第300話 冒険者ギルド高ランク昇級試験-2!

 実技試験の試験場でもある王都騎士団の訓練場の扉を開ける。

 本当であればギルド本部の訓練場で行うが、王族やルンデンブルク家の観覧がある為、急遽こちらに試験会場を変更したそうだ。

 訓練場と言うが観覧席もある為、見た目的には闘技場に近い感じがする。

 どこで聞きつけたか知らないが、冒険者達も席に座っている。

 どうして公開試験になっているかをジラールに聞きたい気持ちだったが、座っていた冒険者達が話しているのを聞いていると、ロード討伐したパーティーのひとりである俺の実力が見れると噂になっていたそうだ。

 俺の情報を漏らしたのは誰かを問いただしたくなる。

 上の方を見ると、ルーカス達が居る事を確認する。

 ユキノは俺に向かって手を振っている。


 ヘレンに会場の中央まで来ると、ヘレンは観客に向けて説明を始めた。

 ランクSまでは、筆記試験と単独討伐は合格している事、ランクSSとランクSSSは筆記試験のみ合格している事を話す。

 ランクSSまでをとりあえず実技試験を行い、ランクSSSは後日行うという事を話し終えると、ナイルが登場する。

 へレンが、どちらか戦闘不能になるか、降参した段階で試験終了と話して、説明を終えた。


「前回のように簡単にいくとは思わないで下さいね!」

「分かったよ」


 軽く言葉を返すと、ヘレンが始めの合図を叫び、ランクAの実技試験が始まる。

 ナイルは距離を詰めて、自在に剣を振るうが俺はそれを全て避ける。

 更に切りつける速度を上げるが、それも全て避ける。


「こんなものか?」


 ナイルに向かい、挑発する言葉を掛けるがナイルは乗ってこない。

 俺が余裕で避けている事も分かっているのか、深追いはしてこずに自分の距離で攻撃を続けている。

 【一刀両断】に頼らずに、俺に倒されてから鍛錬を積んでいたのだろう。

 観客席からは、避けてばかりいる俺に対してブーイングだ。

 仕方ないので、鳩尾辺りを殴るとナイルは身体事吹っ飛んで、観客席に激突した。

 ……観客は無事だろうか?

 少し待ってみるが、ナイルは起き上がってこない。

 激突した近くの冒険者が、ナイルが気絶している事を大声でヘレンに伝えていた。

 へレンが事実確認の為、激突した場所に行くとナイルは白目を向いて気絶していた為、戦闘不能と判断して俺の勝利というか、ランクAの合格が決定した。

 ナイルを別の場所に移動し終わらないうちに、コスカが登場してきた。

 コスカの登場と共に冒険者達から歓声が上がる。

 どうやら、コスカは冒険者達から人気らしい。


「私に二度の敗北は無いから、覚悟する事ね!」

「ん? お前、二回以上負けた事ないのか?」

「……それは」

「なんだ、嘘か」


 コスカは俺を睨んでいる。

 へレンが戻ってきたので、ランクSの試験を始める。

 ナイルと違い距離を取って、俺の様子を見ている。

 俺に魔法が通じない事と、無詠唱での魔法はあまり知られたくないので、こちらから肉体戦を挑む事にする。

 俺が攻撃しようとすると同時に詠唱を始めるが、それよりも早くコスカの背後に回り込む。

 目の前から俺が消えたと思ったら、突然背後に現れた事にコスカは驚く。


「本当なら、これで終わりだが、まだやるか?」

「当たり前でしょう!」


 振り向くと同時に俺の手を掴み、詠唱を始めた。

 コスカなりに秘策があるのだろうと思ったが、俺もコスカの腕を掴み返して、そのまま頭の上でコスカの身体ごと回し始める。

 徐々に回転速度を上げると、最初聞こえていた詠唱しているコスカの声も聞こえなくなる。

 暫く回してると、ヘレンが寄って来て攻撃中止を言ってきたので、回転を止めてコスカを地面に下ろすと、目を回しすぎたのか意識が無かった。

 ヘレンから戦闘終了の言葉が出たので、俺のランクSの合格が決まった。

 コスカにしてみれば、魔法士なのに一度も魔法を使わせて貰えずに敗北した事が屈辱だろう。

 意識を戻して悔しがる姿が目に浮かぶ。

 次は、ロキとカルアとの対戦になる。

 ナイルやコスカのように簡単にはいかないだろう。

 だからといって作戦がある訳でもないので、いつも通り行き当たりばったりでの戦いをするしかない。

 王国の最強戦士との戦闘と分かっているので、楽しみだ。

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