第754話 憧れ!
「ピンクーと申します。以後、宜しく御願い致します」
ピンクーはアラクネ族の者たちに挨拶をする。
今迄に見た事の無い奇妙な生き物に興味津々のアラクネたち。
「本来の大きさに戻っていいぞ」
「はい、親びん」
ピンクーは小さくなった時と同じようなポーズを取り、体を元の大きさへと戻す。
大きくなる様子を見ていたアラクネたちから、歓声があがる。
俺は族長のクララに、ピンクーが入るように胸に小さなポケットを上着に追加して貰うように頼む。
俺のスキル【複製】で数を増やしていることも伝えて、三着とも頼む。
「分かったわ。すぐに出来るから、待っててくれる」
「ありがとうな」
俺は【アイテムボックス】から二着取り出して、クララに渡す。
その後、着ていた上着を脱いで渡した。
「本当に、同じものなのね……」
クララは受け取った上着を見ながら、感想を言う。
続けて、ポケットの大きさを知りたいというので、ピンクーにもう一度小さくなって貰う。
「内ポケットよりも少し浅い感じね」
上着とピンクーを見ながら、ポケットのサイズを確認する。
クララは何人かのアラクネを呼び、指示を出していた。
「ありがとうございました」
その聞き覚えのある声の方を向くと、
オリヴィアが礼を言った理由は、同じ
「まぁ、俺の力だけでは無理だったから、運が良かったということだ」
「いいえ。私からすれば、この結果は必然だと思っています」
オリヴィアは優しい笑みを浮かべていた。
「まぁ、これで
「私たちは、そんなに無理なことをお願いした記憶はありません。そもそも、出来ない方にはお願いしませんから」
変わらず笑みを浮かべたまま、話をする。
「まぁ、そういうことにしておくよ」
俺もつられて笑顔で返した。
三十分もしないうちに、上着が出来上がる。
試着してシロを左腕に抱えて、右肩にクロを乗せる。
ピンクーは足から俺の体を駆け上がり、新たに作られた左胸のポケットに入ると中で回転などをして、居心地を確かめるとポケットから顔を出した。
「素晴らしいです。親びん、ありがとうございます」
つぶらな瞳を輝かせて、礼を言う。
「礼なら、作ってくれたアラクネたちに言え」
「はい。アラクネ族の皆さま、私の為に色々と作業頂き、感謝致します」
ピンクーは左胸のポケットから礼を言う。
頭を下げるのが辛うじて分かった。
「ところで、ピンクーは人型にもなれるのか?」
「人型とは何ですか?」
この答えが返ってくるということは、人型を知らないということだ。
「シロ、クロ。悪いがピンクーに人型になった姿を見せてやってくれるか?」
「はい、御主人様」
「承知致しました」
二人共、返事をすると俺の体から離れて、人型へと姿を変える。
「おぉーーーーー!」
ピンクーは感動したのか、大声で叫んでいた。
「シロ姉もクロ兄も流石です。私でもいつか、そのような姿に変化出来るのでしょうか?」
「それはピンクー次第じゃないか?」
「一刻も早く、諸先輩方に追いつけるよう精進致します!」
ピンクーは興奮しながら、シロとクロを見ながら返事をする。
「人族の街に入る時、俺の許可なしにピンクーはこのポケットから絶対に出るなよ」
「承知致しました!」
敬礼のようなポーズをするが、見た目的には小動物にしか見えない。
これは俺の固定観念なのだろうが……。
「マリーたちとは、問題無いか?」
「えぇ、問題無いわよ。問題があるのは、どちらかと言えば私たちね……」
「なにかあったのか?」
「そうね、外の世界に憧れる子たちが多くなっているのよ」
確かに閉鎖的な空間で生活をして、外から見た事の無い物などを手に取ったりすれば、憧れる気持ちを持つのも分かる。
「現実的に私たちが、外に出てもいい事が無いことは分かっているんだけどね」
「人の生活しているところを見たいのか?」
「そうね、一度くらいは外の生活を見てみたいかな」
「普通の場所で無くてもいいなら、紹介するぞ」
俺の言葉にアラクネたちの視線が集まる。
視線と言っても複眼なので、一斉にこっちを見たことだけは分かった。
「でも、トラブルにならない?」
「あぁ、それなら大丈夫だ。文句を言える奴が居ないからな」
「……どういうこと?」
「まぁ、一度くらいは皆で見学でもしてみるのもいいかもな」
クララは首を傾げていた。
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