第303話 冒険者ギルド高ランク昇級試験-5!

 ステルススライムの討伐に『蓬莱の樹海』まで来たのだが目の前には、ふたつの頭を持ち尻尾が蛇の魔獣『オルトロス』がいる。

 【全知全能】で大まかな位置を聞いて、【魔力探知地図】で詳細な確認をしてから【神眼】を使うと、オルトロスの背中にステルススライムがいるのが確認出来た。

 暫く遠くから観察してみるが、オルトロスが狩猟してきた食料を気付かれないように少しづつ食べていた。

 ステルス能力は外敵から身を守るのと同時に、依存しながら生活する上で必要な為に進化したスライムなのかも知れない。

 自分はオルトロスの背中に乗りながら生活をして、食料調達はオルトロス任せ。

 もし、オルトロスが襲われても気付かれないので、自分だけ危険回避も可能だ。

 そのような状況になっても、新たな宿主でも探せば生活に困る事は無いだろう。

 ステルススライムとは他の魔獣に依存している為、余計に発見されにくいのかも知れないとも思った。

 オルトロスを攻撃すると、ステルススライムが逃げる可能性が高い為、オルトロスを攻撃すると見せかけて、ステルススライムを一撃で仕留めるか、ステルススライムごとオルトロスを倒すのが最善だ。

 オルトロスの食事が終わり、安全な場所で休息しているのを確認する。

 【隠密】を使いオルトロスに近付く。【神眼】でステルススライムにも気付かれていない事も確認する。

 攻撃範囲に入ると同時に、ステルススライムに向かい【雷撃】でオルトロスごと攻撃をする。

 【神眼】でステルススライムが死んだのを確認したが、オルトロスは息があるようなので、手刀で首を切断した。

 スグに解体をして、オルトロスとステルススライムのコア等を【アイテムボックス】に仕舞う。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「本当に、二時間以内に帰ってきたのですね」


 ヘレンは呆れた顔で俺を見ているが、俺は笑顔で返すと不機嫌そうな顔で、ターセルに鑑定の依頼を連絡をしていた。


「もし、宜しければステルススライムの特性などを、教えて頂けませんでしょうか?」


 どうやらヘレンの興味は、この短時間でステルススライムを発見して、討伐出来た事みたいなので出来る範囲で答えることにするが、教えれる事と言えば他の魔獣等に寄生している事位だった。

 発見方法については、教えられないと伝えると残念そうだった。


「ステルススライムの素材は特別なのか?」


 気になり質問をしてみる。


「いえ、希少種と言われる魔物に興味があっただけです」

「魔物でも研究してるのか?」

「違います。サブマスとして依頼があった時に対応しやすいように心掛けているだけです」


 ギルド本部の、サブマスとしての使命かのように答えた。 

 仕事熱心だとも感じたし、冒険者の安全等も考えた上で、色々な知識が必要なのだろうと思い感心する。

 ターセルが鑑定の為に到着する。


「本当に、数時間で単独討伐の試験を達成してきたのですね」


 ターセルも若干、呆れた口調で俺に話しかけてきた。

 ヘレンがターセルにステルススライムのコアを渡すと、ターセルは鑑定に入る。

 暫くすると鑑定が終わったのか、一息ついてから、


「間違いなく、ステルススライムのコアです」


 俺の単独討伐達成を宣言してくれた。

「しかし、超難問のひとつステルススライムを討伐するとは、流石ですね」


 皮肉なのか、誉め言葉なのかターセルの表情からは分からないが、俺は笑顔で返す。


「しかし、タクト殿なら入手が難しい素材の魔物討伐も、余裕で達成出来そうですね」

「欲しい素材でもあるのか?」


 ターセルはヘレンを見ると、ヘレンは頷いた。


「はい、城にある国旗を立てる紐にクラウドスパイダーの糸を使用していたのですが、劣化が酷くて他の素材で対応しているのですが頻繁に交換が必要な為、クラウドスパイダーの糸を調達したいと思いまして、ギルドに依頼をしていたところなんですが、引き受けてくれる冒険者がなかなか居なくて困っているんですよ」

「クラウドスパイダーの糸なら、討伐したことあるから持っているぞ」

「えっ!」


 ヘレンとターセルは驚いていた。

 以前にアラクネ族のクララからの依頼で討伐しているし、『クラウドスパイダーの糸』もドワーフ族のトブレから頼まれていた素材だ。

 俺は【アイテムボックス】から『クラウドスパーダーの糸』を出して、目の前に置く。

 トブレに渡した物より長めだが、十数メートルはあると思う。


「長さが足りるかわからないが、必要なら討伐してくるから言ってくれ」

「ちょっと待ってください! クラウドスパイダーの生息している場所を知っているのですか」

「勿論だ。知らなければ討伐出来ないだろう」


 ヘレンは驚きのあまり、言葉を失っていた。


「長さ的には問題ないかと思いますが、一度確認させて貰ってから御連絡を差し上げるという事でも宜しいですか?」

「おぉ、別にいいぞ」

「ヘレン殿、このクエストはタクト殿への指名クエストに変更して頂けますか?」

「はい、分かりました」


 思ったよりも『クラウドスパイダーの糸』の需要がある事にも驚いた。

 しかし、長さが足りない時は繋げる技術でもあるのだろうか? 普通に結ぶだけなのだろうか?

 気になるのでターセルに質問をしてみると、【結合】というスキルを持っている者に依頼すると答えた。

 ユニークスキルでは無いということは、職業スキルという事になる。


 ターセルは『クラウドスパイダーの糸』の長さを確認するために、城に戻ると言うので挨拶をして別れる。

 引き続きランクSSSの実務試験があるので、少し休憩をしてからヘレンと共に試験会場に移動する。

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