第911話 神と眷属の対面ー2!

「本当に申し訳御座いませんでした‼」


 人気のない場所に移動をして、クロの影からピンクーを出す。

 姿を出したピンクーは俺たちに平謝りする。

 自分がどれほどの失態を犯したか分かったのだろう。

 エリーヌの怒りよりも、俺的にはシロとクロの怒りのほうが気になる。

 誇りを持って『神の眷属』をしていた二人にとって、ピンクーの態度は許容の範囲を超えていたのだろう。

 そして、クロの教育と称した特訓にトラウマを植え付けられたピンクーにとっては、是が非でもクロとの教育を回避したい思いもあるに違いない。


「主。暫くの間、ピンクーを再教育するため、御時間をいただきたいのですが、宜しいでしょうか?」

「御主人様。私も協力したいと思います。クロさん同様に宜しいでしょうか?」


 ピンクーの方を横目で見ると、すがるような目で「断ってくれ!」と言っているようだった。


「もちろん、いいぞ。存分に教育してくれ」

「あ゛あ゛ーーーーー」


 ピンクーは言葉にならない悲鳴をあげる。

 クロに加えて、シロも教育することで、自分の思っているよりもハードな教育になると思っているのだろう。

 トラウマが上書きされる覚悟が、ピンクーには無いのだろう。

 楽しながら毎日を過ごしたいとでも、思っているに違いない。


「二人とも宜しくね」


 エリーヌもピンクーの再教育に賛成のようだ。

 ピンク―は諦めたのか、虚ろな目をして魂の抜けたような状態になっていた。

 まぁ、自業自得だろう。


「それよりも、なんでピンク―に会いたかったんだ?」


 俺はエリーヌに尋ねた。


「ん~、自分の眷属だから、この世界できちんと挨拶をしておきたかっただけなんだよね。これから長い付き合いになるだろうしね」

「こんな眷属で良かったのか?」


 俺は放心状態のピンク―を指差しながら、エリーヌの様子を伺う。


「まぁ、私が選んだ眷属だからね。少々、性格に問題がありそうだけど……」


 この言葉を聞いた俺は、「エリーヌらしいな」と思う。

 自分の眷属に直接、言葉をかけたいと思っていたのだろう。


「ピンク―。貴女は選ばれた存在なの。だからこそこそ、私のため……いえ、この世界のために自分の責務を全うして欲しいのよ。分かる?」

「……はい」


 エリーヌが自分でなく、世界のためだと言い直したことに、俺は似た者同士ではないかと感じたが、そのことを口に出さずにいた。

 しかし、ピンクーの性格を考えて、真剣に眷属の修行をするとは考えにくいのだが――。


「ピンクー」

「なんですか、親びん」

「もし、お前に後輩の眷属が出来た時、今のままだと馬鹿にされるんじゃないのか?」

「まさか、そんなことないですよ」

「本当か? その時に駄目な先輩だと思われたら、お前の立場が無いんじゃないのか? もしかしたら、エリーヌの眷属自体を解雇されて、この世界じゃない、もっと酷い世界に送られるかもな。もしくは、存在自体を……」


 俺はピンクーのプライドを揺さぶるような発言をしたうえで、不安な気持ちを煽ってみた。


「まさか、そんなこと……」


 冗談だと思っているピンクーが俺たちの顔色を見る。


「十分にあり得ますね」

「使えない眷属は、この世界にとって有害でしかありません」 


 シロとクロが、真面目な顔で話す。

 元眷属としての言葉だけに、重みが違う。

 ピンクーは引きつった表情でエリーヌを見る。


「そうだね。可能性が十分にあるよ。まだ、この世界は平和なほうだから、他の世界だと毎日死ぬ思いをする世界の方が多いからね」


 エリーヌが俺たちの発言を否定しない。

 ピンクーにとっては一番大きな衝撃だったようだ。


「精一杯、エリーヌ様の御力になるよう今一度、自分を鍛えないしてみます」


 危機感を感じたピンクーは必死で訴えかけていた。


「では早速、眷属とは何たるかを私とクロさんで、もう一度徹底的にお教えしますね」

「分かるまで徹底的に教えて差し上げるので、覚悟するように」


 シロとクロの目が燃えていた。


「ピンクー、頑張ってね」

「はい」


 エリーヌがピンクーを応援するが、ピンクーは泣きそうな表情で返事をする。

 シロとクロは、ピンクーの教育をするため、エリーヌと会話が出来るのは最後なるだろうと思い、それぞれにエリーヌとの会話の時間を設けた。

 長い時間を要する感じでも無く、エリーヌは笑顔で会話をしていた。


 その風景を見ながら、エクシズでエリーヌと過ごす時間が刻一刻と無くなっていくのだと実感した。

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