第689話 黒狐との戦闘-2!

 黒狐の集落いや、本拠地は普通の村だった。

 何も知らなければ、普通に立ち寄り村人と会話をするような、何処にでもありふれている村だった。

 しかし、村の出入り口には見張りの村人が居る。

 傍から見れば、魔族や野獣を警戒して番をしているように見えるだろう。


 ステラは逸る気持ちを押さえられないのか、すぐに攻撃をしようとしている。


「まぁ、待て。もう少し、夜が更けてからだ」

「……分かっています」


 冷静を装うステラだったが、興奮しているのは一目瞭然だ。


「先に【結界】を張る。一応、何重にも重ねておくつもりだ。その後、クロが捕獲した奴等を解放する」

「分かりました。どれだけ強力な魔法を使っても問題無いのですね」

「あぁ、問題無い。好きなだけ暴れるといい」


 ステラは片手で握っていた杖を両手で握る。

 視線は村の方を一点に見つめていた。



 俺はステラと別れて、作戦通りに村全体に多重の【結界】を張る。

 そして、【全知全能】に「今、結界を張った村に黒狐人族以外の者が居るか」と質問をする。

 答えは「居る」だった。

 続けて人数を聞くと、「四人」と答える。

 その後も、「大人か子供か」や「それぞれの性別」等を聞いて特徴を確認する。

 その情報をクロの伝えて、すぐに確認をして貰う。

 ステラには、部外者が居る事を伝えて、少しだけ待機をして貰う。


 暫くして、クロが部外者の四人を影の中に避難させたと連絡が来る。


「待たせたな」

「いいえ。今迄、黒狐の事を考えていた時間に比べたら、大した問題ではありません」

「そうか」


 もう一度、作戦を確認する。

 作戦と言っても、俺が【転移】で村の中央にステラを移動させて、クロが影の中から黒狐人族を解放する。

 あとは、ステラが好き勝手に暴れるだけだ。

 ステラに危険が無い限り基本的に、俺は手を出さない。


「MP回復薬が必要か?」

「大丈夫です。用意して来ています」


 戦闘態勢に入っているステラは、いつもの穏やかな感じでは無かった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 

 


 突然の爆炎に驚き、叫ぶ。

 何が起こったのか分からない黒狐達だった。

 しかも先程までは、この村に居なかった仲間も居る。

 その仲間達も自分達が何故、この場所に居るのか分かっていない。

 クロが捕獲した黒狐の奴等なので、かなりの大人数の黒狐達が戸惑っていた。


 黒狐達が状況を整理している間も、村中に爆音が鳴り響く。

 ステラの姿を発見すると、即座に敵だと判断をする。

 そして、戦闘態勢に入ると同時に、多方向から攻撃をしてきた。

 上手く連携を取っているので、かなり訓練したのだろうと思いながら観察する。

 その攻撃に対して、ステラも魔法で対抗していた。

 広範囲の魔法を使っているので、必ず死者は出ている。

 しかし、身体能力が高い黒狐達は、ステラの魔法を回避しながら、攻撃を仕掛けている。

 仲間の死体を盾や、囮に使っていた。

 利用出来る物は例え、仲間の死体であっても利用するという考えなのだろう。

 命を落とした時点で、既に仲間では無いのかも知れない。


 ステラの使う魔法は、上級魔法もしくは、超級魔法と呼ばれる魔法ばかりだ。

 しかも魔法が途切れる事無い。

 未だMP回復薬を飲んでいないので、MPが枯渇してはいない。

 俺の想像以上にMP値が高い。

 流石は、この国唯一の賢者だけはある。


「……まずいな」


 最初こそ冷静にしていたステラだが徐々に、怒りに任せて攻撃をしている為、攻撃も雑になってきている。

 疲れもあるだろうが、お構い無しに目に入った黒狐達を駆逐していた。


 ステラも油断していたわけではないと思うが、死体に隠れていた黒狐が、ステラを襲う。

 間一髪で避けるが、軽く斬られる程度の傷を負っってしまう。

 その後も、MP回復薬を飲みながら攻撃をの手を休める事は無かった。

  

 ステラの顔色が悪い。

 先程、受けた攻撃の影響なのだろう。

 黒狐の剣等の刃に液体らしきものが付いているのに気付く。


「……毒か」


 ステラは気付いていないのか、そのまま攻撃を続けている。

 暫くして、ステラの攻撃が止まる。

 黒狐達の数も最初に比べれば、四分の一程度まで減っている。

 これだけの騒ぎにも関わらず、頭目のブラクリが出てこないのは変だ。

 嫌な胸騒ぎがする。

 俺は【全知全能】に、俺が【結界】を張った村に黒狐の頭目ブラクリが居るかを訊ねる。

 答えは「居る」だ。

 最後に登場するつもりなのか? それとも何処かで指示を出しているのか……。

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