第255話 オークロード討伐!

 部下だったオーク達の死体を踏みつけながら、こちらに歩いてくる。

 決して速度は速くないので、少しづつ後退するように指示をだす。

 シキブとムラサキは、ソディック達と合流して、一足先に林で待機をして貰う。

 オーク達は自分達にも危害が加えられると思っているのか、オークロードの行く手を阻まないようにしている。

 オークロードと、一対一の状況になった。

 とりあえず、【火球】を撃ち込んでみるが、剣で防がれる。

 徐々に威力を上げるが、全て剣で防がれた。

 あの剣は厄介だと感じた。 林で、シキブ達が一斉に攻撃を仕掛けたとしても、あの剣で弾かれてしまう気がする。

 林では、俺は魔法での攻撃をメインと考えていたが、接近戦に変更する事も考えておこう。

 オークロードは、怒りで我を忘れているのか、俺に向かってひたすら歩いてくる。

 すこしづつ後退しながら、シロに連絡をすると「用意は出来ている」と返事をくれた。

 後は、俺が林までおびき寄せればいいだけだ。

 距離を少し縮めて、剣の攻撃を受けてみる。

 思っていた以上に速い。とてもこの図体から、繰り出される速さではない。

 それよりも、この異臭はなんだ?

 明らかに、オークロードから臭ってくる! どこかで嗅いだ気もするが……

 そんな事を考えていたら、小石に足を取られて体勢を崩す。

 見計らったかのようにオークロードの剣が俺に向かって来た。

 【転移】で後方に移動する。

 ……危なかった。戦闘中に他事をしていると危険なのを痛感した。

 俺から話しかけられていたシキブも、同じ感じだったのだろう。

 後で、もう一度謝っておこうと思う。

 目の前から、いきなり姿を消した事に驚いたのか、消えた場所を見たままだ。

 【火球】を撃ち込んで、挑発をする。

 オークロードは俺を確認すると、先程よりも速い速度で近づいて来た。

 そのまま、【火球】を撃ち込みながら挑発を繰り返して、林まで誘き寄せた。

 【魔力探知地図】で周囲を確認するが、オークロードの反応以外は、数十メートル距離を置いて幾つかの反応がある。

 元々、この辺りに生息していたが、オークロードに追い出された魔物達だろう。


「それじゃあ、本気で攻撃させてもらうからな!」


 俺の言葉が合図となり、一斉攻撃が始まった。

 ムラサキが、オークロードの剣を捌き、シキブは打撃を撃ち込みまくる。

 ソディックとトグルは、初めてとは思えない連携で、下半身を重点的に攻撃していた。

 俺が戦わなくても、勝てるんじゃないのか?

 副隊長ふたりを監視しながら、そう思っていると先程の異臭がより強くなる。

 シキブの悲鳴が聞こえたので、シキブの方を見る。


「ムラサキにトグル、ソディックも一旦下がれ!」


 シキブの所まで駆け寄り、すぐにオークロードと距離を取る。

 ムラサキは何のことか分からないみたいだが、俺の指示に従い戻って来た。

 シロの横には、焼けただれたシキブがいる。


「タクト、一体何が起こったんだ!」


 シキブの姿を見たムラサキは、冷静さを欠いていた。

 俺は、追撃が無いようにオークロードを見ながら、皆に話をする。

 ソディックとトグルが切った個所から、勢いよく血が噴き出した瞬間、シキブに掛かると白煙を上げたと同時に、皮膚が溶け出した。

 多分、酸だ!

 ソディックとトグル、それにシキブの武器も溶けているのを確認した。

 唯一、剣を受けていたムラサキの大剣も、根元にヒビが入っていた。


「武器が、それじゃあ戦力にならないな。ここは俺ひとりで戦うから、被害が無い位置まで下がっていろ!」


 ムラサキ達と戦闘を代わる事にする。


「お前だけでは、無理だ!」

「武器も身体も溶かされる状況だ。魔法が使える俺しかいないだろう」


 ムラサキの大剣も折れるか、溶かされるか使い物にならなくなるのは時間の問題だ。

 それに先程、シキブを抱きかかえた時に、俺の身体も酸による損傷があった。


「まぁ、俺が倒されたら国王に、負けた惨めな状況でも報告してくれ」


 ムラサキもトグルも何かを言いたそうだったが、俺の意思が変わらない事が分かったのか、何も言わなかった。


「ライラは、皆に結界を頼む。シロは、シキブ達の怪我の手当てを優先してくれ。ムラサキはシキブの横にでもいてやれ! クロとトグルは、さっきの任務を引き続き頼む」


 誰も何も言わないが、意思が通じていると確信しているので問題無い。


「ソディックと副隊長ふたりは結界の周りで、他の魔物からの攻撃に備えて護衛を頼む!」

「分かりました!」


 皆が、それぞれに配置完了したので、改めてオークロードに攻撃を仕掛ける。


 とりあえず、遠距離攻撃で様子を見る。

 【風刃】で左脚を連続で攻撃する。

 傷つける事は出来るが、すぐに傷が塞がる。

 もしかして、【自動治癒】のスキル持ちか?


 【風刃】で同じ個所を何度も攻撃をする。

 俺の魔法スピードの方が速い為、傷が塞がるスピードよりも徐々に左脚にダメージを与えてゆく。

 何十発かの後に、左脚の太ももが千切れてオークロードが倒れた。

 これで、動きは止めれた。

 あとは起き上がってこないコイツを慎重に仕留めるだけだ。

 酸は電気通す筈だよな?

 【雷球】を放った瞬間に、オークロードが立ち上がった!

 先程、俺が切断した足が再生している。


「おいおい、マジか!」


 多分、オークロードのスキルは【自動再生】なのが、この瞬間に分かった。

 片手で【雷球】を放ちながら、ステータス確認をすると【自動再生】がある。

 しかもユニークスキルだ!

 これはスキル値が高い為、すぐにスキル値の振り分けが必要なので、スキル値を振り分ける。

 必死で貯めたスキル値が又、ほとんど無くなった……

 俺も【自動再生】を習得したので近距離戦も可能だ。

 試しに、一気に近づきオークロードの腹に一発入れる。

 酸により肉体は溶けるが、すぐに再生された。

 【身体強化】で多少はダメージ軽減出来るが、痛みは尋常ではない。

 オークロードの表情から、俺の攻撃がどれくらい効いているのか分からない。

 とりあえずは、殴ったり切ったりしてみるが、すぐに再生してしまう。

 辺りからは、酸で焼けた草木の嫌な臭いが充満する。

 オークロードの持つ剣が邪魔で、なかなか近づくことが出来ない。

 【自動再生】があるので、一か八か剣の間合いに入る。

 振り下ろされる剣を避けて、右手を【一刀両断】で切断する。

 一旦、距離を取る。

 切断された腕を剣ごと【転送】で手元まで引き寄せ、【アイテムボックス】にしまう。

 これで剣は無くなったので、近距離戦が可能になった!

 再び、近距離から【一刀両断】で手足を一気に切り落とす。

 まともに返り血にを浴びて、皮膚や肉が溶ける。オークロードの再生速度が落ちていない。

 しかし、脚は手に比べて再生速度が、遅い事に気付く。

 よく観察してみると、切断した箇所で若干だが再生速度が異なっている。

 とりあえず、再生した脚をすぐに切断して、この場にオークロードを止めておく。

 このまま消耗戦になると不利なので、【一刀両断】で両手両脚を切断して、すぐに頭を切断するが、切り終える前に再生が始まる。

 明らかに再生速度が早すぎる。

 【神眼】を使い、魔力の流れを確認する。

 首元にコアを発見した。

 コアを守る為に近ければ近いほど、再生速度が早いという事なのか?

 場所は把握したので、体に触れた状態からその場所に目掛けて【風球】を最大威力で撃ち込む。

 オークロードは俺を噛もうとしている。

 よだれも酸なのか、滝のように流れている状態だ。

 【風球】を連続で撃ち込むと、コアらしきものが見えたので、右手でそれを掴む。

 掴んだと同時に再生されて、俺もオークロードの肉体の中に取り込まれていく。

 脚だけは、体外にあるが俺の肉体は、殆どが取り込まれた。

 【分身】を一体作り、掴んだコアを、分身の手元に【転送】させる。

 続けて、【炎波】を自分に向け使うと、俺の周りが一気に焼けて外の景色が見えたので、外へ飛び出す。

 コアが無くなったオークロードの肉体が、徐々に崩壊し始めた。

 動くことも無く、朽ち果てていく肉体を俺は、じっと見ていた。

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