第614話 服を新調!
シロとクロを連れて旅をする為、行きたい所はあるか等を聞くが、二人共が俺に任せると答える。
旅をする上で、クロの提案をしてきた。
自分とシロの姿についてだ。
獣型で移動すると、魔獣や聖獣だと色々と言われて、厄介事に巻き込まれる恐れがあるので、姿を消した方が良いのでは無いかという事だ。
人型で移動する場合、何をするにしても三人分となる為、非効率だとも話す。
俺とは姿が無くても、会話は出来るので問題無いと言うが、俺的には寂しい。
二人共、姿を変えられるのであれば、シロは尻尾を一本にすれば普通の猫だし、クロは額の目を隠せば少し大きい鴉だ。
俺としては三人で旅をしたい事を、きちんと伝える。
シロもクロも了承してくれた。
これで、俺の事を知らない者達からすれば、ただの旅人か冒険者にしか見えない筈だ。
俺は背中の四葉の印が無い服を製作する為に、アラクネ族の集落に【転移】する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アラクネ族はマリーと接触していなかったので、俺が人族の記憶から消去されている事は知らなかった。
最初は半信半疑だったが、俺がいつにもなして真剣に話す姿を見て、最後は信じてくれた。
俺は今後もマリー達に協力してくれるように、アラクネ族に頼む。
アラクネ達は「当たり前」と即答してくれた。
何かあれば、俺が陰で協力するので困った事があれば、いつでも言ってくれるようにと付け足す。
此処に来た目的でもある、新しく服を作ってもらうようにアラクネ族の族長であるクララに頼む。
「別に良いわよ。後ろの印だけ無い服でいいの?」
「いや、色は黒色で赤色を刺し色に使って、正装のような丈の長い感じにしてくれ」
俺は【アイテムボックス】から筆記用具を出して、俺の服のイメージを伝える。
今迄の服装は、エリーヌを神として広める為に白を主に使っていた。
当然、四葉商会のイメージも損なわないようにと考えていた。
生まれ変わったでは無いが、今迄のイメージをリセットしておきたかった。
世界を破滅に導こうとする者であれば、闇のイメージである黒色に、血を表す赤色。
万が一、俺が自分を制御出来なくなる時の事も考えて、清いイメージとは真逆の色使いにする。
黒色が悪で、白色が正義というイメージは俺自身無い。
服装の色で善悪が分かればそれ程、楽な事は無い。
「その黒色と赤色の糸を少しだけ貰えるか?」
「別に良いけど、自分で編むの?」
「いや、出来ればこれ位の太さまでは編み込んだ糸にして欲しい」
「何か面白そうね」
俺はアラクネの糸でミサンガを作るつもりだった。
前世で、切れると願いが叶うと言われていた物だ。
アラクネの糸は丈夫なので、切れる確率の方が少ないとは分かっている。
ただ、俺の事を忘れた人族に対して、俺の事を思い出してくれる事を願う。
以前の俺という存在を何か形にしておきたい気分だった。
クララには「願いが叶うと切れるリング」だと伝える。
色違いや編み込み方法なので、幾らでも種類が作れるので、クララはマリーに作って良いかの許可を取って良いかと、俺に尋ねる。
以前の俺であれば、即答で返事をしていたが、これも新しい技術の一種だと認識される可能性もある。
俺は一応、エリーヌに相談すると「いいよ」と簡単に返事をする。
糸を編み込んだ輪に付加価値を付けるだけなので、問題無いそうだ。
エリーヌの独断という事に気にはなったが、クララには製作しても良いと伝える。
ただし、丈夫過ぎるのも問題なので、強度を人族の市場に出回っている程度の強度まで落として貰う。
強度を落としても、糸の軽さはアラクネの糸の方が上なので問題無いだろう。
クララには、装着する時に願いを込める事と、切れるまで外してはいけない事をマリーに伝えて貰う。
それと、エリーヌの加護だと言う事を忘れないようにと念を押しておく。
クララは新しい編み方や、何種類も色を使ったりと個性が出るので、アラクネ達は喜んで作るだろうと話してくれる。
俺は間接的にでも、四葉商会に関われる事を実感していた。
クララ達が俺の服を大至急作ってくれるそうなので、暫くはアラクネ族の集落で時間を潰す事にする。
凝った装飾が無い事や、以前に俺の服を製作している事もあり、さほど時間は掛からないそうだ。
俺は待っている間、『蓬莱の樹海』の管理者でもある
「大変でしたわね」
「まぁ、俺の未熟さと言うか、不注意のせいだ」
「そんなに自分を責めなくても。今回は仕方が無かったのでは?」
「俺の気持ちの問題だ。逆にオリヴィア達に気を使わせてしまったようで、すまないな」
俺の言葉に、オリヴィアは何も返さなかった。
「遅くなったが、
「ありがとうございます」
旅の順序は決めていないが、約束していた事等を優先的に回ってみるつもりだ。
俺の都合で、いつまで経っても
仲間の事を心配している
オリヴィアとの会話も長く続かなかった。
当たり前の事だが、なかなか共通の話題等いうものが、見つからなかった。
まだ時間があったので、アラクネから編み方を教わりながらミサンガを作っていた。
ミサンガが完成して、少しすると俺の服も上下共に完成した。
「印象が随分と変わるな」
クララが、新しい服に着替えた俺を見て、一言感想を言う。
「気分一新って感じだな」
俺はミサンガを左手首に当てて結ぶ。
「ありがとうな」
クララ達アラクネ族に礼を言って、アラクネ族の集落を後にする。
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