第267話 未知の料理!

 ゴンド村では、ロイドが料理の準備をしていてくれていた。


「任せっきりで、悪かったな」

「いえ、準備している時も楽しいですから」


 嬉しそうに答える。 本当に料理が好きなんだと感じる。


 【アイテムボックス】から、鶏がらスープの入った調理鍋を取り出す。 こぼれてはいないようだ。

 ロイドへ鍋に水を入れて、湯を沸かすように指示をする。

 それと同時に、鶏がらスープを鍋に移すように言う。


 子供達が何事かと寄って来るので、メレンゲを与えると喜んでいた。

 周りの大人も食べたそうだったので、モモに配るように頼む。

 シロとクロにも手伝って貰うつもりだったが、イースとミラや、ソディックにヤヨイが手伝ってくれているので、シロとクロには俺の料理を手伝って貰う事にした。


 大根を手に取り、皮を剥いて、味が短時間でも染渡るように、少し薄めに切る。 この作業をクロに任せる。

 シロには、ジャガイモの皮を剥いてもらい、芽を全て取り除いてもらう事にする。

 皮を剥き終わったジャガイモを、三分の一程スライスにして、別にしておく。


 村人達も、何故か祭りのように会場を用意し始める。

 王族が来たので、祭りというか、歓迎の儀と言ったところなのかも知れない。


 俺が料理をしていると、村人達が手伝ってくれた。

 皆の協力により、ポテトチップスにポテトサラダ、おでんが完成する。

 ロイドには、俺の【アイテムボックス】から幾つかの食材を取り出して、何品か追加で料理をして貰った。


 外が騒がしいので気になったのか、村長の家からルーカス達が出てきた。


「なんの騒ぎだ?」


 ルーカスにユキノが説明をしていると、イースがメレンゲをルーカスに食べさせる。


「なんだ、この触感は!」


 食べた事のない食感に、驚いていた。

 ミクルに食べさせてもらったダウザーも、同じような事を言っている。


 それを見ていた俺の後ろから、


「ビンゴ大会を開催するのじゃ!」


 アルが興奮気味に言ってきた。 ネロもやる気満々の様子だ。


「でも、景品が無いぞ」

「妾達が用意した品があるから、待っておれ」


 アルとネロは姿を消したが、すぐに景品と共に現れた。


 アルが用意した商品は『金剛石』『スノーボア:三体』

 ネロは『紅水晶』『ワイルドターキー:五羽』


 ……明らかに、人族がおいそれと簡単に手に入る物じゃないだろう。


「おい、お前らの持ってきた景品は高価すぎるだろう!」


 ルーカスやダウザーは勿論だが、ターセルも珍しく興奮していた。

 珍しい物を見た時の、鑑定士としての血が騒ぐのだろう。


「おい、タクト! これらは何だ? 国宝級の物や、最高級な食材に見えるのだが……」

「あぁ、このふたりがゲームの景品に持って来たんだよ」

「なんじゃと! 本当はタクトに立て替えて貰った金貨の代わりだったのじゃぞ!」

「そうなの~! 使わない物から、高そうな品を持ってきたの~!」

「なんで、俺へ返そうとしていた物が、景品になるんだよ。 こんなの持っていたら、落ち着いて生活出来ない奴が大多数だろう!」

「そうなのか?」


 アルは、村人を見ると頷いている。

 それを見て落ち込むふたり。


「御前達の景品は、食べ物だけでいいぞ! あとは俺が何か用意する」

「本当か! ビンゴ大会が出来るのじゃな!」

「やった~なの~!」


 ……ただ単に、ビンゴがしたかっただけなのか?


「残りは、持って帰れよ」

「面倒なので、タクトの立て替えて貰った分として受け取れ!」

「そうなの~!」

「分かった、とりあえず預かっておく。 俺からの景品は『コカトリスの卵』だ。 これで全て食材になるので問題無いだろう」


 アルとネロは、ビンゴ大会が開催されるとあって喜んでいる。

 村人達も商品はともかく、前回の事を知っているので嬉しそうだ。


「因みに、当たった村人が金貨の方が良いというのであれば、交換するからな! ターセル、鑑定は頼むぞ」


 ターセルは「分かりました」と言うが、前回のビンゴ大会に参加していない者達は、何のことだか分らない様子だ。


「それじゃあ、食事の後に開催するから、楽しみにしていろ」


 食事も出来上がり、後は食べるだけになる。

 ダウザーからの土産は高級な酒だったが、村長の意見でこの場で振舞う事になった。


 食事の前に、俺は根菜について説明をした。

 今迄、食べていない食材かも知れないが、栄養価も高く食べ方も工夫次第で色々ある事。

 大根や、ジャガイモ以外にも食べれる物が多数ある事。


「とりあえず、食べてみてくれ。 それから、今後どうするかを決めてもいい」


 まず、俺が害が無い事を伝える為に、最初に食べる。

 その後、味見をして美味しさを知っているロイドが食べると、村人も食べ始めた。

 ルーカスや、ダウザー達は怪訝な表情をしている。

 ユキノは、村人達と美味しそうに食べていたが、ルーカス達のそんな姿を見ると、料理を持って行き食べるように言っていた。

 仕方なしに、ルーカスとイースは、ポテトサラダを口にする。


「……なんだ、この旨さは!」

「えぇ、今迄食べた事のない食感ですわ」


 それから、塩味のポテトチップスを菓子だと紹介して、食べさせると衝撃の美味しさだったようで、次々と食べていく。


 それを見たルーカス達も食べ始め、皿にあったポテトチップスとポテトサラダに、おでんを全て完食した。

 王族の口にも合うようだ。


 料理長のビアーノ達料理人用に、少し分けて【アイテムボックス】に仕舞う。

 ついでにロイドの料理も仕舞う事にする。 ロイドの味付けは俺好みで旨いからだ。

 おでんがこぼれないか、若干心配だが鶏がらスープが大丈夫だったので、問題無いと思う。


 時間と共に、ルーカスやダウザー達も村人と普通に話をしている。

 その風景を見ていると、本当に地位とは無関係な空間だと感じた。

 護衛三人衆は、職務を忘れることなく邪魔にならないように護衛をしている。


 子供達は、ポテトチップスが人気のようで、手が油で汚れてたが塩味の聞いた指を舐めて美味しいと喜んでいた。

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