第663話 シロの休日!

 私の名はシロ。

 種族はエターナルキャット。

 シロという名は、御主人様であるタクト様から頂いた大切な名前。


 私の御主人様は、異世界より転移された転移者。

 その為は、この世界の常識が分らない事が多く、非常識な人物だと、よく噂されている。


 魔獣である私に対しても、一匹と言う言葉を使わずに必ず一人と言う表現を使ってくれる。

 そもそも、主従関係にある筈の私に対して、同等の扱いをしてくれる。

 今迄、生きてきた中で積極的に交流を持つ事もしなかった。

 私の意思とは関係無く、聖獣等と言われる。

 さほど関心は無かったが、聖獣と呼ばれ始めた事で良い事も悪い事もあった。

 聖獣と呼ばれたおかげで、このエクシズを管理する新しい神エリーヌ様から、眷属にならないかと御話を頂き、了承したがすぐに御主人様に従う事になった。

 御主人様はエリーヌ様の事を嫌っている気がする。

 出会った頃に、一度だけ「エリーヌ様がお嫌いなのか」と聞いた事がある。

 御主人様は困ったような笑顔をされていた。


 御主人様とは意思をある程度、共有することが出来る。

 そのおかげで、御主人様の力になれた事が何回もあった。

 なにより、御主人様のレベルが上がると、私も強くなる。

 おかげで、今迄習得しなかったスキルも覚える事が出来た。

 【魔法創製】もその一つになる。


 御主人様より休暇を頂いたが、何をして良いのか分からない為、時間を持て余していた。

 人型になり、街をぶらついて人々を観察したりしていた。


「君、可愛いね」


 たまに声を掛けてくる人族も居る。

 そういう時は決まって、走って逃げる。

 そして、角を曲がると同時に獣型に変化して、追って来た者を振り払った。

 この方法が一番良い対処方法だと気付くまでには時間が掛かった。


 獣型になると、猫達が集まってくる。

 そして、色々な情報を教えてくれたりする。

 なかにはとても興味深い話もあるので、時間を潰すには丁度良かった。


 御主人様より休暇を延長すると連絡が入る。

 正直、困った。

 御主人様と出会うまでは、着の身着のままの生活をしていたので、時間の流れを気にする事もなかったが、御主人様と行動を共にするようになってからは、御主人様から指示を頂く事が、とても嬉しい事だと気が付いたからだ。

 仕方が無いので、人気の無い場所まで移動して【魔法創製】をする事にした。


 以前に御主人様に披露した、光の玉から光線が放たれる【操光弾】を改良しようと思っていた。

 遠距離攻撃から近距離攻撃に加えて、防御系の魔法もあれば今後、御主人様の役に立てる。

 御主人様の戦闘スタイルは基本的に一人で闘う。

 私達が近くに居ると、逆に戦い辛くなる事は分かっている。

 私にはクロさんのような捕獲系のスキルが無い。

 だからといって、捕獲系のスキルを新たに作ろうとは思っていない。

 クロさんにしか出来ない事があるように、私にしか出来ない事で御主人様をサポートする必要がある。


 【魔法創製】を行う上で、まず最終形を思い描く必要がある。

 それは今迄、御主人様と一緒に戦った敵からヒントを得る事もある。

 床から影の槍を出して攻撃する魔法。

 私は同じように光を放ってから、光を纏った炎の槍を出す魔法を試してみる。

 最初は上手く発動出来ないが、自分のイメージが固まってくると自然と魔法名が頭に浮かぶ。

 今回の魔法は【光炎地槍】と言う魔法名が頭に浮かんだ。

 その時点で【魔法創製】は完成した事になる。

 休暇中は、ひたすらこの【魔法創製】で新しい魔法を作り出す事にする。


 今度、御主人様に披露する時に褒めて貰えるかと思うと、頬がにやける。


 そういえば、先日御主人様に頼まれていた仮面を探して、第三柱魔王のロッソ様を訪れた。

 普通でない仮面を探していた御主人様なので、ロッソ様であれば希望に適う仮面があると考えたからだ。

 御主人様は【変化】のスキルを習得しているので姿を変える事が出来る筈だ。

 敢えて、仮面を探すという事は私では考えが及ばない事を考えているのだと思う。

 一応、仮面は御主人様の希望通りだったようで安心はした。

 御主人様の要望に応えられない従者は、役立たずなのと同じだからだ。


 これからも誠心誠意、御主人様に尽くしていくつもりだ。

 御主人様の敵は、私にとっても敵という事には変わりない。

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