第180話 憶測記事と謝罪!
グランド通信社に訪問しなくてはいけない。
訪問理由はスラム一帯を一夜にして、更地にした件の記事に対するクレームになる。
本当なら王都にある本社へクレームを言いに行きたいのだが、記事を書いたこの街のジーク支社の責任でもあると思い、エイジンに連絡を取った。
面白可笑しく書いていいか? というエイジンの問いに対して、四葉商会のイメージが悪くならない記事という条件で了承したのに、記事は「一夜にしてスラム討伐! そして更地に! 恐るべき四葉商会!」と見出しが掛かれており、謎に包まれた四葉商会の憶測が掛かれていた。
ゴシップ記事と都市伝説が合わさった感じの内容の記事だ。
本来なら向こうから訪れるのが筋だが、グランド通信社に行ってみたいとも思っていたので、こちらから訪問すると伝えていた。
グランド通信社の受付に用件を伝えると、丁寧な対応をされる。
少し待たされて社員に応接室に案内されると、エイジンが既に待っていた。
「申し訳ございません」
いきなり謝罪から入った。
エイジンにしたら、俺がかなり怒っていると思っているのだろう。
「今回の件は、本社からも直々に四葉商会様に、お詫びをしたいと思っております」
「そもそも、どうしてこうなったんだ?」
支社で記事を書く担当者が、手違いでゴシップ系の部署になってしまい、エイジン自身も確認をせずに今朝の新聞に掲載された。
当然、新聞をみたエイジンはすぐに内容確認をして、本社へも問い合わせをした。
本社の役員達も、カメラの重要性や四葉商会の結婚式での事を知っていたので、今回の記事で契約内容にある「一方が、著しい損害を与えた場合は、契約を破棄出来る」に該当している為、契約を破棄されて他の新聞社と契約されるとグランド通信社としては、損害が大きいと慌てていたそうだ。
「まぁ、そうだろうな」
「はい、今回は私の不徳の致すところでもあります」
「けど、一度出回った噂や、信用は簡単には戻らないのは、当然知っているよな」
「はい、おっしゃる通りです」
エイジンは、ひたすら謝っている。
「それで、グランド通信社としては本社の偉い奴が来て、終わりという訳か?」
「いえ、そういう訳では御座いません」
既に王都を出発しているので、一〇日後にはジークに到着する。
今回の謝罪と、損失補償に対しての案を提示するらしい。
「どちらにしろ、一〇日後って事か?」
「はい、申し訳御座いません」
「まぁ、部下の不始末は上司が取るのは、致し方ないな。 エイジンの出世にも響いたか?」
冗談を交えてみるが、エイジンには冗談になっていないようだ。
「話を逸らすが、エイジンは本社に戻りたいのか?」
「この街が嫌いという事ではありませんが、やはり仕事で上に行きたいという夢はあります」
「いずれは、代表になるということか?」
「夢としてはそうですね」
前世では学歴の関係もあり、昇進に全く興味が無かった。
かといって、昇進する野望を持っている者に対しての嫌悪感も無い。
「そうか、俺がエイジンの昇進を止めてしまったかも知れないんだな……」
「いえ、タクト殿が責任を感じる事ではありません。 全ては支社長である私の責任です」
上に立つ者の覚悟って奴だな。
下の者に責任を擦り付けずに、自分の責任と言い切る辺りは好感が持てる。
「まぁ、許可を出した俺にも多少は責任はあるんだよな……」
「そんなことは御座いません」
エイジンは、きっぱりと否定する。
「とりあえず、一〇日後に連絡をくれよ」
「はい、必ず日時を御連絡差し上げますので、宜しく御願い致します」
帰り際に、土産を渡されたが拒否をして、社員に食べさせてやってくれと言い、グランド通信社を出た。
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