第251話 夜中の会議!
夜も遅く、しかも明日は朝早くから『オークロード討伐』だというのに……と、シキブは思っているだろう。
しかも、国王の部屋に国王一家に、親族のルンデンブルク一家が揃っている。
その他には、護衛三人衆にシキブとソディック、ジラールと俺。
「タクト! 国王として、そして父親として本当に感謝をする」
「本当に有難う御座います」
ルーカスとイースから、ひたすら感謝の言葉を言われる。
しかも、鑑定士のターセルから『ドライアドの実』を使用した事まで伝わっているので、それなりの報酬は用意すると、ルーカスは興奮しながら俺に言ってきた。
「やはり、タクト様は神ですわ!」
ユキノだけが、意味不明なことを又言っていた。
「タクト殿、本当に有難御座いました」
アスランからも、直接礼を言われる。
「不調な所は無いか?」
「はい、特には御座いません」
しかし、物腰の柔らかい青年だ。 王子とはこんな感じなのか?
失礼だがユキノやヤヨイも、王女らしくない。
ルーカスとイース、周囲の育て方が良かったのだろうか?
「ミクルの件も含めて褒美は考えておくが、欲しいものはあるか?」
いきなり欲しいものと言われても、すぐには思いつかない。
「討伐から帰ってくるまでに、考えておく」
こう答えるのが、精一杯だった。
「エリーヌ様の信仰を、国中に広めてはどうですか?」
ユキノ曰く、神の俺が信仰する神ならば、さぞかしい素晴らしい神の筈なので、皆にその教えを広めては、どうかと言う提案だった。
確かにいい案だ!
しかし、エリーヌの教えといわれても、正直困る。
エリーヌの教えなど無いからだ。
とりあえず、お決まりの皆を救う『慈愛』でも付けておくか……
「そうだな、慈愛の女神エリーヌだから、不幸な人が居なくなるように祈りでもしてくれればいいな」
「私が率先して、その教えを広めます!」
ユキノは、なんでこんなにやる気なんだ?
しかも教えなんて、何一つ教えていない……少し、残念な子なのか?
「それよりも、確認しておきたい事がある」
「なんだ?」
ルーカスが返事をする。
「クニックスと言う名に、心当たりはあるか?」
クニックスと言う名を出した瞬間、皆の表情が一変した。
「……どこでその名を知った」
ルーカスが、逆に俺へ質問をする。
「王子に【呪詛】を掛けた術者が、クニックスだ」
「何だと!」
ルーカス達は驚きを隠せない。
「クニックスは、何をして国を追放されたんだ?」
【全知全能】で質問しても良かったが、関係者達から直接聞いたほうが良いだろうと判断した。
「それは、私からお話しましょう」
ターセルが代表をして話をしてくれた。
クニックスは、貴族の立場を利用して、奴隷を何人も殺すような快楽殺人者で、死体を屋敷の地下に隠していた。
ライテックの告発により、衛兵達に屋敷の捜査をさせると告発通り、地下から数十体の死体が発見された。
しかも、発見された死体は、内臓が出されていたり、各部位が切断されたりと非道い状況だった。
一旦は死刑が下されたが、ライテックの温情により国外追放と言う事になったそうだ。
……当然、ライテックが絡んでいるよな。
「俺の予想だが、クニックスはライテックに利用されただけだろう」
「何か根拠でも?」
「あぁ、国外追放されたのは、王子のせいだとライテックに聞いて恨んだ末に【呪詛】を掛けたんだろう」
「……そうですか」
「何か、気になる事でもあるのか?」
ターセルが考え込んでいたのが、気になった。
「実は……」
クニックスは捕まった際に、「俺は知らない」「昨日まで、地下には何も無かった」と事件への関与を否定していたという。
「ライテックとは、どんな奴なんだ?」
クニックスも気になったが、黒幕と思われるライテックのほうが気になった。
ライテックは、前国王の弟の子供で、国王であるルーカスの従兄弟にあたる。
ルーカスには兄弟が居ない為、ルーカスとアスランを亡き者にすれば、自分が国王になれる。
とても分かりやすい覇権争いの構図だ。
「証拠があれば、国王はライテックを罰するのか?」
「無論だ!」
そう答えるルーカスの言葉に、怒りを感じた。
「ロキにカルアは、引き続き調査を頼む。 それと、ターセルは暗部の権限を与える」
護衛三人衆は、頷くと部屋から出て行こうとする。
「ちょっと待て、【結界】を張っているから出られないぞ!」
今回の会話が、外に漏れることが無いようにした。
又、外部からの侵入者対策や、万が一の裏切り者対策で部屋からの入退室が出来ないようにしてある。
護衛三人衆は、部屋から出るのを止め立ち止まる。
しかし、暗部って国王直属の調査や暗殺部隊なのか?
非常に気になるが、厄介事に巻き込まれそうなので、聞くのを止めておくことにした。
それよりも話の途中なので、話を続けた。
「俺の情報だとクニックスらしき者が、ソルデ村に居るらしい」
「既にそこまで調査を進めているのか?」
ルーカスは驚いていた。
アスランの【呪詛】を解除してから、まだ数時間しか経っていないから、当たり前だろう。
「まぁな。 それより慎重に事を進めないと逃げられる恐れがあるからな」
「確かにそうだな。 ライテックの事も含めてと言う事だな」
「そういう事だ。 他に聞きたいことや、報告があるか?」
ルーカス達に聞くが、ダウザー達は俺が討伐から戻るまで暫く王都に滞在すると言って来た。
……帰るまでの道のりが面倒なので、帰りも俺に頼む気なのだろう。
やっぱり、便利に使われているだけの気がする。
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