第685話 気持ちの整理!
ルーカスは用事がある為、すぐに話をする事は出来ないそうだ。
ステラは護衛任務に戻り、俺は連絡があるまで城で待機する事にした。
当然、ステラとは連絡先の交換をする。
特にする事も無いので、城の復旧作業でも手伝おうと城の外へと歩いていた。
「タクト殿、どうなされたのですか?」
廊下で偶然、ユキノとヤヨイに出くわす。
護衛の衛兵も居る。
一応、俺の事も知っているので警戒される事も無かった。
衛兵の反応に、少しだけ安心する。
「あぁ、ステラの件で国王に報告があったんだが、忙しいので待機している。暇なんで、城の復旧作業でも手伝おうかと思ってな」
「そうなのですね。お暇であれば、私達とお茶等如何でしょうか?」
「……俺と?」
「はい。冒険のお話等をお聞かせ願えたらと」
「そうだな……誘って貰えたのは嬉しいが、王女達に聞かせられるような話も思いつかない。考えておくから又、今度誘ってくれるか?」
「はい、分かりました」
俺自身、ユキノへの接し方に戸惑っていた。
オーフェン帝国へ行く事に拘った事等、色々と聞きたいことはある。
しかし、俺は誘いを断る事にした。
「では」
ユキノとヤヨイは頭を下げて去って行った。
毎回、最後だと思いながら、ユキノを見てしまっている事に俺は気付く。
一度、失ってしまった恐怖心からなのかも知れない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「流石だな!」
瓦礫の撤去や、資材の移動を手伝うと、作業員達から重宝される。
俺のおかげで作業が捗るからだろう。
休憩時間になると、俺の所に作業員が集まってくる。
ギルマスのジラールと城に入って行く所を見られているので、城に入れる程の冒険者だと思って話し掛けて来たのだろう。
隠しても面倒なので、冒険者のタクトだと言うが大多数の作業員達には分からないようだ。
一部の作業員が「無職無双のタクト」と言うと、本人の目の前で俺の説明を始めていた。
数人が代わる代わる話すが、見に覚えも無いような話も混ざっていた。
そもそも存在自体を疑われていた『ランクSSSの冒険者』が現れただけでも、話題性抜群だ。
しかも、無職。
一部には賄賂等を支払って得た不当な地位だという者も居るそうだ。
此処にいる作業員達は、石材等を軽々と運んでいる俺の姿を見ているので、信用しているようだ。
「しかし兄ちゃんが、そんなに凄い冒険者だとは知らなかったぞ」
「そうだ。何処にでも居る冴えない青年にしか見えないからな」
俺を見ながら、思ったことを口々に言っている。
嫌味の無い口調なのか、聞いていても不快な感じは受けなかった。
休憩も終わり、引き続き復旧作業を手伝おうとすると、ユキノとヤヨイが現れる。
陽に照らされながら、城を復旧する作業員達に差し入れを持ってきたようだ。
作業員達は膝を付き感謝していた。
当然、ユキノ達は俺が居る事を知っている。
差し入れを渡したので、そのまま帰るかと思っていたら暫く作業を見ていると、作業の邪魔にならないように、端の方で見学していた。
俺は気にしないようにと、指示を受けた瓦礫や資材を運ぶ。
暫くすると、作業員の一人が俺の所に来て、ユキノ達が呼んでいると言うので連れて行かれる。
何で呼ばれたのかが分からないので、少し不安になる。
「タクト殿。事故があった時に、救助や治療等をして頂いたそうで、有難うございました」
前回、城に来た時に起きた事故の事だと分かった。
「自分に出来る事をしただけだ。わざわざ、礼を言われるような事じゃない」
「いえいえ、作業員の方々は本当に感謝をされておりました。しかも、名も告げずに去っていかれたと聞いて、素晴らしい人格の持ち主だと感じておりました」
「そんな立派なものじゃない。買いかぶりすぎだ」
俺はユキノから目線を逸らしながら話す。
一緒に居る作業員も、俺が治療をしたらしく、その時の状況を熱くユキノ達に語り始めた。
他の作業員達も感謝していたし、疲れを取る処置もしてくれた等だ。
それをユキノ達は黙って聞いている。
「タクト殿は、御父様の仰られるとおりの方なのですね」
「国王は俺の事を、なんて言っているんだ?」
「基本、他人の為に動く方だと聞いております。そして、逆らっても無駄だとも仰っておられました」
「それは間違った情報だな。俺は自分勝手だからな」
「そうなのですか?」
「あぁ」
ルーカスが言っている俺の印象が、ルーカス自身感じた事なのか、第三者からの情報なのかは分からない。
アルやネロが余計な事を、ルーカスに言っていないか心配だ……。
ユキノ達が戻るタイミングで、ステラから連絡が入る。
俺はユキノ達を見送って、少し時間をおいてステラの所へ向う。
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