第632話 要注意人物!

 ネイラート達と別れて部屋に戻ろうとするが、先程とは違う部屋にアスランが案内してくれた。

 移動中、アスランもロキサーニも俺を警戒していた。


 部屋を出る前にアスランとロキサーニ別々に【交信】があり、誰かと連絡していた。

 その後、俺への態度が明らかに違っていたので、俺に関する情報を聞いたのだと推測する。

 ターセルと対面した段階で、こうなる事はある程度予想で来ていたので、驚く事も無かった。


 部屋の前には何人もの騎士達が待機していた。

 アスランとロキサーニの後、部屋の入ると多くの騎士団が待機していた。


 アスランとロキサーニの後、部屋の入ると【結界】が破壊される感じがした。

 護衛衆から身を引いたカルアが居るという事だろう。

 部屋の中には、騎士団長のソディックをはじめ、多くの騎士団が待機していた。

 完全に要注意人物と認定されたという事だ。


 アスランとロキサーニが俺から離れると、騎士達が俺を取り囲むように配置を変える。

 ジラールやヘレンも居るが、黙って見ているだけだった。

 俺という存在が、どう捉えられているかがよく分かる瞬間でもあった。


「冒険者タクトよ。お主は人族の敵か?」


 以前と違い、信用していない目でルーカスが俺に質問をする。


「敵ではないと言ったところで信用してくれるのか?」

「お主の言葉を信用する」


 俺の答えにルーカスは即答する。


「そうか。人の心を持っている人族の敵ではない。人体実験や、平民を物と扱うような奴は敵だ」


 俺は正直に答える。


「成程……」


 ルーカスは少し考え込むと、ソディックに待機していた騎士団を引き上げさせるように命じた。

 ロキサーニは何か言おうとしていたが、ターセルが静かに手を出して止める。


「一応、人払いはしたつもりだ。お主の事を詳しく聞かせて欲しいが良いか?」

「それは構わない。そこのターセルに、俺のステータスや称号等も見られているだろうしな」


 笑いながらターセルを見る。


「そこまで知っていたか……」

「それと隠れているカルアも出て来ていいぞ」


 俺がカルアの事を話すと、皆が驚く。

 どうやら、知ってたのはルーカスとイースだけのようだった。

 姿を現したカルアは、「どうして!」という表情だった。


「カルアの存在まで分かっていたのか……」

「あぁ、この部屋に【結界】を張ってあったからな。【結界】のスキルを持つ者は俺の知る限り二人だけだからな」

「お主の知る限りだと?」


 カルアとライラの二人が【結界】のスキルを持っている。


「単刀直入に聞くが、お主が魔王なのは本当なのだな」


 魔王という言葉に、知らなかった者は驚き、護衛衆は攻撃態勢を取る。


「あぁ、とある事がきっかけで魔王になった。知っていると思うが第一柱魔王アルシオーネと第二柱魔王ネロは、俺の弟子だ。それに、第三柱魔王ロッソとも茶を飲む仲だ」


 俺は嘘偽りなく話す。

 ゴブリンロードやオークロードを討伐したと言っても、記憶操作がされていると思うので、余計な事は言わなかった。

 それと、アルとネロが俺の弟子だと言ったので、その通りに伝えた。

 ロッソについては、ロッソが親友だと思っていない可能性があるので、言葉を濁して仲が良い事だけを教えた。


「そうか……」


 以前にも見たルーカスが困った表情をしていた。

 あの時とは状況が違う。

 ゴンド村の件もあるし、以前よりも難しくなっている。


「この件は、第一級極秘事項とする!」


 ルーカスが前回と同じ内容を宣言した。

 皆、頭を下げて了承していた。

 仮に国外追放にしたところで、問題解決にはならないし、俺が国外追放の処分になったら、アルとネロが黙っていない。


 しかし、個人的に話があると言っていたのは、この件なのだろうか?


「ジラールにヘレンは一旦、退室してくれ」


 ルーカスは二人に退室を求める。

 ジラール達が退室すると同時に、ターセルを残して護衛衆の三人も同じように退室する。

 カルアはイースの横に移動した。


「護衛衆を退室させるという事は、俺を信用してくれたと言う事か?」

「そういう事だ。ゴンド村で信じられない話を聞いたしの」


 ゴンド村での話というのが気になった。

 アルとネロが余計な事を言っていなければ良いが……。

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