第789話 王都襲撃-11!

「王都に住む者いや、エルドラード国民よ! 余の名はルーカス・エルドラード。少しだけ、耳を傾けて欲しい」


 王都の方から声が響く。

 聞き覚えのある声――国王であるルーカスの声だ。


「魔族の言葉に惑わされるな。目の前の真実に目を向けよ。今、自分たちを救おうと戦っているのは誰だ!」


 ルーカスの声が、ここまで響く事は考えられない。

 ……シロか⁉


「魔族の言う通り、その冒険者を倒したところで、得をするのは誰かを今一度、考えるのだ。余は思う。魔王だから人族の敵だという考えでなく、彼は人族を守るために魔王になるしか無かったのではないだろうか?」


 街の人たちから、俺(分身)への攻撃を止め、ルーカスの声に耳を傾けている。


「そして、エビルドラゴンと戦ってくれている第一柱魔王のアルシオーネ。彼女も又、私たちの味方だと余は思っておる。もう一度、国民に問う。本当に助けてくれる者が誰なのかを胸に手を当てて考えて欲しい」


 ルーカスが国民に向けての言葉を終える。


「……面白くないですね」


 プルガリスはルーカスの行動が気に入らないのか、不機嫌な表情を浮かべていた。


「思い通りにいかないから、焦っているのか?」


 俺はプルガリスを挑発する。


「本当に貴方は私をイラつかせますね」

「図星のようだなっ!」


 俺は【一刀両断】で左腕の一本を切断する。

 体を切るつもりだったが、上手く避けられた。


「――っ! 【闇包球】」


 一瞬、怯んだプルガリスだったが、近距離から【闇包球】を幾つも放出した。

 俺の四肢は【闇包球】に吸い込まれ、爆発が起きる。

 続けざまに【闇包球】が俺を襲う。

 俺の【自己再生】の速度より早く、【闇包球】で攻撃を仕掛けて来た。

 勝算は俺に分があるはずだ。

 プルガリスは、自分が勝利する方法を攻撃しながら考えているのだろう。

 【光縛鎖】のせいで【転移】を使用することが出来ないので、プルガリスの攻撃をまともに受ける。

 どれだけ自分がスキルに頼って戦ってきたのかが、身に染みて分かった。

 スキルの強さを自分の強さだと勘違いしていたことを痛感する。

 ……俺は成長していないのか?

 自分に問いながら、痛みで意識が飛びそうになる。


「親びん!」


 胸にいたピンクーが叫んだ。


「……なんだ?」

「い、いえ、親びんの意識が消えそうでしたので……」

「そうか、助かった。ありがとうな」

「私が足枷になっていますか?」

「どうだろうな……」


 ピンクーが【闇包球】に巻き込まれないようにしたり、戦闘しているのは事実だ。

 プルガリスも気付いているので時折、ピンクーを攻撃したり、フェイントを入れたりする。


「必ずお役に立ちますので……」

「分かっている」


 クロがピンクーに俺の所に残るようにといったのだから、理由があるのだろう。


「これでどうですか‼」


 今迄で一番大きな【闇包球】で俺に止めを刺すかのように投げつける。


「……待っていたよ」


 俺は自分が当たる寸前に、【転送】で自分の目の前にプルガリスを移動させた。


「ぐぁぁぁぁ――っ!」


 プルガリスは、【闇包球】に体の一部を吸い込まれて爆発する。

 俺もその爆発に巻き込まれた。

 イチかバチかの賭けだった。

 【光縛鎖】の特性上、鎖の距離以上に離れることは出来ない。

 しかし、近付くための【転移】は普通に発動していた。

 先程の【闇包球】の攻撃を受けた時も【転移】を使い、微妙に位置を移動していた。

 鎖の届く範囲であれば【転移】が使える。

 それならば【転送】も可能だ。

 実際、その通りだったので安心する。


「はぁ、はぁ――まさか、自分の技で傷を負うとは……仕方ありません」


 プルガリスの体が変化する。

 背中の翼は四つになり、無くなった体は復元する。

 そして腕は更に二本増え、六本となる。

 そして、額にはクロと同じ三つ目の眼が出現した。


「まさか、この形態まで見せることになるとは――」


 プルガリスの最終形態なのだろう。

 それだけ、プルガリスも追い詰められているようだ。

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