第236話 狐人族の派閥!
「……そうか、そんな事になったのか」
ローラに『狐人の里』での出来事を話した。
「まぁ、いずれはこうなるとは思っていたがな」
ローラが今迄の経緯を話し始めた。
『狐人の里』と言っても、幾つかある里のひとつでしかない。
里に住む者にとって本家は絶対的存在だが、分家と呼ばれる者達は本家から理不尽な理由で里を追放されたり、自主的に里を出て街等に住み始めたりした。
その結果、長い年月と共に疎遠となった本家(里)は、影響力を失い始めてしまう。
危機感を持った本家は数十年前から分家の中でも、本家への忠誠心が強い者達を里に集めて、本家は権力を維持しようとしていたそうだ。
その分、本家への気分を窺いながら生活する事になり、本家に気に入られれば取巻きとして、本家と同じ様な生活環境を与えられる為、その傾向はより強くなっていった。
この里での生活が、普通だと思わせる事が必須の為、分家の者達には里外に出る事を禁じていた。
「里以外の世界を知って、本家への疑問を一度でも持ってしまうと、本家に従うのが馬鹿らしく思えてくるからな」
「ローラも、それが理由で里を出たのか?」
「それもあるが、レクタルから側室になれと言われたのが決定打だ」
あのお馬鹿な頭首なら、やりかねないな……
「どちらにしろ、早かれ遅かれ里から出るつもりだったから、理由なんてなんでも良かったのかも知れんな」
「まぁ、そのおかげで俺は天才発明者と出会う事が出来たのだからな」
「それは、こちらも同じだ」
お互いの顔を見て笑う。
「ラウ爺は、冒険者なのに何故、里に戻ったんだ?」
「それは、街の情報や、他の派閥の狐人族の集落、特に『黒狐人の集落』の動き等を調べたりする為に冒険者になったと言った方が正解だな」
「黒狐人?」
「あぁ、その集落の者達は、狐人族には珍しく身体に紋章の様なものを掘り込んでいる為、そう呼ばれておる」
「警戒する派閥ってことか?」
「そうだ。昔より犯罪等の裏社会と関わりが深いとされている。同族の狐人族の誘拐でも躊躇なくするような連中だ」
そんな連中達が集落の在り処を隠しもせずに生活しているんだ?
俺の疑問にローラは答えてくれた。
集落を隠さない事で、裏社会との関係性は無いという事を世間に知らせる事。
そして、黒狐人の集落と分かって襲撃してくる敵対する者達を撃退する事も狙いの一つらしい。
暗殺集団養成の集落といった感じか……興味がある。
忍者とか暗殺者は、前世より好きというより興味のある言葉だ。
「ローラは、その集落の場所を知っているのか?」
「秘密が多い種族だから、場所は特定出来ておらん。それより又、面白い事を考えておるな」
「それは、どうかな。とりあえずは、知っておいて損は無いからな」
先程のように、お互いの顔を見て笑う。
「先に王都に行くが、もう一度行くのも面倒臭いのでローラの用事も日程を早める事は出来ないか?」
「タクトなら、転移魔法でスグに行けるから面倒でもないだろう?」
「何度も行くのが面倒臭いんだよ!」
「そうだな、国王からの呼び出されたことを建前にして、早めに予定変更しておく」
「頼んだぞ!」
「問題ないだろう。国王には逆らえんからな」
……確かにそうだな
「では、ローラも向かっている事にして話を進めてくれ」
「そうだな。転移魔法を他の研究者に知られて、興味を持たれるのも癪だしな」
「……相変わらず俺を研究対象として見ているんだな」
「もしかして、異性として見て欲しいのか?」
「そういう事を言っているんじゃないのは、分かっているだろうが!」
「冗談に決まっているだろう」
やはり、ローラと口論しても勝てないと感じた……
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