第301話 冒険者ギルド高ランク昇級試験-3!

 ロキとカルアが登場すると、コスカ以上の歓声が上がる。

 歓声の中には、コスカを倒した俺を逆恨みしている冒険者も居るようで「殺せ!」と言う声も混じっている。

 どうやら観客である冒険者も敵に回しているようだ。

 完全アウェー状態だ。


 ヘレンから二対一になる為、ロキかカルアのどちらかが、戦闘不能か降参すれば合格だと説明される。


「強者と戦えるのは、嬉しい事だ!」


 ロキが落ち着いた口調で俺に話しかけるが、台詞だけ聞いていると戦闘狂の台詞だ。


「コスカのようにはいかないから、覚悟しておいてね」


 カルアからも好戦的な台詞が飛び出す。

 ふたりとも実力者なのは分かっているが、戦闘スタイルが不明なので不気味だ。

 ヘレンが開始の合図をすると同時に、ロキが仕掛けてきた。

 ロキの剣を避けていると、バランスを崩す。

 足元を見てみると、地面に穴が空いてる。カルアの魔法だとスグに分かった。

 俺への直接攻撃は跳ね返されるのが分かっているのか、間接的な魔法攻撃だ。

 バランスを崩した俺に、ロキの剣が振り下ろされるが、避けれる速さなので、ギリギリで避ける。


「ん~、良い作戦だと思ったんだけどな」


 カルアは悔しそうに話すが、まだ他の魔法攻撃があるのだろう。

 余裕の雰囲気なので気を付けないといけない。

 そう考えながらもロキの攻撃が止む事は無い。

 ロキが剣を振り下ろすと、ロキの背後で眩しい光が放たれる。

 反射的に目を瞑ってしまう。ヤバイと思いながらも、気配を感じて大きく横に避ける。


「これも駄目か」


 カルアの攻撃は思っていた以上に厄介だ。

 ロキの攻撃に集中しているタイミングで魔法攻撃を仕掛けてくる。

 ロキが休みなしに攻撃してくるのも作戦なのだろうか?

 コスカの時と同じように、カルアの背後に回ってみるが予測していたのか、足元の土が大きく盛り上がる。

 攻撃が来ると感じたので、急いで下りるとロキが追撃をしてくる。

 土の中から攻撃が来ると思っていたのは、俺の思い違いか?


「流石ね。これも回避するなんて」


 カルアも楽しそうに喋る。

 ロキの体力が落ちるのを期待していたが、全く剣の速度や身体の動きも変わらない。

 変則的な動きこそないが、緩急をつけながらあらゆる方向から攻撃をしてくる。

 ムラマサを使おうかと思ったが、この後の『三獣士』との戦いもあるので、出来れば隠しておきたい。

 考えながらもロキの剣を避けていると又、バランスを崩す。

 大きな穴は空いていないが、知らぬ間に俺の動ける範囲の地面の凹凸が激しい。

 俺の足の動きに合わせて、地面の形状を変えているようだ。

 ロキがここぞとばかりに、頭上から剣を振り下ろそうとしている。

 甲高い音がなると同時に、ロキが剣が振り下ろした。

 俺の背後から見ていた観客は俺が切られたと思ったに違いない。

 実際は、切られる寸前で【一刀両断】のスキルを使い、ロキの剣を反対に切った。

 スグに距離を取り、次の攻撃に備えるがロキはその場から動かなかった。


「これは、私達の負けね」


 カルアが敗北宣言をする。 

 ロキも折れた剣を見ながら「そうだな」と呟いた。

 へレンが正式に降参したとみなして、俺の合格が決定した。

 ロキは折れた剣の破片を拾うと、無言のまま試験場から出て行く。

 観客の冒険者達は信じられない様子だ。


「まさか、ロキの剣を折るとわね」


 カルアが話しかけてきた。


「あそこでロキの剣を折らなければ、次の手を考えていたんだろう?」

「さぁ、どうかしらね」


 誤魔化すように答えているが、間違いなく他の攻撃方法を考えていた感じだ。


「カルアもロキも、本気じゃなかっただろう?」

「そうね。けれどそれはタクト、貴方も同じでしょう」

「倒す事が目的じゃないからな」

「それは私達も同じよ。試験官という立場だしね」


 ロキもカルアもユニークスキルを使わずに、ロキは剣術のみで戦い、カルアも一般魔法しか使って戦っていない。

 本気で戦えばかなり強い事は、実際に戦ってみて実感した。

 スキルに頼らない強さ。俺はスキル頼りなので正反対の強さだ。本来の強さというのはこういう事なのだろう。


「ロキの剣は悪かったな」

「構わないわよ。自分のでなく借りものだしね」

「そうか、どちらにしろ後でロキには謝っておこうと思っている」

「意外と律儀なのね」


 カルアと話込んでいると、ヘレンが「そろそろ」と言ってくるので、カルアが両手を上げて手を振り、観戦していた冒険者達に礼をして退場していった。

 カルアが退場したのを確認してからヘレンは正式に、俺のランクSSの実技試験合格を宣言した。

 単独での魔物討伐の対象である、ワイバーンを討伐してランクSSを合格する為、観客に礼を言いながら俺も退場した。

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