第666話 厄介者!

 町の外で待機して暫くすると、ダルベットが男性と一緒に現れる。

 彼が町の代表なのだろう。

 まだ若いのには驚く。見た目的には三十代後半くらいだ。


「私がプレッツ町の代表、ルイボスと申します」


 男性が俺に自己紹介をしたので、俺も【呪詛証明書】を提示しながら自己紹介をする。

 シロとクロに関しても、俺の仲間だと伝える。


「頂いたこの手紙の内容は、真でしょうか?」

「あぁ、俺もその場に居たから本当だ。これからシャレーゼ国は変わっていくだろう」

「そうですか……」


 ルイボスは複雑な表情だった。

 新しく国王になったネイラートの事を、よく知らないという事もあるだろう。


「ネイラートは、前国王と違って国民に寄り添える事が出来る男だ」


 しかも、ほんの数分前に会ったばかりの俺の言葉だ。

 ルイボスに対して、どれだけ信憑性があるかは分からない。


「分かりました」


 ルイボスは今迄以上、酷い状況にならなければと思っていたのだと思う。

 その後、俺達はプレッソ町を見て回る。

 やはり、特別気になるような物は無かった。

 途中で獣人を見かけたので、彼らがダルベットの仲間なのだと分かる。

 向こうも俺に気が付いたようだが、接触してくる様子も無かった。

 敵意を向けられている感じでは無かったので、そのまま素通りする。


「ちょっと、いいか?」


 一通り見終わった所で、ダルベットが声を掛けて来た。


「ん、なんだ?」


 俺が冒険者ランクSSSだという事で、話を聞きたいという事だった。

 仲間も呼んでいいかと聞かれたので、構わないと答える。

 面倒なので俺達がダルベットと、仲間の所へ行く事にした。


 ダルベットが案内してくれた場所は、仕事場兼住居だった。

 先程、見かけた獣人も居る。

 ダルベットは俺を紹介してくれる。

 シロとクロは俺から仲間だと紹介する。

 俺達の紹介が終わるとダルベットが、仲間を紹介してくれた。

 男性は虎人族のローバルに、狐人族のタラッシュ。

 女性は猫人族のトリンに、狐人族のララァ。

 ララァとタラッシュは、姉弟だと教えてくれる。

 俺が先程見た獣人は、ララァだ。


 ローバルは顔に大きな傷跡があり、トリンは片足が不自由のようだ。

 タラッシュとララァも一見、普通に見えるが何か事情があるのだろう。


「まぁ、見ての通りオーフェン帝国では厄介者扱いだから、ここに飛ばされたという訳だ」

「厄介者?」


 俺は聞き返す。

 実力主義のオーフェン帝国で戦闘能力が損なえば、使えない者のレッテルが貼られる。

 力が強い獅子人族や虎族。

 素早さ等で対抗する猫人族等様々だ。


「ララァとタラッシュは、エルドラード王国からの移民だが、オーフェン帝国に馴染めなかったようでな」

「エルドラード王国に戻ると言う選択肢は、無かったのか?」


 俺の質問にララァもタラッシュも答えなかった。


「まぁ、色々とあるんだろうな」


 彼らがシャレーゼ国に来た理由は納得出来た。

 経緯はどうあれ、最後は自分で決めて此処にいるのだろう。

 これ以上、質問をする事は無かった。


(主。良いですか?)

(どうした、クロ)

(タラッシュと言う狐人族ですが先程、腕に紋章のような物がありました)

(紋章?)

(はい。以前にラウ殿からお聞きした、黒狐人族の紋章では無いかと思われます)

(確証はあるのか?)

(はい。主と出会う前に何度か、遭遇した事があります)

(分かった)


「出来れば、ララァとタラッシュだけに聞きたい事がある」

「俺達に聞かれたら不味い事か?」

「それを判断するのは、ララァとタラッシュだ」


 ダルベットは、ララァとタラッシュを見る。


「俺達にも聞かせて貰えるか?」

「あぁ、別にいいぞ」


 ララァとタラッシュが不安だと感じたのか、全員で話を聞く事にしたようだ。


「……黒狐人族」


 俺がそう呟くと、全員立ち上がる。

 ララァとタラッシュは、俺に攻撃を仕掛けたがシロとクロが阻止する。


「この反応は当たりのようだな」


 俺は攻撃を仕掛けて来たララァとタラッシュを見る。


「刺客か!」


 タラッシュが叫ぶ。


「いいや、黒狐人族を探しているだけだ。どちらかと言えば、俺達の敵だな」

「信じられるか!」


 タラッシュは更に叫び、攻撃しようとするがクロが尽く、攻撃を止める。

 しかし、先程の反応を見る限り、他の三人もララァとタラッシュが黒狐人族だという事を知っていたようだ。


「そういうお前達こそ、黒狐人族の仲間か?」


 俺は少しだけ殺気を込めて話す。


「悪かった。お前達と敵対するつもりは無い」


 ダルベットが謝罪をして、ララァとタラッシュにも、俺に謝罪をするように言う。

 ララァとタラッシュも、素直にダルベットの言葉に従い、俺達に謝罪をしてくれた。


「話せる範囲でいいので、黒狐人族の事を教えてくれるか?」


 俺の言葉にダルベットとララァは目を合わせていた。


「分かりました」


 ララァが俺達に何か教えてくれるようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る