第215話 グランド通信社からの謝罪-2

 俺の考えを話しながら歩いていると、目的地であるグランド通信社に着いた。

 入口を入り、受付嬢が俺達の姿を発見すると立ち上がり、頭を下げる。

 受付嬢の一人が、


「タクト様で御座いますね。 この度はわざわざ御越し頂き、申し訳御座いませんでした」


 再度、頭を下げた。


「気にしなくていい。 こちらの希望だ」


 威圧的に話すつもりは無いが、相手にすればそう感じるだろう。

 ……こういう時に丁寧語が使えない事が、本当に不便だ。


「弊社オーナーのタクトは、【呪詛】により丁寧な言葉使いが出来ませんので、御了承願います」


 何かを感じ取ったのか、マリーがフォローしてくれた。


「はい、エイジンより【呪詛】の件は承っております」


 表情を崩さずに受け答えをしている。


 その後、受付嬢に部屋まで案内されるが、その間は誰も口を開かず重苦しい空気だった。

 案内してくれる受付嬢は、ベテランなのか受付嬢らしからぬオーラがある気がする。

 ただ単に、緊張しているだけかもしれないが……


 応接室らしき扉の前で、受付嬢が扉を叩くと室内より返事があり扉を開く。


 扉の先には、明らかに偉い人オーラを纏っている者達とエイジンが立っていた。

 まず、エイジンが俺達に話掛ける。


「タクト様、この度はわざわざお越し頂き、申し訳御座いませんでした」

「こちらから提案した事だから、気にするな! それより確認だが、俺の【呪詛】の事は皆、知っているのか?」

「はい、私より説明済です」

「分かった」


 俺が頷くと、それぞれが名刺を持って挨拶をしてくる。

 代表、副代表、副代表補佐と名刺には肩書が書いてある。

 エイジンも俺を『様』付で呼んでいるのは、謝罪する立場だからだろう。


「申し訳御座いませんが、弊社は起業して日も浅い小さな商会ですので、生憎と準備不足でして、本日は名刺を持ち合わせておりません」


 マリーが俺の代わりに、名刺を持っていない事を詫びた。

 グランド通信社の非がある不測の事態で、急な呼び出し対応という事もあるので、グランド通信社側の方が申し訳なさそうだ。


 名刺を受け取り、こちらも自己紹介をして顔と名前を一致したところで、


「四葉商会様、この度は弊社の記事で大変御迷惑お掛けし、誠に申し訳御座いませんでした」


 年配の口髭が印象的な代表『ヘレフォード』が謝罪の言葉を口にする。

 頭を下げると、他の者も頭を下げた。


「しかも、ルンデンブルク家御家族インタビューまで提供頂き、誠に有難う御座いました」


 ダウザー達ルンデンブルク家の独占インタビューの件の礼を言われる。


「ルンデンブルク家の記事は、そろそろ新聞に掲載されるのか?」


 インタビューしてから、未だに記事になっていない。

 数回記事をダウザーとエイジンに渡したりはしていた。

もしかしたら、ルンデンブルク家から記事の内容にクレームが入っているのかが、気になった。


「はい、明日発行の新聞にて掲載予定です。 なにぶん御相手がルンデンブルク家の為、不備が無いように何度も掲載内容を確認していており、時間を要しておりました」


 細身で長身の、栄養失調気味な副代表補佐『アンガス』が説明する。


「ウチの記事も、それ位慎重にやってもらいたかったな」

「……申し訳御座いません」


 思わず呟いてしまったが、本心なので仕方ない。

 一呼吸して、気を取り直す。


「それじゃあ、本題に入ろうか!」

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