第214話 グランド通信社からの謝罪-1
憶測記事による謝罪から九日後の昼に、エイジンより本社からの謝罪一行が到着したと連絡があった。
急いで来たのか、予定より早く到着したようだ。
それとも、予め遅めの到着予定日を連絡しながら早く来たと印象をつけさせて、誠意を見せる作戦かも知れない……
とりあえず、即答は出来ないので、一度こちらの予定を確認してから、再度連絡する旨を伝える。
早速、マリーとフランに予定を確認する。
夕方までは、『ブライダル・リーフ』での業務がある為、それ以降の時間なら対応可能だと連絡を貰う。
その内容を、エイジンに伝える。
こちらに来て貰うと面倒なので、訪問する旨も併せて伝える。
グランド通信社としては、謝罪する立場なので伺わせてもらうというが、こちら側は弱小商会なのでそれなりの客室が用意出来ないので、訪問する旨を再度伝える。
こちらの意向を汲んでくれたのか、最後は夕方頃に此方から訪問する事で約束をした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺とマリー、フランにクロを加えた三人で、それなりの服装に着替えてグランド通信社のジーク支社に向かう。
クロを連れて行くのは、向こうの発言に嘘が無いかを確認する為だ。
【真偽制裁】だと、こちらの印象が悪くなり、交渉がスムーズに進まない恐れがある。
向かう途中、通行人から注目の的になっている。
大概がマリーやフランを見て「綺麗」「美しい」と、クロにはいつもの如く「カッコいい」「素敵」等の称賛されている。
その称賛の中、「変な服」「面白い服装」等と俺を揶揄する言葉が混じっている。
……想定内だけど、やはり凹むな
歩きながらも、フランが緊張しているのが見て分かる。
フランにしたら、エイジン達が来た時もそうだが、本当は就職したいと思っていた大企業の偉い人達に会うのだから、仕方ないのかも知れない。
「何をそんなに緊張しているのよ」
俺の思いに同調したのか、マリーがフランに問い掛ける。
「だって、グランド通信社の本社の人と対面するんだから、緊張するって!」
言葉からも、緊張しているのが分かる。
「こっちは、謝罪される側なんだから堂々としていればいいのよ!」
マリーが胸を張るような仕草をする。
「……分かっているけど」
頭では分かっているが、精神が対応しきれていないのだろう。
強気な発言をしているが、マリーも緊張しているだろうが、それを表に出さないのは流石だと感じた。
「まぁ、とにかく俺達が交渉上では上になるから、そこだけは忘れるなよ!」
謝罪だから交渉が不利になる事は無いと思うが、相手の雰囲気に呑まれるような事はあってはならない。
「それで、タクトはどんな要求を考えているの?」
マリーが怪しい目で俺に問いかける。
「そうだな、謝罪記事は勿論だが『四葉商会』のイメージアップになる特集記事は必須だ」
この案は、グランド通信社も提案はしてくるだろう。
「それだけじゃないでしょう。 絶対に何か隠している気がする……」
マリーのこの直感は、ユニークスキルじゃないかと思ってしまう程、鋭い。
「実は……」
俺は、特集記事に写真付きで、マリーとフランを取り上げて貰う気でいた。
お世辞抜きでマリーは美人の部類に入るし、フランは顔と名前が出る事で写真家として認識される。
どちらも知名度が上がる事によるメリットが高いと考えている。
そして、『物質転移装置』なるものを見せて貰うつもりだ。
マリー達にも話せないが、可能であれば複写をしたいとも考えている。
俺の言葉では、【全知全能】への質問が伝わらないので、出来る限りその場で質問をする。
後で問い合わせる際にも構造等も回答してくれるだろう。
【全知全能】は質問が理解できないと回答してくれないのが欠点だが、これは俺の問題だ。
俺の質問が的確であれば、多分鑑定等も可能だろう。
前世の俺もプレゼン能力が高い方でなかったので仕方ない。
「やっぱりね。 絶対何か裏があると思っていたのよね!」
「これは、別に悪い事じゃないだろう!」
「そう言う事は、事前に相談して欲しいわ!」
「……悪かった」
確かに、ここ最近いや、この世界に来てから報告・連絡・相談といった当たり前の事が出来ていない。
俺自身、マリーやフランに甘えていたのも事実だ。
俺が素直に謝ったのが意外だったらしく、マリーもフランも面食らった顔をしている。
「タクトが、素直に謝ったわよね」
「えぇ、これは悪い事が起きる前兆かも知れないわ!」
……酷い言われようだな。
「俺だって、悪いと思えば素直に謝るぞ!」
マリーとフラン共に、信じていない表情だ。
まぁ、俺の自業自得だろう……
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