5章
第403話 いざ、出発!
朝早くから、城内は大忙しで動いている。
今日は、三国会談に向けオーフェン帝国へ出発する日だ。
俺は指示された王国の旗を飛行艇に取り付ける。
それが終わると邪魔をしないように、飛行艇の操縦席から、その様子を見ていた。
【アイテムボックス】から、オーフェン帝国の金貨と、エルドラード王国の金貨を一枚ずつ出して、見比べてみる。
金貨の模様などは勿論、異なる。
それよりも、大きさの違いだ。
エルドラード王国の金貨の大きさは、前世の通貨だと五百円硬貨くらいの大きさはある。
それに比べて、オーフェン帝国の金貨は、十円硬貨くらいの小ささだ。
両替した際にも、あまりにも違いすぎるので驚いたが、二つの金貨を並べてみると違いが良く分かる。
金不足と言っているのであれば、オーフェン帝国のように、金貨自体を小さくする事も悪くは無い発想だと思う。
場外から騒がしい声がより大きくなってきた。
飛行艇という未知の乗り物の御披露目もあり、街は賑わっている。
俺の居ない間に、『王都魔法研究所』から数人の研究者達が、飛行艇の見学に来ていたそうだ。
ローラから【交信】で、飛行船は面白い乗り物だったと言う事と。例の固定電話もどきが上手く行かない事を伝えられた。
やはり、ローラの中で理論が確立されているとはいえ、思い通りにはいかない様子だ。
ローラ曰く、「上手くいかないからこそ面白い」らしい。
王国料理長のビアーノは、城の一室で待機している。
食材等は、俺が既に【アイテムボックス】に仕舞っているので、荷物もそれ程多くは無い。
夕食のメニューも見せて貰ったが、ビアーノ曰く料理会に革命をもたらす素晴らしい料理だと言っていた。
俺的には、前世での大衆食堂もメニューと変わらないので、それほどの衝撃も無い。
今回の担当大臣は、『ジャジー』と『メントラ』の二人だ。
どちらも面識はある。
大人しい印象だが、ルーカスにもそれなりに意見を言う印象だ。
事前に書類を見せてくれたが、議題は『ロードの討伐報告と、領地及び人権問題』についてだった。
俺は知らなかったが、オークロードやゴブリンロードは、必ずエルドラード王国で出現するわけでは無く、極稀だがオーフェン帝国や、シャレーゼ国でも出現するので討伐した際は、三国で情報を共有するとしている。
この事は、国の数名しか知らない。
国民に、余計な不安を与えない為の配慮らしい。
ルーカスは、この議題で生体実験の件を話すと言う。
領地問題とは、シャレーゼ国とオーフェン帝国間で、お互いが領地を主張している場所がある。
今は不公平が無いように、お互いが人等を出して管理しているそうだが、シャレーゼ国はそれが我慢出来ないらしい。
但し、軍事力や経済力等の国力をみても、シャレーゼ国はオーフェン帝国に比べると格段に劣る。
シャレーゼ国にすれば、こういった場で主張をしておかなければ、そのうち領地を奪われる危機感があるのだろう。
ロード発見の事は、ローラが報告した内容を発表するらしい。
但し、それほどの魔力の大きさを量れる機器等は無い為、あくまで推測という趣旨にする。
俺としては、オーフェン帝国についた段階で、特にする事も無いのでスタリオンとの戦いまでは、観光でもするつもりだ。
帝都には、俺の知らない料理があるかと思うと、期待が高まる。
仕度が終わったのかルーカス達が、飛行艇置き場に現れた。
俺も操縦席から降りて、ルーカス達を迎える。
飛行艇の扉を開ける。
「期待しているぞ」
ルーカスは嬉しそうに話すと扉の前で一度、立ち止まる。
最初にカルアとターセルが飛行艇に乗り込み、安全確認した後でルーカスが乗り込む。
続いて、イースにユキノ、そしてロキの順に乗り込んだ。
俺は全員が乗り込んだのを確認して、操縦席に戻ると既にユキノが座っていた。
「忘れ物はないか?」
皆に確認をする。
「あっても、タクトに頼めば取って来てくれるから、問題無いだろう」
確かに、俺が【転移】を使えば、問題無いが……。
「それじゃあ、出発するからな」
そう言って、飛行艇を上昇させる。
集まった人々が見える高さになると、下から大きな歓声が上がっていた。
後ろを見ると、見えないだろうがルーカスと、イースは窓から手を振っていた。
後は到着するまでの間は、窓からの景色を見るだけだ。
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