第890話 シーランディアでの戦闘ー2!

 嬉しそうなネロと合流する。

 余程、上空で蜂人族との戦闘が暇だったのだろう。

 蟻人族を楽しそうに倒していく。


「あいつ、上で戦っていた奴と違うの~」


 ネロが向かってきた蜂人族を見て、俺に教えてくれた。


「そうなのか?」

「そうなの~!」


 そういえば、蟻人族も少し体が違う気がする。

 体のサイズが一回り以上、大きい。

 今まで戦っていたのは働き蟻たちで、ここにいるのは兵隊蟻なのだろうか?

 それは蟻人族だけでなく、蜂人族も同じなのだろうか?

 兵隊蟻は、巣の近くにいるイメージがあるので、女王たちに近付いているのは間違いないのだろう。

 しかし、体が大きくなって戦闘力が上がったとしても、俺とネロの敵ではない。

 女王がいるであろう場所へと足を進める。


「あれ~?」


 ネロが首を傾げる。


「どうかしたのか?」

「攻撃を避けられたの~!」

「攻撃を避けられた⁈」


 ネロの攻撃を避けることなんて、簡単なことではない。

 俺でも避けることはほとんど出来ない。


「またなの~!」


 攻撃を避けられたことで、ネロは機嫌を悪くする。

 たしかに、ネロの攻撃を避けていた――というよりも、ネロが攻撃を繰り出す前に、何匹かの蜂人族は攻撃を回避する行動をしていた。

 つまり、俺たちの攻撃パターンが読まれているということだ。

 俺の場合、適当に攻撃をしているので、気にすることなかった。

 こういうところが、俺とネロ、アルとの違いなのだろう。

 一見、適当のように見えても考えながら攻撃をしたり、違和感にいち早く気付く。

 先人たちに見習うことが、多くあると実感した。

 話が反れたが、俺たちの攻撃パターンが読まれているということは、情報が知られているということだ。

 俺やネロにアルたちが倒した蜂人族の情報。

 それが女王に集約されて、蜂人族全体で情報共有されていることは間違いないだろう。

 俺も同じような攻撃を意識しながら、繰り出してみる。

 たしかに俺の攻撃を回避しようとする動きを見せる。

 徐々に俺の動作を予測して、回避を始めていた。

 蟻人族も同じように、俺たちの情報を蓄積していた。


 アルとネロも全力で戦っていない。

 あくまで遊びの延長としか思っていない。

 だからこそ、思い通りにならないことに対して、苛立つのだろう。

 ネロの真骨頂でもある【操血】が、蜂人族や蟻人族に使えないようだ。

 それもネロが苛立つ理由の一つなのかも知れない。


「ネロ。俺を気にせずに、好きなように戦っていいぞ。地形を破壊してもいいからな」


 俺の言葉を聞いて、ネロは嬉しそうに笑顔を見せる。

 ネロの目つきが変わる。

 俺は嫌な予感がしたので、【転移】でネロから距離を取る。

 次の瞬間――。

 赤い棘のようなものが無数に飛び出して、蜂人族や蟻人族を串刺しにしていた。

 その後も、赤い棘は鞭のように伸びて蜂人族や蟻人族を突き刺しながら移動をしていた。

 串刺しにされながらも動こうとする蜂人族や蟻人族だったが、体内から赤い棘がさらに飛び出して、その小さな赤い棘が鞭のように体を細切れにした。

 飛び散る薄緑(夏虫色)の血飛沫に異臭……。

 異様な殺戮ショーを間近で見た感じだ。

 勢いに乗ったネロは、そのまま進んでいく。

 その姿は楽しそうだった。

 俺もネロの後を追う。

 流石はネロだ。完全に息の根を止めている。

 まぁ、原形が分からない死体もあるので、自分の血を通して、生命反応があるのか分かっているのかも知れない。


「ネロは楽しそうじゃの」


 気付くとアルが横に立っていた。


「アル、上は終わったのか?」


 俺は指で上を指しながら、アルに聞く。


「ほとんど終わったのじゃ。途中から、お主たちの方に集まって行きおったので、暇じゃったぞ」


 上空を見ると、確かに殆ど蜂人族はいなかった。

 数十匹の蜂人族はクロが相手をしていた。


「……お前も飽きたんだろう?」

「そんなことはない」


 アルは俺から目線を外した。

 上空からネロの戦いを見て下りてきて、面白そうだと思い下りてきたのだろう。

 クロの実力なら大丈夫だと思ったうえでの行動だと思う。

 【魔力探知地図】で確認をすると、蜂人族や蟻人族を示すマークが、かなり減っていた。

 俺たちがいる場所以外にマークは、ほとんどない。

 しかし、モクレンも女王や、強さによって色や大きさを変えてくれれば、もう少し効率的な戦闘が出来た気がするのだが……。

 まぁ、なんにせよ思っていたよりも、簡単に殲滅できた。


「……タクトよ。あやつは何じゃ?」


 アルの言葉に俺は反応して、アルの視線の先を追う。


「蟻人族じゃないのか?」

「よく見てみぃ」


 アルは俺に呆れたように話すので、よく見てみる。

 羽根が生えているので、蟻人族に羽がある羽蟻だと認識していたが――。


「どういうことだ?」


 俺はアルの言葉に意味に気付く。

 蟻人族に羽根が生えているようにも見えるが、尾から針のようなものも出ている。

 見方によっては蜂人族にも見える。

 そういえば――俺は思い出した。

 蟻は蜂の進化した姿だと、何かの本かテレビいや、誰かから聞いたのかの知れないが、その事実だけが頭を過ぎった。

 どうして、蟻が尾に毒針を持っていないと思っていた‼

 外来種でニュースにもなったヒアリは、尾に毒針を持っていた。

 ……あれは蟻人族なのか?


「気付いたようじゃの」

「あぁ……」

「あやつは羽根があるのに、触覚が曲がっておるぞ」

「……」


 たしかに触覚が曲がっている。

 蟻人族と蜂人族の違いの一つだが……。

 俺はもう一度、攻撃をしてくる相手を確認する。

 触覚が曲がり、羽根は大きい。

 蜂人族でも蟻人族で、区別するのは難しいと感じた。


(もしかして……アルは、このことが言いたかったのか?)


 アルを見るが、ネロの戦闘を楽しそうに見ていた。

 俺の過大評価だったのだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る