第358話 経緯!

 家の中に入ると、一階は階段以外何も無い。


「アル、ここはなんだ?」

「遊び部屋だ!」


 ……完全に言葉を失った。

 文句は全てを見終わった後にする事にする。

 一階は何も無いので、二階に上がる。

 廊下があり、扉が全部で五つある。


「何故に五部屋なんだ?」

「タクトは数も数えれないのか? いいか、妾にネロ、タクトにシロとクロで五人じゃ!」


 成程、シロとクロも考えていてくれたのか。


「シロとクロの部屋まで用意してくれていたのか、ありがとうな」

「そんな事、当たり前じゃろう」


 気が付かなかった俺が悪いみたいになっている。


「師匠~!」


 ネロが部屋から出てきて俺に抱き着いてきた。

 その瞬間に、腕を噛まれている事に気が付く。

 すぐにネロを腕から引き離す。


「まだ、吸ってないの~」

「勝手に吸うな。そんなに会う度に吸っていたら、すぐに飽きるだろう」

「師匠の血は絶対に飽きないの~」

「とにかく、駄目だ!」

「ケチなの~」


 アルが笑いながら見ていたので、部屋の中を見せて貰うと、風呂とトイレが付いている。

 宿屋の作りに似ているが、部屋自体はかなり広い。二人でも十分に過ごせる。


「人族の宿屋を参考にしたから、不便さは無いじゃろう」

「まぁ、確かにそうだな」

「次は三階じゃ!」


 嬉しそうに、俺を三階に連れて行く。

 三階も何も無い……もしかして、


「遊び部屋じゃ!」


 やっぱりそうか。しかし、完成前に見れて良かった。

 アルとネロに、遊び部屋は不要だと伝える。

 案の定、ふたりから文句が出るが、食事をする所と遊び部屋を同じにしておけば、問題ない事を伝える。

 そもそも、ふたつも遊び部屋は必要ない。


「遊び部屋は一階なのか? それとも三階なのか?」

「まぁ、食事をしたりするなら一階の方が良いな。但し、玄関との間に壁は要るけどな」

「三階は、どうするんじゃ?」

「そうだな、俺もまさか三階建てとは思っていなかったから、考えていなかった」

「それなら、タクトが好きに三階を使うが良い。妾達は別に気にしないので、自由に使え」

「そうなの~、師匠の自由に使っていいの~」


 あれだけの広さを自由に使って良いと言っても、正直困る。

 悩んでいると、アルが決定事項だからと念押しをして来た。

 とりあえず、転移扉をこの家に付ける事にするので、一階の壁に扉を付ける事に了解を貰うと、あっさりと了承してくれた。

 三階は、ラチスに俺から話をする事ので、他を進めてもらうようにも頼んでおく。

 俺の部屋以外での使い道も考えないと……。

 ロッソの部屋のように狭くて、すぐに物が取れるような部屋が理想だ。

 ……そういえば、


「この間、ロッソに会いに行ったぞ」

「なんじゃと!」

「えぇ~!」


 アルとネロが、驚きの声を出す。


「何故、妾達を誘わないんじゃ!」

「そうなの~!」

「会いたかったのか?」

「勿論じゃ!」

「俺も突然だったし、今度は皆で会いに行くか?」


 ふたり共、「行く!」と返事をする。


「ロッソは、元気じゃったか?」

「アンデッドだから、元気と言うのも可笑しな話だが、元気だったぞ」

「そうか、それなら良い。ロッソは優しすぎるから、自分以外の者と必要以上に距離を置こうとしている」

「まぁ、見るだけで相手を殺してしまうのであれば、そうなるだろう」

「タクトは、大丈夫だったのじゃな?」

「あぁ、俺は特に問題無かったぞ」

「やはり、タクトは特別なんじゃな」

「アル達だって、長い間ロッソと一緒に居たと聞いたぞ」

「妾達は、不死だからな」


 俺は、ロッソの近況報告をアルとネロに話した。

 久しぶりの旧友の話を嬉しそうに聞く、アルとネロだった。


 ロッソとの話を終えると、気になっていた事をアルとネロに聞いてみる。


「初代国王の事を知っているか?」


 ふたり共が、『フレッド・エルドラード』の事は知っていた。

 勿論、ガルプの使徒だという事も含めてだ。

 フレッドの邪魔をした理由も、同じようなものだった。

 アルは、自分の住んでいた場所に勝手に来て好き放題するので、仕返しをしただけだそうだ。

 ネロも、母親から近くの村が騒がしいので、静かにさせるようにと言われて、侵略してきた軍を撤退させたそうだ。


「フレッドは、妾達がガルプの思い通りに動かないので、今迄とは別の恩恵を授けたのじゃろう」

「うん、確かに戦わずに逃げて行ったの~」


 俺が思うに、アル達にも非はあるが、それよりガルプに大きな問題がある気がする。

 アルから、フレッドがロッソと出会った時の事を話してくれたが、睨むと同時に息絶えたと言っていた。


「フレッドも【不死】なのか?」

「いや、違うじゃろう。妾が一度殺したが、生き返れる回数にも限度があるような事を言っておった気がするぞ」


 回数限定で生き返る事が可能という事なのか?

 確かに不死であれば、初代国王が死んでいるのは変だ。

 ……もしかして、生きているのか?

 嫌な予感がしたので【全知全能】に確認をするが、既に死亡しているという回答だった。

 やはり、アル達と同じ【不死(条件付)】のようだが、条件が生き返れる回数だったのか、寿命は除くだったのかは分からないし、そこまで【全知全能】に聞くつもりもない。

 そもそも、最初に『迷いの森』でリラからの依頼で【不老不死】のスキルを持った者をエリーヌに調べて貰った際も、アルやネロ、ロッソの名前は出てこなかった。

 敢えて、ガルプが隠蔽したのか、本当に書類が無かったのかは不明だ。


「フレッドが、魔王の称号を与えたって知っていたか?」

「なんじゃ、それは?」


 アルもネロも首を傾げて、何の事だか分からない様子だ。

 俺は、王都の城で見つけた本の内容をふたりに伝える。


「そうなのか、しかし六大魔王が戦って最後のひとりになった時に、この世の終わりというのが気になるな」

「確かにそれは俺も気になるが、先の事を考えても仕方がない」

「確かにそうじゃな。今が楽しければそれで良い!」

「アルの言う通りだな。フレッドが変なことしなければ、俺も人族最初の魔王になんて、ならなかったのにな」

「タクト、何を言っておる。人族最初の魔王は、妾じゃぞ!」

「えっ!」


 龍人族であるアルは、元々人族だったが昔ドラゴン族と人族との戦いに加勢した為、魔族になったそうだ。

 確か、以前にもそんな話を聞いたことがあるが……ガルプツーがこの世界に来る前の事だったのか、ガルプツーの勘違いなのかは分からないが、俺が人族最初の魔王でないと分かっただけでも良かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る