第414話 対決前の攻防!

 対決の準備が終わったのか、案内人から会場へ行くように言われる。

 対決会場までは、この道を進めば入口だそうだ。

 人が一人すれ違える位の幅しかない道を進んでいく。

 壁が無くなり、広い空間に出る。

 周りを見渡すと観客が、俺に対して叫んでいる。

 ブーイングだ。

 スタリオンの人気がある事が、よく分かった。


 闘技場は、かなり大きい。

 円形で、三メートル程の壁で囲われている構造で、観客席はその外に配置されていた。


 雨も段々と強くなっているが、観客達は濡れながらも今から始まる対決を、興奮状態で待っている。

 少し歩いて、振り返ると上でルーカス達が座っているのを確認した。

 しかし、対戦相手のスタリオンの姿が見当たらない。


 大きな歓声が上がる。

 俺が入ってきた反対側から、スタリオンが登場する。

 剣は持っていなく、両手に打撃系の武器を見につけているので、『格闘家』だと推測出来る。

 晩餐会で見たよりも、対峙すると明らかに威圧感が増していた。

 獅子人族だから、少し先入観があるのかもしれない。 

 

「こんな茶番は、さっさと終わらせて、俺はユキノ王女を嫁に貰う」


 万に一つも負けないと思っている自信なのか、完全に上から目線だった。

 面倒臭いので、特に反応もせずにいた。


「どうした、怖気づいたか?」


 小馬鹿にしたよな口調で話しかけてくる。


 打楽器の音が鳴ると観客達は皆、立ち上がり音の方向を見る。

 その先には、オーフェン帝国の皇帝トレディアと、エルドラード王国の国王であるルーカス達が居る。


 トレディアより、今回の対決ルールについて説明される。

 あくまでも親善試合なので、対戦相手を殺した場合は負けとなる。

 降参する場合、審判や観客等に聞こえるように宣言をする事。

 そして、倒れて十秒起き上がらない場合と、壁の外である観客席に身体の一部が着いた場合も負けとなる。

 最後に、審判員を紹介される。

 審判員が登場すると、大きな歓声が闘技場内に響き渡った。

 審判員はケット・シーのフェンだった。

 見た目的には、二本足で歩く猫だ。

 他には特に特徴も無い。

 断然、シロのほうが可愛い。


 審判員がフェンの理由は、各々の国で一番強い者同士になる為、それ以上の強さを持つ者でしか審判は務まらないかららしい。

 嫌な予感がするが、拒否する明確な理由も無い。


 俺とスタリオンに、今回のルールで問題無いかを確認される。

 ルールは問題無いので、了承する事を告げる。

 スタリオンも了承する。


 スタリオンは俺を見て、鼻で笑った後に大声で宣言した。


「ユキノ王女! この者を早々に倒して、お迎えに上がりますので、暫しお待ちを」


 この言葉に、観客席からは先程より大きな歓声が上がった。


「お前も損な役を引き受けたな。俺に勝てる奴が居ないからと、嘘までついてエルドラード王国も、落ちたものだな」


 この言葉が、俺の癪に障った。


「弱い奴ほど、よく吼えるな」

「あぁ、なんだと!」


 俺の言葉に一瞬、怒り口調でいたが、すぐに冷静になり話し始める。


「死なない程度に、戦ってやるからな」

「ユキノ王女を嫁にしたい理由は何だ?」


 俺の質問にスタリオンは、にやけた顔で返答をする。


「王女と言う事と、胸だけは大きいからだ」

「胸だけで嫁にするのか?」

「王女の肩書きと、あの胸だけで十分だろう。子供を生んでくれるのに必要な条件だ」

「成程。ユキノ王女が好きなのでなく、肩書きと胸で選んだと言う事か」

「当たり前だろう。それ以外に何があるんだ?」


 エルドラード王国や、ユキノを侮辱する発言に、俺はスタリオンを完膚なきまでに叩きのめす事を誓う。


「まぁ、スタリオンも弱い者虐めは、それくらいにしておきなさい」


 審判員のフェンが、スタリオンを諌める。


「貴方も死なないように、頑張りなさいね」


 スタリオン同様に、俺の事を見下していた。


「審判員が止めなければ、攻撃を続けても問題ないんだよな?」

「えぇ、勿論よ。スタリオンは優しいから、安心していいわ。死なない程度に攻撃してくれるわよ」


 明らかに、俺が負ける前提で話をするフェンの口調も、気に入らない。


「そろそろ、始めるから二人共、あの線で合図が出るまで待機ね」


 フェンの指示通りに、待機をして始めの合図を待つ。


 俺とスタリオンを交互に見ると、右手を上げて「始め!」と大きな声を上げて右手を振り下ろした。

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