第320話 浅はかな考え!
マリーが四葉商会の副代表就任した事と、リベラが『ブライダル・リーフ』の新店主に就任した報告を関係各位に連絡する。
王都魔法研究所とグランド通信社には、マリーを連れて正式に挨拶に行く事を伝える。
ダウザーは一度、観光がてら街に来いと言ってきたが、俺が行くとサボれる口実が出来るからだろう。
とりあえず、近い内に一度行くとだけ答えた。
四葉商会として、これからはマリーが色々としてくれると思うので、無理難題でも対応してくれると信じている。
優秀なマリーのおかげで、俺も楽が出来るだろう。
しかし、そうなるとマリーのいつまでもあの部屋と言うわけにも行かないが、あれ以上の部屋となると俺が今使っているこの部屋しかない。
部屋を見渡してみながら改めて考えると、それ程部屋に居ないので勿体無いと感じた。
獣型のシロとクロに、俺であれば今、マリーやフラン達が使っている部屋でも十分だ。
シロとクロの相談するが、ふたり共「俺の判断に任せる」だった。
クロには昨日、一旦戻って来て貰いマリーの父親の居場所を調べて貰ったが、又すぐに調査に戻った。
店に下りていくと、マリーとリベラが居た。
リベラも店主になる覚悟が出来たのか、真剣にマリーの話を聞いていた。
教えるマリーにも、今迄以上に力が入っている。
ユイもフランも忙しそうにしている。
「なにニヤニヤしているのよ」
俺の気が付いたマリーが話し掛けて来た。
「笑っていたか?」
「えぇ、気持ち悪いわよ」
いつものマリーで安心した。
父親の事は気になっているだろうが、それを表に出していない。
強い女性だ。
マリーに部屋の交換を話してみるが、即却下だった。
代表である俺が狭い部屋に移り、副代表のマリーが大きな部屋に移るのが、そもそも変だと言う。
確かに言われればそうだ。
代表が小さな部屋に移り、副代表が大きな部屋に移るのは不自然だ。
「そうだな、俺の考えが浅はかだった」
「タクトの気持ちは、有難く受取っておくわ」
笑顔で聞きなれない優しい言葉で話すマリーに対して、俺は一瞬戸惑った。
「二、三日連絡取れない場所に行くかもしれないから、留守中頼むぞ」
「……相変わらず、唐突に言ってくれるわね」
「まぁ、色々とあってな」
第三柱魔王であるロッソに会いに行くつもりだと、マリーに伝える。
「会わないといけない理由あるの?」
「いや、特に理由は無いが、最古参の魔王であるロッソに、新参者の俺が挨拶に行くのが筋だと思ってな」
「律儀な魔王ね」
「確かにそうだな、魔王らしく無いな」
「魔王らしくは無いけど、タクトらしいわね」
「そうか?」
「えぇ」
いつもの口調と、俺に対して諦め顔のマリーだったが、今の俺には、それが安心出来た。
「一応、言うけど無理しないでよね」
「安心しろ、俺はいつも無理をしないからな」
「はい、はい」
軽くあしらわれた。
「それと、今の予約が無い日から一週間や店を休みにするから皆に伝えてくれ」
「……又、何か考えているの?」
「いいや、いい機会だから皆で旅行に出る」
「……旅行?」
「あぁ、社員旅行だ!」
「社員旅行って何?」
……そうか、この世界には社員旅行っていう概念自体が無いのか。
前世での社員旅行って、パワハラ三昧だったから良い印象は無いが、いつも働いてくれている従業員達に対して労ってあげたいという俺の気持ちだ。
「ユイや、トグルにザックとタイラーも一緒に連れて行くから、顔見たら伝えておいてくれ」
「別に、いいけど。何処行くのよ」
「どこか行きたい所あるか?」
「そうね、ミラ様達の治める『魔法都市ルンデンブルク』に一度、行ってみたいとは思っていたわ」
「どうしてだ?」
「王都とは違った商売があると思うので一度、自分の目で見ておきたいわね」
「そういうことか、分かった。ダウザーに連絡しておくから日が決まったら教えてくれ」
こうして、四葉商会最初の社員旅行は、俺が何度も行っている『魔法都市ルンデンブルク』に決定した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます