第882話 シーランディア -1!
「そういうことか」
ホオリンは、アリエルの説明に納得した。
「しかし、アリエルたちと契約したのも驚きだが、
ホオリンはシロとクロを見ていた。
エターナルキャットとパーガトリークロウに名を与えたことが信じられないのだろう。
「まぁ、考えても仕方ない。ちゃちゃっと契約するか!」
「そんな簡単にいいのか?」
「あぁ、実績だけみても信用出来るのは間違いないしな。考えるだけ無駄だ」
ホオリンが俺に『火精霊の証』を施す。
「これでタクトは、人族のいう精霊王だな」
ノッチが嬉しそうに話す。
「しかし、魔王が精霊王とは……」
アリエルが苦笑いをする。
「魔王が精霊王?」
ホオリンはアリエルの言った意味が理解出来ていない。
「あぁ、俺もそこのアルやネロと同じように魔王だ」
「はぁ?」
ホオリンは眉をひそめる。
「ホオリンとやら、そこのタクトはただの魔王ではないぞ」
「そうなの~」
「妾とネロを倒した最強の魔王じゃ‼」
「師匠は、最強なの~‼」
もう、この
「最強か……それなら、シーランディアの封印も問題無いな」
俺はアルとネロを見ると、二人でコソコソ何かを話している。
「なんで、覚えておらんのじゃ‼」
「それはアルも同じなの~!」
「タクトに関係ないことじゃし――」
「なにをコソコソと話しているんだ?」
俺は二人を問いただす。
「いや、そのじゃな……覚えてはおるんじゃが、妾とネロはシーランディアにいた虫のような連中と戦っていたので、どうやって封印したのか覚えておらんのじゃ」
「そうなの~、それはロッソの役割だったの~」
「それは、ロッソが封印をしたから、アルとネロでは分からないということなのか?」
「そういうことじゃ」
「ごめんなの~」
第三柱魔王のロッソは既にいない。
冥界に行って聞いて来るしかない――が、一つの疑問が浮かぶ。
「そのシーランディアは、どうして封印されたんだ?」
「それは、ガルプからの依頼じゃ」
「ガルプからの依頼だと⁈」
――シーランディア。
まだ、国や領地などという概念が乏しい時代、そこは外骨格の者が多く存在していた今は無き大陸の名前。
今となっては知る者は殆どいない。
昆虫から進化したため、体は殻で覆われている。
繁殖すること……種族の存続、数を増やすことのみにしか興味が無い。
今、俺たちが暮らしている場所とは別の進化を遂げたため、影響はなかった――はずだった。
進化の過程で、長時間の飛行能力を得た者が現れる。
そのため、シーランディアから、新たな土地を目指すものが出てきた。
その結果、今のエルドラード王国やオーフェン帝国は、外骨格……蟲の人型である魔物に侵略されていく。
女王の命令にしか従わない社会性昆虫なのだろう。
当然、種族全体に意思伝達が可能だ。
シーランディアで種族抗争していたのは、蜂人族と蟻人族の二種族らしい。
最初こそ、地上と空中とで支配する箇所が明確になっていたが、蟻人族から羽根を持つ者が誕生すると、状況は一変する。
空中戦では蜂人族に敵うはずもないが、蟻人族が飛行能力を持った事実が、蜂人族の女王に脅威を与えた。
いずれは、自分たちと同等の進化をするかの知れない――と‼
攻撃をされた訳でも無い蜂人族は、先制攻撃を蟻人族に仕掛ける。
攻撃された蟻人族は怒り心頭で、反撃に出る。
共に大群同士の抗争。
蜂人族も地上での戦いに特化した者まで現れる。
これが進化なのか退化なのかは分からないが、戦いに適応するために変化する必要があったのだろう。
毒針と酸。それぞれの特徴があるにしろ、戦況は拮抗していた。
倒した相手を食料として、長い抗争は続く。
次第に食料となる生物が少なくなる。
蟻人族のなかには、海に食料を求める者には新しい機能が備わる。
海中でも少しであれば行動が可能になる。
蜂人族と蟻人族は、それぞれが独自の進化をしていた。
実験場であるシーランディアから逃げ出した蜂人族と蟻人族が、別の大陸で実験をしていた障害になるとガルプは判断をする。
そして、ガルプは【恩恵】を餌にアルたちにシーランディアの封印と、逃げ出した蜂人族と蟻人族の殲滅を命じる。
シーランディアの蜂人族や蟻人族を殲滅しなかったのは、いずれ利用できると考えていたのだろう。
長い間、封印された状況で今も生存しているかは分からない。
もし生存していたら――。
当時、シロも蜂人族や蟻人族の討伐に参加したと教えてくれた。
一糸乱れぬ軍団だったので、面倒だったと当時を思い出していた。
蟻人族か蟻人族の死体を食べた獣や昆虫たちが、その因子を受けて昆虫型魔族などに進化した可能性もあるのだろう。
駆逐行為をしていたアルとネロだったので、封印の方法はロッソ任せのようだった。
ロッソの苦労が目に浮かんだ。
随分と苦労したのだろう――と。
……ガルプからの依頼であれば、エリーヌやモクレン、ヒイラギは情報を持っているはずだ。
これは、神たちに聞く必要がある。
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