第377話 仲間はずれ!
ルーカスに気が付かれないように、イース達王族四人がひとつの部屋に集まっていた。
「わざわざ、集まってもらってすまないな」
「いえ、構いませんが国王に話せない内容という事ですよね?」
イースは少し警戒している。
「話せないというわけではない。俺の判断で今はまだ秘密にしておいた方がいいと思っているだけだ」
「そんなに重要な事なのですか?」
イースは、より一層警戒していた。
「そんなに警戒する事でもないから、安心してくれ」
「……そうですか」
イースは納得していないようだったが、アスランとヤヨイはユキノの変な行動の件だと伝えているので、俺の話を普通に聞いていてくれた。
「ユキノ!」
俺はユキノを呼ぶと、俺の横まで歩いて来る。
「実は、ユキノにプロポーズをして承諾を貰った」
ユキノは嬉しそうに笑顔でいる。
突然の報告に、イース達は驚いている。
俺は事の経緯を簡単に説明をした。
「タクト殿、本当に有難う御座います」
イースは俺に対して、礼を述べると深々と頭を下げる。
「いや、本当なら俺が娘さんを下さいと、頭を下げるべきだ。王妃、頭を上げてくれ」
イースは頭を上げると、ユキノの気持ちを第一に考えてくれた事や、王族になるのを拒否していた俺が王族になる事を受け入れてくれた事等を、嬉しそうに話していた。
「別に、ユキノの気持ちというよりも、俺もユキノの事が好きだから心配するような事ではない」
「そうなのですね」
イースは、今にも泣きそうな勢いだ。
「アスランにヤヨイ、こんな失礼な男だが改めて宜しく頼む」
「はい!」
ふたり共、快く俺が義理の兄弟になる事を了解してくれた。
「しかし何故、国王には秘密なのですか?」
イースが不思議そうに質問をする。
俺は正式には、オーフェン帝国の王子であるスタリオンを倒してから、本当のプロポーズをして皆に認めてもらう事を伝える。
事前に、ルーカスに伝えると大騒ぎする恐れがあるので、出来れば秘密にしたいと頼む。
「確かにそうですね。……分かりました、その時まで知らなかった事にしておきます」
「すまないな」
俺が皆に頭を下げると、横に居たユキノも同じように頭を下げた。
「俺がユキノと結婚した場合、俺はどの立場になるんだ?」
「そうですね。間違いなく爵位は受取ることになりますね」
「それは、拒否出来ないんだよな?」
「ユキノが『王位継承権』を辞退すれば、一応王族から離脱は可能ですが前例はありません。そもそも貴族以外に嫁ぐ事例自体が今迄ありません」
「御母様。私は、王位継承権を辞退しても構いません。御兄様が居れば問題ありません」
ユキノは、あっさりと王位継承権を辞退した。
「私としてはタクト殿いえ、タクトには立場に関係なく力を貸して頂きたいと思っております」
アスランが、いずれ国を背負って立つ立場として発言をする。
「俺としては、王族というか貴族になって集まりに出るのが嫌なだけで、今迄通りに暮らせるのが理想だ」
「この件は、私とアスランに預からせて頂いても良いですか?」
「そうだな。これは俺の我侭だから、駄目なら駄目で仕方ないと思っている」
「出来る限りの事は致します。もし、領地等が必要であれば言って下さい」
「領地では無いが、ゴンド村で暮らしたいと思う。勿論、領主は今迄通りリロイで頼みたい」
「ゴンド村ですか……分かりました。ところで、王国の式典として御披露目をする予定はありますか?」
「出来れば、そういうのはあまりしたくない」
「そうですか、発表のみという事ですね」
「そうだな。俺の店で、写真は撮り直すくらいで良いと思っている」
「撮り直す?」
イース達は不思議な顔をしていた。
ユキノを見ると、巾着袋から俺との写真を出して、イース達に見せる。
「御姉様。物凄く綺麗です!」
ヤヨイが、物凄く感動していた。
イースは、写真を見ながら泣いている。
「これは、プロポーズする前にユキノの希望で、うちの社員達とユキノが共謀して撮った写真だから、正式な結婚式の写真では無い」
「結婚式なるものを行えば、このユキノの格好を直に見れるのですよね?」
イースは写真を見ながら俺に話しかける。
「それは可能だ。どうしてもという事であれば、極少数の関係者のみで結婚式をしてもいいぞ」
「本当ですか!」
イースより先にヤヨイが大声で叫んだ。
「あぁ、勿論だ。ソディックも呼んでいいからな」
「えっ、そんな……」
ソディックの名を出すと、急に恥ずかしそうに下を向いてしまった。
その姿を見て、シロが「女心が分かっていない」と俺に言っていた事を思い出した。
「そういう事なら、結婚式は城の大広間で行います。本当は国民にも見せてあげたいのですが……」
イースは残念そうな顔をしていた。
母親というより、王妃としての考えなのだろう。
それよりも……。
「カルア。そろそろ姿を現しても、いいんだぞ」
入口の方を向き、話しかける。
「やっぱり、ばれていた?」
「あぁ、すぐに分かった」
皆が集まった段階で、部屋に【結界】が張られていたし、なにより王妃ひとりで護衛も無しで、ここまで来る事はありえない。
俺の【隠密】や【隠蔽】に似たスキルを使っていたのだろうが、【神眼】を使った段階でカルアの存在は確認出来ていた。
「話は全部聞いていたんだろう」
「えぇ、勿論よ。ユキノ様、おめでとう御座います」
カルアは、ユキノに頭を下げる。
「有難う御座います」
ユキノは笑顔で答えた。
「国民に知らせるのであれば、グランド通信社を始め、幾つかの情報商社を呼んでもいいぞ」
本当であれば、グランド通信社だけにしたいが、そうすると独占だと思い他の商人達から妬みが発生して、別の事件に発展する事を避ける狙いだ。
「それであれば、大手三社だけで十分ね」
カルアが、応えてくれた。
「大手三社とは?」
カルアの言う大手三社とは、業界第一の『グランド通信社』、二位の『ヴィクトリック商会』、三位の『ジョウセイ社』の事らしい。
この三社で、この国の殆どの情報や出版関係や催し物等を牛耳っている。
四葉商会は新興勢力なのだが、影響力ではこの三社には及ばない。
「顧客だけで言えば、間違いなく四葉商会が一番でしょうがね」
確かに国王達や、ダウザー達と懇意にしているので間違いない。
「王妃様。四葉商会を含めた四社から数人を報道者として、結婚式に参加させるのはどうでしょうか?」
「そうですね。それだと国民にも伝わりやすいですよね」
「四葉商会の従業員は、全員呼ぶからな」
「結構ですよ」
但し、フランは写真撮影の為、結婚式に参加した気がしないと言うだろう。
「前日に関係者を呼んで話を致します。勿論、極秘事項として扱いますので、安心して下さい」
前世で結婚式をした先輩が、結婚式は自分以上に、相手の為にするものだと言っていたのが今になって分かった気がした。
確かに喜んでいる顔を見るともっと、その笑顔が見たくなる。
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