エリーヌ以上に怒りのオーラを出すかのように冷たい目でピンクーを見ていた。


「この方は間違いなくエリーヌ様です。眷属たるもの、それも分からないのですか‼」

「眷属とはなんたるかを、教えきれなかった私の失態です。貴女はもう一度、教育する必要がありますね」

「えっ‼」


 シロとクロの表情を見て、青ざめるピンクー。

 もちろん、エリーヌもピンクーを睨んでいた。


「おっ、親びん!」

「俺は知らないからな。お前が全部、悪いんだからな」


 助けを求めてきたピンクーを、俺は冷たく引き離す。


「そっ、そんな‼」

「御主人様。ここでは他の方に迷惑が掛かりますので、場所を移動した方が良いかと思います」

「そうだな。誰もいない場所まで移動するか」


 俺が言い終わる前に、クロがピンクーを影の中に入れる。

 周囲の人たちにも気づかれてはいない。

 俺たちは、何食わぬ顔で人目のつかない場所へと移動をして、そのまま【転移】で別の場所へと移動をした。 

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