第197話 誘拐の真相!

 数十分後に、マークリムが入って来た。


 ダウザーはマークリムに、手紙の事を聞く。


 一応、最後まで話を聞いたが、明らかに内容が怪しすぎる。

 よく、この話を信じたなと思うレベルだ。


「ミクル様が、誘拐されて大変かと思いますが、何かあったのですか?」

「そんな簡単に、誰からも手紙を受け取るのか?」

「なんだ、お前は無礼だぞ!」

「この者は、私が依頼して同席して貰っている。 質問には答えて貰おうか?」

「はい、そうでしたか……たまたま受け取っただけです」


 俺は、マークリムの近くまで行き、目の前で手を広げて【真偽制裁】を発動した。


「今、お前に簡易的な【呪詛】を掛けた。 質問に対して答えなかったり、嘘を付けば罰が下る」

「フン、詠唱も無いのに何をバカな事を!」


 疑っているが、お構いなしに質問する。


「本当に、通りすがりの人物から手紙を貰ったのか?」

「あぁ、そうだと言っているだろう!」


 言い終わると同時に、左の太ももから血が流れている。


「ぐわぁ!」

「嘘を付いたな。 嘘が大きくなれば死ぬからな!」

「そ、そんなバカな!」


 思っていたより、ダメージが大きいな……

 神だけに、嘘には厳しいのか?


「お前が、ミクルの誘拐を手引きしたな」

「……」

「早く答えないと、腕か足が千切れるぞ!」

「……その通りだ!」

「王都の誰に頼まれた!」

「……そこまで、知っているのか! ライテック様だ!」


 何も起こらないので、嘘では無いようだ!


「ミクルを誘拐した目的を答えろ!」

「……現国王の失脚計画だ!」

「クーデターを起こすつもりだったのか?」

「あぁ、そうだ! どうせ、ライテック様が助けて下さるから、お前らも終わりだ!」

「ミクルという人質が居るからか?」

「その通りだ! 謝るなら今のうちだぞ!」


 ダウザーを見ると、怒りに満ちているのが分かるが、俺との約束で必死に我慢している。


「お前の見返りは何だったんだ?」

「上流貴族にしてくれる約束だ!」


 ……そんなものライテックとやらが守るとは思えない。

 多分、マークリムは口封じの為に殺されて終わりだろう。


「他の協力者を、全て教えて貰おうか!」


 マークリムからは、使用人や衛兵等の何人かの名前が出た。


「ぐあぁぁ!」


 マークリムは、右腕から血を流している。


「嘘を付くと、こうなると忠告したよな! もう一度聞くぞ!」


 残りの名前を言い出した。


「この街の首謀者はお前だな!」

「あぁ、そうだ!」

「王都の他の協力者は誰だ?」

「……勇者の上流貴族四卿だ!」


 なるほどね、魔王も倒していない勇者の子孫が、今の身分では物足りずに、国王を狙っていたという事か!

 とりあえず、聞きたい事はこれ位だな。


「他に聞くことはあるか?」


 ダウザーの方を向き、追加の質問を確認する。


「四卿とライテックが組んで、国を乗っ取るつもりという事でいいのか?」

「あぁ、その通りだ! 俺をこのままにしておくと、ミクルの命が無いぞ!」


 完全に開き直ったマークリムは、反対に脅しを掛けてきた。


「うるさい!」


 思わずマークリムを軽く殴る。

 気を失った所で、拘束をした。


 ……ダウザーも殴りたかっただろうが、申し訳ないな。


「協力者全員をマークリムが呼んでいると、この部屋に集めてくれ!」

「分かった。 至急呼ぶ事にする」


 ダウザーは、関係者を全て呼びつけた。


 誘拐に協力した関係者全員を全て呼び出した後に、傷だらけのマークリムを連れてくる。

 全員が青ざめて、それぞれが言い訳を言い始めた。


「黙れ!」


 ダウザーが、怒鳴る。

 一斉に静かになった後に、俺がマークリムの時と同様に【真偽制裁】を全員に発動させた。

 案の定、信用していない様子だが、ひとりづつ質問をしていき、嘘を付いた瞬間に腕や足から血を流すと信じ始めた。


 協力者達は、金や地位の確保で共謀しただけのようだ。

 逃げ出そうとする者もいたが、【結界】を貼っているので逃げられない。

 全員を並べて座らせる。


 マークリムが、ボロボロになった体で叫ぶ。


「俺を助ければ、ミクルの命だけは保障してやるぞ!」


 まだ、誘拐計画が成功していると思っているのか、強気な発言をしている。

 しかし、その瞬間に右足から出血をする。


「……嘘は付くなと言ったよな!」


 マークリムは、無言になる。


「領主、どうする?」

「あとは、こちらも問題だ。 衛兵を呼ぶから【結界】を解いてくれ」

「分かった」


 【結界】を解除すると、ダウザーは衛兵達を呼んでマークリム達を拘束して身動きが取れないようにした。


「マークリム! お前の悪だくみは、ここにいるタクトによって既に破綻している」

「……なんだと!」


 ダウザーが合図をすると、奥からミクルが姿を現した。


「そんな馬鹿な! ……何故ここに!」


 マークリムは、計画が失敗したのを認識した。


「殺さずに、牢に閉じ込めておけ!」


 ダウザーが衛兵達に命令をする。

 俺は、マークリム達の【真偽制裁】を解除した。

 生き証人のマークリムには【結界】を貼り、血を付けておき【偵察】して、外部から殺害されないようにしておく。

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