第457話 調査報告!
クロから奴隷商人に関わっていた、貴族の調査報告をして貰う。
思っていた通り、奴隷イコール物という考えから、何をしても良いと思っている者が多い。
それは生死についても同じだった。
勇者の末裔だった貴族達が居なくなった事が引き金になったのか、自分の権力を見せつけるかのように、最近は特に酷いらしい。
奴隷商人も身売りするしかない苦しい者達の足元を見るかのように、安く奴隷となる者達を調達しているようだ。
主に奴隷商売をしている『サーバン商会』が奴隷商売の元締めのようで、他の奴隷商売している者は殆どがサーバン商会の傘下になる。
サーバン商会の代表は元冒険者の『ノゲイラ』と言う者らしく、経緯は不明だが商人に鞍替えをして、数年で一気に大きくなったそうだ。
奴隷商売をしたいのであれば、サーバン商会を通さなければならないのは、この国では暗黙の決まりになっている。
サーバン商会は奴隷商売の他にも、拠点となる街で歓楽街も運営している。
領主はサーバン商会と癒着がある貴族で、元冒険者を用心棒として数人雇っているそうだ。
他にも、秘密裏に奴隷同士を戦わせている『闇闘技場』なるものまで運営している。
勿論、闇闘技場は法に触れる行為だ。
クロから、『ロスナイ』『カラン』『ドーレン』の三人が主にサーバン商会と癒着が大きく、他の奴隷制度に反対している貴族達は、この三人の顔色を見ているそうだ。
この三人を失脚させれば、後は簡単だとクロは自分の意見を交えながら説明してくれた。
クロの手書きなのか、報告書も綺麗に作成してくれていた。
シロにも言える事だが、見やすく綺麗な字なのは羨ましく思う。
そもそも、俺は字を読む事は出来るが、この世界の文法が理解出来ていないので、複雑な文章を書く事が出来ない。
俺は報告書に写真が貼ってある事に気が付いた。
撮影の際に、気付かれなかったのだろうかと疑問に感じたが、クロがそのような失態を犯すとは考えにくいが聞く事にする。
「撮影は、貴族達に見つからなかったか?」
「はい、勿論です」
案の定、予想通りの答えだった。
報告書を読む限り、ほぼ調査は完了しているように思えた。
「まだ、調査不足があるのか?」
「はい。同時に調査が出来ない為、どこかで見落としがあるかと思っております」
「確かにそうだが、俺的には十分に良く出来た報告書だと思うぞ」
「有難きお言葉、感謝致します」
「国王に報告する際は、クロが詳細な説明をしてくれるか?」
「承知致しました」
胸に手を当てて一礼する。
「主、気になる事があります」
「ん? なんだ」
「奴隷の中には魔族も含まれています。人族の力で魔族を奴隷にする事は、簡単に出来る事ではありません」
「それは、魔獣だけでなく魔人もという意味か?」
「はい、その通りで御座います」
クロは調査の最中に、闇闘技場に潜入した際に人族同士だけでなく、魔獣や魔人と戦う人族が居たそうだ。
結論は聞くまでもなく、人族は無残に殺されるだけだの殺戮ショーになる。
その光景を見て、観客は一喜一憂する。
観客はノゲイラから招待された者だけなので、秘密を漏らす者も居ない。
「その街の名は『タルイ』なのです」
「タルイだと!」
冒険者ギルドのマスターが好き勝手やっていると、聞いている街だ。
我が物顔で冒険者ギルドを牛耳っているギルマスに、奴隷商売や歓楽街に闇闘技場まで運営している商人。
ここまで酷い状況を領主が知らない筈は無い。
普通に考えれば、領主もノゲイラの仲間なのは間違いないと思う。
そう考えると領主交代も怪しいと勘ぐってしまう。
俺が思っていたよりも、事態は深刻なようだ。
これは俺が出るより、ルーカスに国を動かさせて本格的に調査をして貰った方が良いだろう。
フリーゼの言葉を借りるのであれば、人族の問題は人族で解決しなくてはいけない。
しかも国の問題であれば、国王ないし国の中枢等関係者で問題解決すれば良いだけだ。
俺はあくまで冒険者で商人なので、国の機関には属していない。
一応、ユキノとは婚姻関係が結ばれているが、それは親族になっただけで立場は変わっていない。
魔族が絡んでいたとしても、それは人族が魔族を奴隷にしているという事実があるだけだ。
魔族を奴隷にする為に魔族が関与しているとしていたとしても、それは別の問題だろう。
その為に、三獣士等の特別な職な者が居る訳だ。
簡単な問題では無いと思っていたが、ルーカスがどのように事を収めるのかが気になる。
最近は何でも俺に頼めば良いと言う感じになっているので、考えを改めて本来の国のあり方で対応して貰いたい。
「もう一つ、宜しいでしょうか?」
クロが発言する。
「他にも問題があるのか?」
「問題という訳ではありませんが……ネトレス領主のダンガロイ様とロスナイ様は御兄弟になります」
クロの話だと、ダンガロイとロスナイは年子の兄弟になり、エルドラード王国に吸収される前の領地で生活をしているそうだ。
「ネイトス領より北の地域には今でも、国を失った事に憤りを感じている者も少数ですが居るようです」
「国を失ったのは数百年前の話だろう。それを今でも納得出来ないのか?」
クロの報告に疑問を感じる。
正直に報告しているが、失った国の再建を名目にして国王失脚を狙っている者達の仕業ではないだろうか?
そこに、魔族が付け入ったとすれば……。
「クロ、ありがとうな」
俺は調査が大変だったであろうクロを労った。
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