第529話 第五柱魔王!
「もう、行くぞ」
何時まで経ってもイリアとシキブの話が終わらないので、声を掛けた。
「そうですね。シキブに話をしても理解して貰えないですし」
「それは、イリアが難しい事を言うからでしょう!」
話を少しだけ聞いていたが、理論的に会話を進めていたイリアにシキブの頭が追い付いていないようだった。
「効率だとか、収納だとか言われても、よく分からないわよ」
俺に言わせれば、シキブに注文住宅は早いという事だけは確かだ。
ドワーフ族のトブレ達に内容を伝えて、大体の間取りを決定すれば良いだろう。
ゴンド村の者達は今迄の倍近い住居になるので、不満は全く感じていない。
今迄が不便な生活だったのが、快適になった事の方が大きい為、多少の不便も不便と感じないのだろう。
とりあえず、シキブ達を連れて『ブライダル・リーフ』に戻る。
四階の俺の部屋に上がると、既にマリーとフランが待っていた。
「じゃあ、マリー。案内頼む」
「はいはい。それでは皆さん、タクトから通行証を貰って下さい」
俺は【アイテムボックス】から転移扉の通行証を取り出して、皆に渡す。
通行証と言っても、四葉商会用の予備の物だ。
受け取ったシキブ達は不思議そうな顔をしていた。
「では、私の後に着いて来て下さい」
そう言ってマリーは部屋の奥の扉に歩いて行く。
てっきり、俺が運ぶと思っていたシキブ達は唖然としていたが、マリーの言う通りに後を着いて行った。
扉を開けて、ゴンド村に移動した。
俺は最後に扉を閉めた。
扉を開けた先には、アルとネロがクンゼと遊んでいた。
「おぉ~、これは大人数じゃの!」
マリー達を見たアルが声を上げる。
「アルシオーネ様にネロ様。御無沙汰しております」
「マリーは相変わらず律儀じゃの。アルで良いぞ! の~ネロ」
「そうなの~」
マリーは苦笑いしている。
親しいとはいえ、魔王を呼び捨てに出来る権限を与えられたのに困っているようだ。
「それで、今日は何用じゃ?」
「あぁ、ちょっとな。マリー達は先にゾリアスの所へ行っててくれ」
「分かったわ」
マリーはシキブ達を連れて、ゾリアスの家へと移動していった。
窓から見ていると、フランは自分の知っている村の様子と違っている事に驚いていた。
フランを見つけた村民が、フランの実家まで案内をしていた。
少し恥ずかしそうにしているフランだった。
外に居る俺に気が付いたのか、子供達が手を振っていた。
傍には保護者代わりのモモも居た。
俺も手を振り返すが、よく見ると視線の先はユキノとシロだった。
子供達の人気もユキノやシロの方があるみたいだ。
俺は綿菓子をくれる人という位の存在なのだろう。
ユキノとシロに、子供達の相手を頼むと笑顔で了承してくれた。
ユキノの護衛はシロが居れば安心だ。
「アルにネロ!」
「ん、なんじゃ?」
「なんなの~?」
俺は二人に稽古をつけて貰うよう頼んだ。
アルもネロも嬉しそうだ。
「すぐに行くぞ。クンゼは悪いが留守番をしていてくれ」
「ガゥ!」
「場所は、以前にアルの言っていた所で良いので頼む」
「分かったのじゃ。しかし、突然じゃな」
「まぁ、アル達との約束もあったが、俺自身の強さを確認する必要もあるんでな」
「ほぅ! タクトが強さに興味を湧くとは、強敵と戦うという事かの?」
「そうだな。いずれ、ガルプツーや他の魔王と戦う事もあるからな」
「そうか! タクトも余と本気で戦ってくれるのじゃな!」
「いや、アルやネロの方が強いだろう。本気で戦えば、一瞬で俺の負けだ」
「そうか?」
「当たり前だ!」
いきなり全力で攻撃されたら瞬殺だろう。
「ところで、第五柱魔王の情報は無いのか?」
「そうじゃな。分からん」
「知らないの~」
「アル達でも知らないのか?」
「奴は姿を変える事も出来るし、魔王誕生の際も突然じゃったからの」
「破壊行動を起こさないから、神からの依頼も無いの~」
「それに、妾達と会ったのも挨拶に来た一度だけだしの」
「そうなの~」
「なんじゃ、タクトは第五柱魔王のプルガリスと戦うのか?」
「いや、可能性の話しだ。それより、第五柱魔王はプルガリスと言うのか?」
「本人はそう言っておったぞ。ただし、妾に挨拶に来た時とネロに挨拶した時の姿は違っていたそうじゃ」
「そうなの~」
アルと会った時は、獅子人の格好だが体格は普通よりも二まわり程大きかったそうだ。
ネロと会った時は、老婆の姿でフードで顔を隠していたので良く見えなかったと言っていた。
しかし、名前は『プルガリス』と同じ名を名乗った。
あと一人、空位になっている第六柱魔王が誕生すれば、魔王同士間で何かが起こる事は、初代エルドラード国王の日記より分かっている。
最悪、アルとネロを相手に戦う事も予想される。
とりあえず、今出来る事はレベルを上げて、出来るだけ強くなっておく事だ。
シロとマリーには、少しだけゴンド村から離れる事を伝えて、アルの【転移】で稽古の場所まで移動する。
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