第669話 有益な情報!

 話を聞き終えた俺は、かなり有益な情報を得たと確信する。

 まず、黒狐人族の組織が黒狐と言う名だという事。

 これが分れば【全知全能】に質問をすれば回答を得られるはずだ。

 以前に黒狐人族の事で質問した時は、俺の質問内容が曖昧な為、欲しい回答が得られなかった。


 俺は【全知全能】に質問をすると、黒狐の拠点はエルドラード王国に三つあった。

 黒狐人族の最高責任者は『頭目』と呼ばれている。

 頭目の名は『ジャン』と言うらしい。

 場所も分かった事だし、エルドラード王国の闇稼業であれば、潰しても文句は無いだろう。

 一応、ルーカスには事前に断りは居れるつもりでいる。

 正確にはステラの復讐相手なので、居場所が分かれば同行する可能性もあるからだ。


「黒狐は俺がなんとかしよう」

「はっ?」

「用事を終えたら、頭目のジャンとやらも含めて殲滅してやる」


 俺がジャンと言う名を出すと、ララァとタラッシュの顔色が変わる。


「頭目は九尾です。そう簡単に倒せる相手では無いです。それに頭目を守る者達も腕利きばかりです」

「なぁ、何とかなるだろう」


 俺が気楽に構えているのが気になったのか、真剣な表情でダルベットが諭すように話しかけて来た。


「自分の力を過信しすぎると、思いもよらぬ結果になるぞ」

「忠告は有難いが、決して過信しているつもりは無い」


 俺は答えるが、ダルベットは信じていない。

 自分に思い当たる節があるから、忠告してくれているのだろう。


「シロにクロ。姿を変えてくれるか?」

「はい、御主人様」

「承知致しました」


 俺の後ろに居たシロとクロの二人は、獣型になりいつもの定位置に移動する。

 一瞬の事なので、ダルベット達は驚いていた。


「シロはエターナルキャット、クロはパーガトリークロウだ。先程までの姿は仮の姿だ」


 エターナルキャットにパーガトリークロウの知名度は俺以上にある。

 この二人が仲間だという事が分かれば、俺の言葉の意味も少しは理解して貰えるだろうと考えた。


「まさか……」


 ダルベットは信じられないでいる。

 オーフェン帝国であれば、国の象徴であるケット・シーもフェンが居るので、エターナルキャットとは言え、シロが崇められる事も無いだろう。


「少し御待ち頂けますか」


 急に敬語で話すと、ダルベットは奥の部屋へと入って行く。

 そして、すぐに戻って来た。


「これを預かってます」

「なんだ?」


 封書を手渡される。

 裏にはフェンの名がある。


「何故、ケット・シーのフェンが俺に?」

「私達にも分かりません。ただ、エターナルキャット様を連れた人間族のタクトと言う方にお会いしたら渡すようにとだけ、言われております」

「そうか……」


 俺は手紙を読んだ。

 内容は俺についての事だった。

 フェン以外、俺の事を覚えている者が居なくなってしまった事に驚き、状況を把握したいという事だった。

 確かに、人族以外は覚えているのでフェンは自分が狂ってしまったかと、錯覚でもしたのだろう。

 そして、ダルベットは俺がフェンと親交のある者だと分かったから、途中から敬語で話すようにしたようだ。


 俺はダルベット達に敬語や丁寧で話す必要が無い事を伝える。

 そして、もしかしたら一生出会う事が無かったかも知れない俺の為に、封書を持ってくれていた事に対して、礼を言う。


「シロ、悪いけど頼めるか?」


 腕の中のシロを見ながら頼むが、明らかに嫌そうな雰囲気を出していた。

 多分、シロなりにこの展開になる事を読んでいたのだろう。


「御主人様の御命令であれば、拒否する事は出来ません」


 シロにはフェンへの言伝を頼んだ。

 シロがフェンに対して、苦手意識を持っているのは知っていたが、適任なのはシロを置いて他には居ない。


「では、行ってまいります」


 シロは俺の腕から消えて、フェンの所に向かった。

 ダルベット達はシロが消えた事に驚いていたが、エターナルキャットだからか、納得していた。


「ララァとタラッシュの体調を見させて貰ってもいいか?」


 俺の提案にダルベットはララァとタラッシュの顔を見る。

 二人共、静かに頷いた。

 俺は礼を言って、二人を診断する。

 体に多少だが魔素がある。

 魔素の流れを辿って行くと、紋章と言われる刺青の所へと続いて行った。

 魔素を大量に取れば魔素中毒になる。

 しかし、先程の話だと強化薬は魔素の塊のような物なのだろう。

 紋章を媒体として、一時的に魔人のような者となり、肉体強化して必要以上の力が出せるのだろう。

 人体に影響が少ないような量を探し出したのだろうか?

 それとも……。


 俺はララァの腕にある紋章に手を当てて、【神の癒し】で魔素を取り除き、体調を確認すると「調子が良い気がする」と答えてくれた。

 続けて、タラッシュにも同じ処置をした。

 強化薬については黒狐の頭目ジャンに聞く必要がある。



「俺達も、そろそろ行くわ」

「そうですか。あの山は険しいですし、何人も行方不明になっていると聞いております。お気を付けて」

「ありがとうな。ダルベット達も元気でな」

「はい、御武運をお祈り致します」


 敬語のままだったが、指摘する事も無くダルベット達に別れを言って、国境にある山へと向かう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る