第748話 小休止!

 シロとクロと会話を楽しんだ。

 俺は二人に思った事を聞く。


「クロの影を媒体にして、ゴーレムとか造れるのか?」

「難しいと思います。しかし、検討してみるだけの価値は御座いますね。さすがは、我が主」


 クロは何かにつけて、俺を褒める。

 嫌では無いが、少しむず痒い。


「シロは新しい魔法でも出来たか?」

「はい。これです」


 シロは俺の腕の中から飛び出して、人型に変化して右手の掌を上に向ける。

 各指の先に【風球】が出来る。しかも小さい。それを投げるのではなく、息を吹きかけると、凄い勢いで飛んで行った。

 飛んで行った先の木は五か所の穴や抉られた跡がある。


「御主人様でも出来ると思います。掌でなく指先で魔法を発動するイメージです」

「なるほど……」


 俺は言われた通りに指先で魔法を発動するイメージをする。

 すると親指と小指に【火球】、人差し指に【風球】、中指に【光球】、薬指に【水球】が発動する。

 意識を集中すると、各球は徐々に小さくなっていき、直径一センチ程度の小さな球へと変化した。

 俺には【命中率自動補正】があるので、五つの球を別の場所に当てるイメージをして掌を返す動作をした。

 見事に五つの球は別方向へと飛び、俺の思った場所に直撃する。


「なるほど、別々の魔法を発動させるのも有りですね」


 シロは興奮していた。

 しかし、この使い方はかなり有効だ。


「いや、シロの発想が凄いだけだ。かなり実践でも役に立つ」


 シロは嬉しそうな表情を浮かべる。

 獣型に戻ると、俺の腕の中へと戻って来た。


「クロの影魔法いや、影スキル? は俺が覚えるとリスクが高いのか?」

「分かりませんが、主の命を危険に晒す可能性が無いとは言い切れません」

「そうか……」


 クロのなんでも捕獲出来て、影の中に保管が出来るスキル俺の【アイテムボックス】の上位互換だと思っている。

 確かにクロの言う通り、凄いスキルなので習得に伴うスキル値は、かなり多いと予想できる。

 だからこそ、クロも俺にスキル名などが分からないようにしてくれている。


 シロの耳がピクンと少し動き、クロも翼を広げる。


「主!」

「分かっている」


 魔物に囲まれたようだ。正確には魔獣だ。

 俺は【結界】を張り、姿を消す事にした。

 魔獣たちの数は、全部で十六匹。

 群れで生活をしているようだ。


「ムーンウルフですね」


 エクシズにいる魔物のムーンシリーズになる。

 目の前にいる『ムーンウルフ』の他にも『ムーンベア』や『ムーンボア』などがいる。

 狼よりも一回り大きい体に額に月齢に似た印がある。

 実際の月の満ち欠けに関係なく、ムーンウルフの力を示すバロメーターになっているようで、一番力があるのが当然、満月のように丸くなっている。

 新月は、群れの中でも一番弱い証だ。

 弱いと言っても魔獣なので、強さで言えばランクB以上だ。

 満月の個体にはランクA以上になる。

 ムーンウルフは、見た目で強さを測ることが難しい魔物の種類に入るので、冒険者の討伐クエストでも、ランクB以上で六人以上のパーティーでないと受注する事は出来ない。


 ムーンウルフたちは俺たちが、突然姿を消したので戸惑っている。

 奥から明らかに、他のムーンウルフたちより体の大きい個体が姿を現す。

 額には下弦の印が目についた。

 獲物だと思って俺たちに近づいたのだろうが、突然消えた事に苛立っている感じだ。

 もっとも、対面して俺が魔王だと分かったら、どういう行動に出るのかも気になった。

 しかし、以前にシロと製作した魔物図鑑を製作した時は、エルドラード王国の生息地域だけだったので、オーフェン帝国の生息地域までは把握していない。


「ところで、木の上にいるあいつは知っているか?」

「私は見たことありませんね」

「我も存じ上げません。新種でしょうか?」


 隠れているつもりなのだろうか?

 ムーンウルフたちを見ずに、俺たちの方を監視するように見ている。

 その魔獣? は、一メートル程のハムスターのような恰好だ。

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