第436話 石化解除!
「タクトよ、勝負じゃ!」
ゴンド村に戻った俺を感知したアルが、俺に勝負を吹っかけてくる。
勝負内容は、ババ抜きなのは聞かなくても分かっていた。
ネロや、村の子供達と特訓したのだろう。
「勝負はしてやるが、その前にやる事があるから、待っていろ」
「仕方が無いの」
「クンゼを外に出してくれるか?」
「良いが、何故じゃ?」
「クンゼを元に戻す」
「なんじゃと! 石化を元に戻す事が可能なのか?」
「あぁ、多分だがな」
「……すぐに、外へクンゼを連れて行く」
アルは足早に去っていく。
俺が外に出ると、既に石化しているクンゼと、アルにネロが待っていた。
アルは、少し不安げな感じだ。
俺は【アイテムボックス】から、バジリスクの血が入った寸胴を出して、石化したクンゼにかける。
バジリスクの血は毒があるので、周囲に【結界】は張ったので村人に被害が及ぶ事は無い。
クンゼの表面にヒビが入り、脱皮するかのように石が落ちる。
その下から、ヘルハウンド本来の毛並みが姿を現す。
アルとネロが嬉しそうな表情をして、クンゼに駆け寄り撫でる。
「良かったの、クンゼ」
「良かったの~」
意識が戻ったクンゼは、状況が分かっていない。
俺は【念話】で事情を説明した。
(有難う御座います)
(いや、礼を言うのは俺達だ。自分の命を犠牲にしてまで、俺達を守ってくれた。本当に感謝する)
俺は【念話】で会話が可能だ。
クンゼも話したい時には、直接脳に語り掛けれるし、言葉も分かるので問題無い。
問題は、他の者達がクンゼとのコミュニケーションが上手く取れるかだ。
……まぁ、ドラゴンとも仲良くやっているので問題無いとは思うが。
「タクトよ、有難うなのだ」
「流石は師匠なの~」
俺は、長年生きているアル達が石化解除の方法を知らなかった事に疑問を持ち、聞いてみる。
「石化が解除出来る事を、考えた事も無かったからの」
「そうなの~、石化したら死んだと同じなの~」
確かに、そう考えていても不思議ではない。
石化されたイコール死だと思えば、石化を解くという発想は無い。
俺は、バジリスクの血で汚れた地面を【浄化】して【結界】を解く。
村人達には、クンゼを紹介する。
アルの持ってきた石の置物だったと分かると、皆が驚く。
俺が、石像に命を与える事が出来ると思っている村人も居た。
変な噂が広まるのを避ける為に、説明した上で訂正をしておく。
ゾリアスと村長が、俺の所までやって来る。
この間、あった時に「俺に話がある」と言っていたので、その事だと分かった。
ゾリアスが「立ち話でする話でも無い」と言うので、村長の家で話をする事にする。
アルは、俺との勝負が出来ないと不満を口にするが、後で必ず勝負する事を約束して家に戻らせる。
「それで、話って何だ?」
「実は、村長が引退をしたいと言ってだな、俺に村長になって欲しいと頼まれたんだ」
「そうなのです。私では荷が重いのと、高齢であるので早めに譲った方が良いかと思いまして……」
「良いんじゃないのか」
俺は即答する。
何を悩んでいるかが、逆に不思議だった。
「俺に村長が出来ると思っているのか?」
「あぁ、勿論だ。警備ならロキじゃなかったローズルに任せれば良いだろう?」
「それはそうだが」
「村長だって、元から居る村人からでなく、ゾリアスを選んだのはそれなりの理由があってなんだろう」
「はい、勿論です」
「ゾリアスは、村長になるのが嫌なのか?」
「……嫌ではないが、俺に務まるのかが、不安なだけだ」
「俺は、ゾリアスなら心配ないと思うぞ」
ゾリアスなりに、移住者と言う事で気が引けているのだと思う。
しかし、ゾリアス以上にこの村で村長になれる人材はいないと思う。
実際、村人達もゾリアスを頼っている場面を何度も見ている。
「村長が変わると、何か連絡やら面倒な手続きがあるのか?」
「領主様への連絡くらいです。直接お会いしての挨拶も、今の領主様になってからはありません」
難しいと思うのであれば、国と同じように各担当の代表者を取り入れる事を提案する。
今でも、警備はゾリアスを中心にしているし、子供はモモが主に世話をしている。
畑作業はコボルト達が実作業をしているので、指示を出せる者がいれば良い。
「ひとりで無理だと思えば、皆の力を借りれば良いだけだ」
「確かにそうだが……」
俺は、ゾリアスにもう少し考えて答えを出すように言う。
因みに俺は「賛成だ」と再度、伝える。
「そうだな。もう少しだけ考えて、答えを出してみる」
ゾリアスは真剣な顔で答える。
問題は村長後任の事だが、本来であれば村全体の事になる。
村人の後押しもあれば、ゾリアスの不安が少しでも取り除かれるのだが……。
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