第345話 血瘴香の治療方法!

 村民がランドレスの血瘴香で、禁断症状が出るのであれば中毒になっている為、治療が必要になる。

 【全知全能】に、俺のスキルで血瘴香による禁断症状を治す事が可能かと聞くと、無理という回答だった。

 俺は【治療】や【浄化】に【転送】等で完治出来ると思っていただけに落胆した。

 一応、理由を【全知全能】に聞いてみる。

 【治療】スキルでは、外傷を治す事は出来るが心理的な治療は出来ない為、完治する事は出来ない。

 【浄化】は、汚れを取るだけなので体内にあるものを取り除く事は不可能だそうだ。

 【転送】は、俺自身が認識出来るもので無い為、スキル自体を発動出来ない。

 尤もな理由だった。


 続けて、血瘴香について聞く。

 禁断症状が出ると言う事は、依存度が高い者も居るという事になり、既に末期症状に近い者も居る可能性が高い為、治す術は時間を掛けて血瘴香を身体から抜く必要があるが、禁断症状による苦しみから自ら死を選ぶ者もいるらしい。

 自分の意思で禁断症状に打ち勝つしかないそうだ。

 解毒草等で、症状が和らぐかと聞くが、解毒草では効果が薄いそうだ。

 補助的な治療薬として使うのであれば『六花草』を磨り潰したものを、数時間おきに飲ませると血瘴香が身体から早く抜ける為、効果的らしい。

 『六花草』は、北にある『銀雪岳』に生息しており、珍しい植物でもない。

 但し、生息地域が非常に厳しい気候である事と、そこまでの道のりが険しい為、なかなか辿り着けない。

 入手条件が厳しいからか、街での需要が高い。収穫して売れば、大きな収入になる。

 その為、一獲千金を夢見て六花草を取りに行く者も多いが、多くの者は銀雪岳で命を落として帰って来ない。

 六花草の特徴として、六枚の花弁は全て白いのだが、一枚の花弁の根元だけが赤くなっている。

 何故赤いかと言うと、収穫者の血を吸っていると言う噂もあるそうだ。

 銀雪岳や、六花草という名前からも雪山なのは想像出来る。

 ここに来る時に、北に見えた雪で覆われた山脈のどれかか、山脈自体が銀雪岳なのだろう。

 クロの影の中に保護しておけば、時間は経過しない為、ランドレスを倒してから六花草を手に入れても間に合うが……。


「シロ、悪いが六花草を取りに行けるか?」

「はい、大丈夫ですが、どれ位採取が必要ですか?」


 シロには、六花草を取りに行ってもらうことにしたが確かに、量が分からない。

 クロに囚われていた村民の数を大体聞く。

 【全知全能】に村民の数に対して、完治するまでに必要な六花草の数を問い、返ってきた数量をシロに伝える。


「わかりました。では、行ってきます」


 出発しようとするシロに、採取は出来る限りで良い事と、無理はしないように伝えると「はい」と返事をして、銀雪岳に向かった。

 万が一、数量不足の場合は、ルーカスに頼んで市場にある六花草を集めて貰う必要がある。

 

 俺は早く完治して、社会復帰してもらった方が、村民達の為だと判断した。

 気になるのは、正気に戻った時に家族等がすでに死亡していた時だ。

 家族や親しい者が居ないのであれば、異常なままの方が良かったと罵られたら、俺はどう返せば良いだろう。

 死を受け入れて、前に進むべきと上辺だけの奇麗事を言ったところで詭弁でしかない。

 誰かが悪役になったり、感情をぶつける相手が居ないのであればランドレスになると思うが、国賊であるランドレスには直接怒りが届きにくいだろう。

 もし怒りの矛先が、見当たらずに俺がその矛先になるのであれば、仕方ないと諦めてその役を引き受けることにする。

 救出が遅れたからだと言われれば、反論する事は出来ない。

 反論したところで、怒りをぶつける村民は納得出来ないであろうと思う。


 クロには引き続き、人質の保護とランドレスの仲間の捕獲をしてもらう。

 香の正体が血瘴香だと分かったし、ランドレスくらい俺ひとりでもなんとかなるだろう。

 臨機応変とは言え、作戦を何度も変えてしまい、シロには申し訳なく思う。

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