第477話 自分の後始末!

 オークの元集落を見て回る。

 異臭が酷い。

 アルとネロ達が討伐した際の血の跡なども、そのまま残っている。


「よく、こんな所に居れたな」


 奴隷商人達に感心する。

 まぁ、此処から出れば命の保証も無いので仕方なく此処に留まるしかなかったのだろう。

 周りをよく見ると、壊れた木箱や欠けた壺の中に、装飾品等が無造作に入っていた。

 血が固まっているので、余程の強欲な者でなければ触ろうとはしないだろう。

 奴隷商人達も気付いていなかったのだろうと思った。

 俺は【浄化】を掛けて、血糊等が無い洞窟に戻す。

 壺や木箱から装飾品等を手当たり次第、【アイテムボックス】の中に入れる。

 手に取った腕輪らしき物に、見覚えのある紋章があった。

 王家やルンデンブルク家では無い。

 暫く考えて思い出す。

 俺がゴンド村からジークまで旅をしていた時に、シグナルキラービーを退治した際に寄った森の奥で見つけた武器や防具に付いていた者と同じだ。

 【アイテムボックス】から、その時の武器や防具を出して確認をする。

 同じ紋章だ。とりあえず、後でルーカスに聞く事にして、回収作業を続ける。


 一通り回収したので、入口を土系魔法で塞ぐ。

 薄い土壁を造っただけなので、場所が分っている俺はいつでも壊して中に入る事は出来る。

 まぁ、この土壁を壊せるのは魔王以上の強さを持った者だけだろう。

 オークの集落の周囲にも【浄化】を掛けて綺麗にしておく。

 次の瞬間に、草花が生え始める。

 俺が造った土壁の手前まで草花が生えた事で、普通の草原のようだ。

 いずれ、大木も生えて森と同化して違和感が無くなるのだろう。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ここは酷い匂いがしないな」


 オークの集落を綺麗にしたので、ゴブリンの集落に移動をしてきたが、こちら匂いは気になるような匂いではなかった。

 洞窟の奥にある部屋で何やら気配がするので、覗いてみるとホーンラビットの集団が奥で固まっていた。

 此処を住処にしていていたようで、俺が来た事を察知したが出入り口が一つしか無い為、出るに出られない状態のようだ。

 しかし、少し前にアルミラージを討伐したので、同系列の魔獣になるホーンラビットがとても可愛く見える。

 アルミラージの方が、体が大きく筋肉質だ。

 目の前のホーンラビットのように怯える仕草は無かった。

 人族で言えば、戦士と農民位の違いだろう。

 ホーンラビットも安全を求めて、この洞窟に辿り着いたのだろう。

 当然、リラも知っている筈だが、俺に洞窟を塞ぐ依頼をしたのが気になった。

 一旦、外に出てリラを呼び出す。


 直ぐにリラは姿を現して、俺に説明を始める。

 この洞窟は、小動物や弱い魔獣が毎回追い込められてしまい、成す術も無く殺されるらしい。

 先程のホーンラビットも俺の気配を感じて、洞窟に逃げ込んだそうだ。


「そうか、そういう事なら仕方ないな」


 俺は再度、洞窟の奥にある部屋の入口まで行き。ホーンラビットを逃がすように回り込む。

 徐々にホーンラビット達は部屋の入口まで来るが逃げようとしない。

 逃げる瞬間に殺されるとでも思っているのだろうか?

 仕方が無いので【念話】を使い、「さっさと、逃げろ」と話し掛けると、体を一瞬震わせて周囲を見渡す。

 俺はもう一度、「早く逃げろ」と言うと一匹又、一匹と一目散に外へ逃げ出した。

 魔獣でも俺を見て襲って来る者と、逃げだす者が居るのは強さに関係しているのか、知能の高さなのかそれとも、野生の勘と言う奴なのか分からないが、怯えるホーンラビットの姿を見た為か殺す気は無かった。

 ホーンラビットが居なくなると、俺は部屋を見渡す。

 確かに、リラの言う通り、ゴブリンの骨の他にも獣の骨が散らばっていた。

 オークの集落同様に【浄化】を施して部屋の外に出る。

 宝物庫や交配所等の部屋にも【浄化】を施して、綺麗にする。

洞窟の入口を塞ごうと移動していると、アルから連絡が入る。


「遅いのじゃ!」

「悪い悪い。もう戻る所だ」

「本当か?」

「あぁ、本当だ。準備は終わったのか?」

「当たり前じゃ。後はタクトが数字を言うだけになっておる」

「そうか。じゃあ、皆にそろそろ始まる事を伝えてくれ」

「分かったのじゃ」


 ビンゴ大会を早く始めたいアルから、早く戻るよう催促される。

 俺は、洞窟の入口を塞いで、ゴンド村へと戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る