第405話 帝都到着!

 エルドラード王国の国旗を掲げた物体が、空を飛行しているのを見上げるオーフェン帝国の国民。

 三国会談がある事は、帝都を生活の拠点にしている者達は、当然知っている。

 本来なら、馬車を止める場所になる筈の会談場所で、帝都の城にある広場に着陸をする。

 着陸の際に、大きな土煙が舞う。

 謎の物体と土煙で、帝都の衛兵隊が警戒している。

 しかし、エルドラード王国の旗が掲げられている為、遠くから様子を見ているしかないのだろう。


 まず、カルアとロキが降りて、飛行艇の扉をすぐに閉めた。

 ロキが、エルドラード王国からの国王を乗せてきた事を、その場に居る者達に告げた。

 周囲の安全を確認すると、カルアが飛行艇の扉を開けて、ルーカス達が降りて来る。

 ルーカスは満足そうな顔をしていた。

 俺は、飛行艇の中で、大臣二人とビアーノ達料理人十人を三回に分けて【転移】を使い、移動させた。

 飛行艇の存在もそうだが、この大きさの乗り物から、大人数が出てきた事で周りがざわつき始める。


 既に、シャレーゼ国は到着していたようで、馬車の周りに衛兵達が警護にあたっている。

 噂通り、人間族のみだけだ。

 衛兵達は決して、筋肉隆々といった感じで無く、痩せている感じだ。

 しかも、どことなく疲れている印象を受ける。

 やはり、国として表だって交流を持たないので、国として繁栄していないのかも知れない。

 そもそも、人間族のみの国なので、他の種族と話をするのも嫌だろうに、立場上仕方無く会議に応じたのだろうと感じた。


 カルアが飛行艇に【結界】を張って盗難防止を施す。

 俺がやっても良かったが、カルアの仕事だと思い譲る事にする。

 その後、ルーカス達を護衛していると、オーフェン帝国の案内役が、ルーカス達の所に現れて城の中へと案内してくれた。


 飛行艇から見た時にも思ったが、オーフェン帝国の城は本当に日本の城のようだ。

 エルドラード王国の洋風な感じは微塵も無い。

 城の入口に入った瞬間に【結界】らしきものを破壊した感じがしたというか、間違いなく破壊した。

 しかし、他国なので気が付けば修復してくれるだろうと、悪いとは思ったがそのまま何事も無かったかのように進む。

 歩きながら飾られている物や、城の作りなどを見るが、文化が違うので当たり前だが、城の外見同様にどちらかと言えば、俺の生まれ育った環境の『和』に近い感じで、何処と無く懐かしく感じた。


 案内役が「こちらがお部屋で御座います」と、部屋の扉を開けてくれた。

 まず、カルアとロキ、ターセルが入る。

 部屋の中を確認して、安全な事を確認してからルーカス達が部屋に入った。

 案内役は「御時間になりましたら、お呼びに参ります」とだけ言い、一礼して去って行った。


「もう一度確認するが、俺は会議に出なくて良いんだよな?」


 俺的に、どうも騙された感が強いのでもう一度、ルーカスに尋ねる。

 ルーカスは、俺に同席して欲しいと本音を言う。

 しかし、同席を許されているのは担当大臣のみなので、待機していてくれと言われた。

 帝都の街を散策しようとしていたが、無理みたいだ。

 仕方がないと諦める訳もなく、何があれば連絡くれれば、すぐに駆け付けるから街に出たいとルーカス達に宣言する。


「駄目だ。お主には、王妃とユキノの護衛がある」


 イースとユキノは、会議の間は別の部屋で待機をして夕食までの間、時間を潰す事になる。

 その間は、俺ひとりで警護をする必要がある。

 そういう事であれば、仕方が無いと諦めるが何故、警護でなく待機と言う言葉を使ったのだろうか?

 難しい議論になった場合、俺に助言を求めるという事なのか?

 俺よりも、ターセルの方が適任だとも思うが……。

 帝都の街には、いつでも行く事は出来るので、今回はしっかりと警護をする事にする。


 案内役に呼ばれるまでの間、大臣のジャジーとメントラは、ルーカスと最後の打ち合わせをしている。

 その間、護衛三人衆は今迄に見た事の無い様な表情をして、周囲を警戒していた。

 俺も気付かれないように周囲を警戒しながら、ビアーノや料理人達と会話を交わしていた。


 部屋の扉を叩く音がして、案内役が「会談の準備が整いました」と言い、ルーカス達は出ていった。

 一応、ルーカスにはカルアが結界を張っているのに気が付いたので、その上から俺も【結界】を重ね掛けする。


 ビアーノ達料理人は、俺との話で何か閃いたのか、最後に味の調整をしたいと言うので、俺がもう一度【転移】でエルドラードまで送る事にする。

 その間は、イースとユキノには結界を張って、安全を確保する。

 少しの間ではあるが、念には念を入れておく。

 

 部屋には、王妃であるイースと、ユキノ。そして、俺の三人だけになる。

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